異世界から来た青年はどうやらピエロの親殺しをお手伝いするようです。5
「さて、それでは本日の選ばれし勇者は____この10人です!」
進行役がそう言うと、男3人、女7人にスポットライトが当たる。再び、ここで__この演目で人が消えるのだ。だが、ティルとクラウンは、サーカス団の一員である以上、それを邪魔する事は出来ない。客は1演目だと思い、サーカス団内でも、その魔力の変化がわかるのは、オーナーと2人くらいだ。結論、何も出来ない。
「取り敢えず、何処に連れて行かれるか位は掴みたい所だな。」
「えぇ」
そして、その演目は滞りなく進み、人も消えた。
瞬間移動マジックのようにも思えるソレは_____
皆が憧れた、唯一の参加型のソレは_____
とんでもないものだったのだ。
「(この魔力の移動の仕方は何?おかしすぎる。何かに集められてるみたいな・・・・・。)」
「(まさか_____)」
演目としては成功を納めたであろう人達に賞賛の雨が降ってるいる裏で、人として、生を受けたものとしての存在が無くなっていくような感覚に、ティルは思わず一歩引き下げ、汗を垂らす。
「ルイ、大丈夫?顔色が悪いようですが。」
「・・・・・。」
「ルイ?」
クラウンの、ティルを呼ぶ声も耳に入らない程、ティルは異常な流れの魔力と、それの行き着く途中にある無数の小さな質の違う魔力、そして、それらが行き着く最終地点を悟り、知らず知らずの内に、一筋の涙を流した。
「本当にどうしたのですか?涙なんて流して・・・・。」
「生ある者達が____
人が____
_____死んでいる。」
「えっ?」
「今この瞬間にも、1人、また1人。魔力が底をつき、肉体が枯れ果て、魂が消えている。」
魔力は、生の源だ。勿論、回復する事は出来る。心臓、ではないが、血液のようなものと思ってもらえればいいだろう。血液が尽きれば、生きることなど出来ない。流れは止まり、全ての機能が停止する。すなわちそれは、“死”を意味する。
「(なんで今の今まで気づくことが出来なかったの?それに今も。もう何も感じない。)」
「それで、居場所はわかりましたか?」
「・・・・。」
ティルは無言で建物の中心当たりを指差した。クラウンはティルの指差した方向を見ると、少しの間、何かを考えるように目を細めると、何事もなかったように「わかりました」と短く答えた。
やっとこさ、劇の幕開けです。
妖精さんはいりません。
悪魔も神も、入場禁止。
欲しいのは、人。
そう人だけです。
だけど身体は要りません。
欲しいのはその身に流れる、美味しい、美味しい、ジュースだけ。
ほら今日も、そのジュースを力の源に、黒い道化師が皆を笑わす。
おかしな格好1つしないで、皆を笑わす。
微かにて聞こえた気がしたその歌に疑問を抱きながらも、同じサーカス団の人に呼ばれ、それは頭の隅にしまった。
「おい、ルイ、ラン。新人だ。ビシバシ鍛えてやれ」
「はい。」
何時もの事だが、ティルは頷き、クラウンは返事した。
「初めまして。新人のレイズです。宜しくお願いします。」
そこに現れたのは短髪の少年。このサーカス団について何も知らなさそうな、純粋な瞳をした少年が1人、妙な時期にやってきたのだった。
「レイズさん、ですね。取り敢えず、何が得意なのですか?」
「得意な事は・・・・うーん、わかりません」
その回答にティルは無視。クラウンは少々、というか大分呆れつつ、ひとまずどの程度、何を出来るのか把握しておくことにしたのだが_____
「あのですね、レイズさん。海より広い心を持っている私でも、流石に怒りますよ?」
「・・・・。」
「私が聞きたいのは、あなたは何が出来るか、ということであって、出来ないことを聞きたくも、見たくもありません。正直に言ってしまえば、時間の無駄です。何故このサーカス団に入団出来たのですか?」
レイズは、全てを完璧にこなすどころか、綱渡りはもちろんのこと、玉3つのジャグリングでさえする事が出来なかった。唯一出来たものといえば、玉乗り_____をしている人の顔モノマネでその人を怒らせた位だ。
「じゃ、じゃあこんなのはどうですか?」
そう言うと、レイズは思いっきり息を吸い、眉間にしわを寄せた。
「ランさんの______」
「モノマネをします、何て言いませんよね?」
クラウンは、レイズの言葉を遮り、その言葉の続きであろうことを言うと(勿論笑顔で)、図星だったのか、後ろを向きながら少しずつ距離をとるレイズは、ギクリと肩を上げ、振り返り、テヘッ☆とウィンクをしながらベロを少し出した。
それに、クラウンはため息をつくしかなかった。と同時に、若干切れ気味で再び思った。
本当に何でこのガキはこんなところにいるんだよ
と。
「す、すいません。じゃ、じゃあ今度こそ聞いてください」
「もうモノマネは要りませんからね。」
「わかってます!!」
レイズは目を瞑り、深呼吸1つすると、また目を開け、陽気に歌い始めた。
とってもとっても美味しいジュース。
僕だけじゃとてもじゃないけど飲みきれないや。
でも皆にはあげたくない。
だから、ジュースをあげない代わりに、笑わせてあげる。
ずっと、ずっと。
あれあれ皆がいなくなった。
僕を残してみんなみんな、いなくなった。
お家に塗られてた白もなくなって、真っ黒に染まった。
だけど、それは皆を笑わせるための代償。
見たこともない夢を見せる為の代償。
「おい、それは何だ?お前は誰だ?」
今まで口を開かなかったティルが、レイズの妙な歌に怖い顔をし、歌った本人を睨みつけた。
だが、レイズは怯むことなく、ティルを真っ直ぐ見つめて言った。
「僕はレイズ。歌をつくるのが得意な、それ以外何の取り柄もない少年です。」
言い終わると、レイズは首を傾けニッコリ笑った。
全然親殺し手伝ってねぇじゃねぇか!
ってか主人公どこ行ったし。
と思われているとは思いますが、まぁ、少々お待ちを・・・。
ここからが本番ですよ・・・・・・多分(遠い目)




