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異世界から来た青年の元にどうやら僕っ娘がくるようです。4

「あぁ~、いいっ!やっぱり人型っていいっ。人間っていいな!!」

「何言っているんだか・・・。」


結構、試しに、と黄色いカプセルを1粒飲むと、レベスは瞬く間に人間の___元の姿に戻った。


「てかさ、元の姿にはなったよ。うん。有り難い。でもさ、何?これ。服って変えてもいいよね?ね?」


サーモンピンクのショートカットにアホ毛がピョコッと1本出ている。そこまではいいのだ。だが、問題は服だった。

何の影響かは知らないが、濃い青のジャージ上下に何故か黒のフードが付いているという何ともいえない姿。いっそのこと青で統一すればいいのに、と思いつつも黒のフードがある点でだけはレベスも格好いいと思っているようだ。


「このジャージ、変えちゃ駄目なのか?ってか、前人に戻った時と髪色もちがうんだけど。」


黒で統一すれば、何処かの忍者などのように少しは格好良くなるだろうと考えたレベスは、ティルにそう問いかけた。


「それは薬につけた効果の1つだから、ジャージ上下にフードっていうのは変えられないよ。あと髪色も。これ絶対。いや、変えてもいいけど木になる度に服がはちきれて、元の姿に戻ると素っ裸!!こんな特典付きだったら何時でも待ってるよ~!」


素っ裸、その言葉を聞いてレベスは服を変えようという考えを捨て、新たな考えに至る。服が駄目なら、色を変えればいいじゃないか!と。


「じゃあ、黒で統一したい!」

「・・・。レベス、よく考えて、妄想力を働かせるの。」

「想像力な!!」


思わずレベスは突っ込んだ。

このまま妄想力で通されるとレベス自身に、自動的に変態のレッテルを張られる気がしたのだ。


「全身真っ黒な奴がいる。するとどうなると思う?」

「あの人格好いい!__じゃねぇの?」

「馬鹿じゃないの、ただの不審者だよ。警察に捕まって、冤罪だとわかって、道にでたらまたまた即通報。この繰り返しだね。」

「この世界では、俺の格好良さが通じないと言うのか・・・。」

「どこの世界でも、でしょ。」

「うぐっ」


結局、服は濃い青のジャージ上下に黒のフードとなり、元通りになっていた。




     ※     ※     ※




「でさ、歩くのはいいんだけど、俺達ってどこに向かってるわけ?」

 

初め、レベスのいたところは、大きな広葉樹1本___つまりレベスとティル、たまに鳥がいるだけの周りに何もない小さな丘のような場所だった。丘には、一応草花が生えているが、どれも草原に生えているような高さのない、地表植物や半地中植物ばかりだ。

だが、そこにはもうレベス()がいないため、ただの何もない、小さな丘になっている。


「今向かってる所は東!5大陸の中で最も貿易の盛んな国、ラズメリス大国。その中心都市____メトロ。」

「おぉ、やっと異世界に来た実感が湧いてきた気がする。」


今までは、ティルとの茶番劇ばかりで、異世界について説明してもらってはいたが、どうにもレベス自身はそれどころではなく、更に、レベスから見れば周りは何もない、空の青と雲の白、それに綺麗な鳥の囀りが聞こえているだけで、何処かの公共施設の1つではないだろうかと一瞬思ってしまったほどだ。

確かに、周りがよく見渡せる状況と状態にあったので、飛んでいる人々や、魔法は目を凝らせば見える。しかし、ティルと話しているうちに、そんな事は蚊帳の外だ。レベスがずっと目を凝らして集中するなど、到底無理な話だった。


「よし、じゃあその、()トロとやらに行こうじゃないか!!」

()トロ、だよ。」

「そんな事、わ・・わかってるって・・・。」


自分の間違いに気付かされたレベスは、その羞恥からか、真っ赤に染まった顔を手で覆い隠し、その場にしゃがみ込んだ。


「レベス、今なんて言った?え?レトロ?常に新しい情報やモノが動き回る大国で、レトロ?レベスは古いものが好きなの?そっかぁ、じゃあ、元の世界に戻る?今だったら何事もなく帰れるよ。」

「アァーーーーッ、止めてーー!もう掘り返さないで!!!」


それをいいことに、ティルは、更に弄る。弄る。


「じゃ、メトロまで後少しだからとばしていくよ~!」

「えっ?とばす?どういうことデスカネ、ティルさん・・・。」

「勿論___【メトロまでゴー!】。魔法でだけど。」

「デスヨネ」


魔法を使った後に言われれば、もう頷くという選択肢しか残らない。レベスは、何の抵抗も出来ずにとばされる。レベスも、瞬間移動魔法自体は経験してみたいものだったが、ティルの詠唱とはいえない詠唱を聞くと、無性に不安になるのであった。

実際、瞬間移動魔法だから楽じゃないかと思うかもしれないが、瞬間移動魔法を使うときには、ベテランの魔法師6人に半日かけて創る魔法式が出発点と出口に2つ、更に、瞬間移動が出来る人材は、必ず魔力を多めにもっているもので、1度はそこに行ったことのあるものだ。

瞬間移動魔法とは、いわばテレビの仕組みと同じようなもので、魂や身体を細かく分け、瞬時に移動させる魔法だ。魔力を多めに持っている人ではないと出来ないのは____いや、出来ない事はない。9割強の確率で失敗するだけだ。

魔力は、その細かく分けられた魂や身体に色を付け、つなぎ止める役割を果たしている。これがなければ、たとえ瞬間移動出来たとしても、身体の一部が無くなっていたり、魂が欠けたりする。更に、細かく分けられた魂や身体に色を付けたり、つなぎ止めたりというものは、魔力消費が速い。そのため、距離が遠くなればなるほど魔力の消費も比例して大きくなる。

さて、では、ティルはどうだろうか。詠唱も詠唱とはいえず、魔法式もない。レベスは魔力が多めにあるだろうが、距離が距離だ。近いといっても、日本でいうとこの東京から長野位はある。

しかし、ティルはそれでも確実に成功させるのだ。

何故なら、瞬間移動魔法とティルの使っている魔法は全く別のものであるため、ティルの魔法は魔力がどれだけ少なくとも、いや、寧ろ無くとも成功する。

瞬間移動魔法とティルの魔法の1番大きな違いは、魔法の系統だ。瞬間移動魔法は空間を操る魔法、ティルの魔法は時を操る魔法だということだ。

空間を操る魔法というのは、空間と空間をつなげたり、離したり、とばしたりという大掛かりな魔法だ。一方、ティルの時を操る魔法は、必然的に来る未来へとんでいくだけであり、それを速めるだけだ。もしくは、1度行った場所であれば、過去をたどり、そこへ着くこともできる。勿論、過去へとんだことになるので、時間軸を現在に戻す必要があるが・・・。

瞬間移動を使うには、どちらも行きたい場所へ1度は行っている、または、そこへ確実に行くという未来がなければならないのが弱点である。


「うぇ、何でこんなに気持ち悪いんだ?」

「私は時の魔法を操るんだから当たり前じゃん。」

「どゆこと?!」

「必然的に来る未来へとぶようになってるの、でもさ、それでも時間軸を無理矢理進んで行ってる訳だから、今に至るまでに起こったであろう現実を脳が処理しきれなくてパンクしてるの。まぁ、脳の使い過ぎってこと。いやね、普段は私も介入して、手助けをして、なにも感じないようにとばすんだけど、レベスだしいっかなーって思って何もやらなかったけど、やっぱり、大丈夫そうだね。」

「これの何処が大丈夫なわけ?!」

「えっ?脳。普段からおかしいし、大丈夫かなって」


何気なく酷いことをティルに言われたため、レベスは小声で「ひでぇよ」と呟いていた。


ドンッ。


「おっと」


レベスは前から走ってきた、白いフードを被った子供だと思われる者にぶつかってしまった。


「ご、ごめんなさいです!」


ぶつかった時に取れてしまったフードの中からは、金髪の可愛らしい少女が姿を現した。


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