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異世界から来た青年はどうやら無双するようです。3

「なぁティル」

「ん?」

「俺さ、戦い方何も知らないんだけど・・・。」

「う〜ん、じゃあ、1つだけアドバイスね。_________」

「それアドバイスって言わねぇだろ?!」

「じゃ、頑張れ」

「無責任!」


エリーとクラウンの対戦から約1時間後、レベスの知らぬ間に、ティルがレベスをエントリーさせており、それを聞いたレベスは、自分が好きなタイミングでエントリーをするものだと思っていたため、暫く硬直した後、冷静に物事を整理してゆき、今に至るというわけだ。


「レベス様でよろしいですね?」

「あっ、はい」

「それではこちらの部屋にて誓約をお決め下さい。」


美女に案内された部屋にはレベスの対戦相手であろう男がいた。男は甲冑に身を包み、大きな鎌の手入れしていた。レベスがその場に入ってもおかまいなしに自分の武器を見せつけ、凄まじいオーラを出しながら、武器を見ても勝ちは揺るがないと語っている。


「では、レベス様は初の出場となりますので、私からご説明をいたします。」

「えと・・・ここでするんですか?」

「何か問題でも?」

「い・・いえ」


レベスは、鎌の手入れをしている男を横目で見、気まずそうにしながら隣で説明している美女を再び目に入れるとわかりやすくニヤついた。とても案内人とは思えぬような綺麗な顔立ちと、短い白いスカート。太ももが少し見えるだけの黒のニーハイブーツ、それすなわち絶対領域。清楚に見える服装だが、胸が大きいのか、服にぴったりとくっついて下着が透けて見える。そのギャップがたまらなく、レベスは男である自分の欲望とその抑制とに闘っていた。


「それでは説明いたしますね。まず__________」

「以上です。お分かりいただけましたか?」

「はい。多分・・・・。」


美女の説明を要約すると大きく分けて2つある。

1つ目は誓約についてだ。誓約とはその名の通り、お約束のこと。試合前に相手と相談し、勝利した際に自分が相手に望むモノを決める__要するに、賭け事だ。相手の了承さえあればどんなモノでも誓約は成立し、例えば大金や街1つ。対戦相手によっては王座の交代など、何でもありの欲望にまみれたモノが多い。だが稀に、クラウンのようなこの賭け事(ゲーム)への参加禁止という意図のよくわからないものや、人を助けろという依頼などもある。もし、それを守らなかった場合、手首や首などの急所に、誓約が成立された時に刻み込まれた魔法式が自動的に発動し、その者の命を奪うという仕組みになっている。対戦前にそれが一度浮かび上がるのは、誓約の確認のためだ。更に、誓約後3日以内に対戦を実行しなければ強制的に魔法式が浮かび上がり、命を奪うとまではいかないが致命傷を与え、その誓約は不成立となり、今後、誓約は結べなくなる。

2つ目は対戦についてだ。対戦は1日何回してもよく、対戦相手はランダムだ。一度登録すると、誓約を破る、もしくは誓約を結べなくなる以外では取り消しは出来ないが、対戦日はどれだけ日数が空いていてもいい。更に、対戦相手はランダムで決められているが、それは、対戦を申し込んだ者同士でのランダムのため、相手は決められると言っても過言ではない。ただし、対戦相手の発表は対戦の30分前で、相手と顔を合わせるのは誓約を決めるための対戦15分前と、対策はしにくくなっている。同じ相手とは、基本、組まれないが、その日の対戦が同じ相手のみであった場合、双方の了承の上、行う事が出来る。そして、何度も負けると、誓約は増えていく一方なので、リスクが高まってしまう所には注意しなければならない、ということだ。ファイトマネーは貰えるが、何回勝利しても額は変わらない。


「それでは、対戦まで残り5分となってしまいました。申し訳ありませんが早急に誓約をお決め下さい。」


美女がそう言うと、鎌の手入れをしていた男は立ち上がり、レベスの前にドカッと座った。


「俺の願いはただ1つ。金だ。大金が欲しい。ファイトマネーだけじゃ足りねぇ。」


男は鎌をペロリと舐め、レベスを妖しく笑い、睨んだ。


「じゃあ俺は、そうだな、お前の経験が欲しい。闘いの経験だ。」

「そんなのありなのか?」


男は目を見開き、美女に問う。すると、美女も驚いていたようだが、クスリと、とても上品に笑い「もちろん可能です。」と言った。

 

「ただし、レベス様に戦闘経験が移るということになりますので、マルカ様はレベス様が勝利した場合、今までの戦闘経験が全て無くなる、ということです。その他には影響はありませんので、そこはご安心下さい。」

「わかった。いいだろう。」

「レベス様もそれで宜しいですか?」

「はい。」

「それでは、私の両サイドにお立ち下さい。」



元々美女の両サイドにソファーがあり、挟む形となっていた為、レベスと、マルカはその場に立った。

マルカが右手を上げるのを見、レベスもそれを真似して右手を上げる。すると、美女が何か、本を出す。

「レベス、マルカ、その名を誓約に刻む。」

本に手を添え、そう言うと、パラパラと中心の方まで開き、何と書いてあるかはわからないが、文字が浮かび上がり、真っ白だった紙に刻まれた。それを確認した美女は、「【誓約を絶対とし、誓約に背く者には鉄槌を!】」そう唱える。すると、マルカの手首に魔法式が浮かび上がった。


「あれ、俺はどこに魔法式が浮かび上がったんだ?」

「恐らく、心臓かと思われます。」

「マジかよ・・・。何か怖さ倍増だな。」


魔法式が浮かび上がるのは人によって様々だ。それも、一戦一戦で変わることはなく、場所は固定されている。誓約を破った際に、命を奪えるところであれば何処にでも現れるため、体内、というのもあるのだ。普通は、誓約3日以内に対戦をしなければ致命傷を与える、となっているので、レベスのような所には魔法式は浮かび上がらないが、極たまに、致命傷ではないところに刻まれるらしい。明確な理由はないが、その者達に共通する事は、普通ではないナニカがあることだ。


「それでは、移動します。レベス様は、ライトコーナーへ、マルカ様はレフトコーナーへ移動をお願いします。」


レベスは暗く、細い道の先にある光を目指して歩いた。だが不思議と怖さはない。

「う~ん、じゃあ、1つだけアドバイスね。魔法は願いだよ。レベスの場合は特にそう。自分を信じて、私に願ってね!」ティルから言われたその言葉を脳裏に浮かべ、ニヤリと笑った。


「本当に理不尽だよな。ティルに願えって。まぁ、それもアリか。」


そう言って、レベスは光へ飛び出した。

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