タルグさんとのお茶会。
タルグさんとのお茶会前なので、出来るだけ軽めの食事にします。
サラダとサンドイッチ、それとスープ。
後はスコーンの味見を少々。
そう、間違えないでいただきたい。
スコーンは少々。
お腹いっぱい食べたいけど、我慢!!
もし、タルグさんの所でお茶菓子が出たら、新商品の試食を~とか言って出させてもらおう。
この世界のお菓子、私には食べれないからね。
と、そんなこんなで軽い昼食の用意が終了。
少ないサンドイッチに少し物足りなそうな顔をするエンガだが【タルグさんとのお茶会でスコーンとか他のお菓子を出すからね。お腹すかせておいて、タルグさんと一緒にお話ししながら食べようね。】の魔法の言葉でニッコニコ。
食後の楽しみ兼、味見の為のスコーンをひとつ、エンガと二人で半分こ。
味見だけ、味見だけ。
熱々ホカホカのスコーンを横半分に割って、クロテッドクリームをこれでもかと載せて、ジャムを小山の様に盛って。
大きなお口でいただきまーす!!
「んむっはぁ!おいひぃ~!」
熱々なスコーンは少し香ばしく、ホロホロのソフトビスケットの様な食感で、濃厚なクロテッドクリームが蕩けて、バターの様なクリームの様な風味豊かな濃厚さ。ジャムの甘酸っぱさとシャキシャキとした食感も良し。最高!!
と、好物を食べた時特有の幸福感が全身を駆け巡る。
「おお!うんまいな!コレ!!」
と、エンガも嬉しそうにモグモグしてる。
自分の好きなものを好きって言ってもらえるの、嬉しいよね。
【残りは後でタルグさんと食べようねー。】で、我慢してもらって、食べた食器の後片付けをする。
洗い物を私が担当することにして、エンガには客間の神棚に神様へのお供えをしてもらうことにした。
その後は、タルグさんの所に向かうまでにはまだ時間があるので、少しの間、2人でゆったりしようと思う。
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ヤエに頼まれて、神様へのお供え物を持ってキャクマに来た。
お供えなんて、この前のが生まれて初めてで、手順とか全く分かんねぇんだが、ヤエも【私も詳しくは分からないし、神様が今回も見てるかは分からないから、そんなに気にしなくて良いと思うよ。こういうのは気持ちだから。】って言ってたかんな。神様には申し訳ねぇが、俺なりにで勘弁してほしい。
カミダナとかいう台に食いもんを乗せて、持ってきたものを出来るだけ簡単に説明してみた。
あと、伝えたい言葉も口にしてみる。
言わねぇと伝わらないって分かったからな。
神様が見てなくても良い、兎に角、伝えたい言葉を選んでいく。
「神様、いつも見守ってくれてありがとうございます。この前、来てくれて嬉しかったです。これも食べてください。えーっと、今日、ヤエがスコーンを喜んで食べてたんで、俺一人で作れるようになりたくて、特訓しようと思ってる、ます。んと、今日はタルグさんとお茶会で、楽しみです。あーっと、神様も仕事はほどほどに、頑張りすぎねぇでください。あと、体を大事に...」
「エンガ君、本当に良い子じゃの!!思わず出てきちゃったぞ!!そうか、そうか、あの子のために、な。ならば、解体所を早く作りなさい。キッチンも付けてあげよう。エンガ君用の大きさに合わせた、簡易式のやつを付けてあげるから、早めに。あと、ありがとうなぁ。神様の体を心配してくれたりするなんて、エンガ君ぐらいじゃよ。皆、《自分の願い》を押し付けるからのぅ。良い子じゃ、ほんに。わしは何時でもエンガ君の味方じゃからの。自由に、楽しんで生きなさい。それじゃ、今日の料理も有難く頂戴するのでの。また、何かあったらお供え宜しく~。」
って、俺は独り言のつもりで言ってただけなのに、神様の声が響いて、目の前の料理が消えた。
良く分からねぇが、忙しい神様がまた来てくれて、褒めてくれたって事だよな?
んで、解体場を早めに作った方が良いって助言くれたんだよな?
俺がヤエの為のスコーンを作れる様になるようにキッチンも付けてくれるのか。
神様、本当に優しい良い神様なんだなぁ。
俺、今のままでもかなり幸せなんだけどな。
皆のおかげでどんどん幸せになってるのに。
神様にもこの幸せ、分けてあげてぇな・・・。
神様、俺、これからもヤエと一緒に色々作ってお供えするからさ、美味いもんいっぱい食って、少しでも幸せ受け取ってくれな。
そう考えながら頭を下げる。
ヤエに会わせてくれた、皆に会わせてくれた、神様は本当に俺の恩人だ。
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洗い物が終わったんだけど、なんだか客間の方でお爺さんのきゃいきゃいした声が聞こえる気がする。
きっと神様が、素直で可愛くてお気に入りのエンガに会いに来たんだろう。
エンガも神様を敬愛してるみたいだし。
さり気無く仲良しだよね。
なので、どんな会話してるのか凄く気になるけど、エンガに呼ばれない限り、邪魔しに行ったりはしない。
そう思って我慢してると
「ヤエ!聞いてくれ!また神様が声かけてくれたぞ!なんか、褒められた!!」
と、ウキウキエンガさん登場。
エンガを喜ばせてくれるなら、神様は最高の存在です。
私からも神様に感謝。
今後も新作のスイーツや食事を提供いたしますので、我が家のエンガさんと仲良くしてください。
そう脳内で神様へ向けての電波を全力で飛ばしながら話を聞いていると、解体場を早めに作って欲しいとのこと。
なので、2人で机に紙を広げ、ペンを持ち、エンガの希望の形を図にしていく。
まず、肉屋のコーザの解体場を参考に、エンガに話を聞いて形にしていく。
これで完成ではなく、実際にもう一度コーザの解体場を見せてもらって、詳しい説明もきいてからにするけど『この辺に台があってな!』『この辺に、ナイフを並べて置けるスペースがあって、でも、俺はコーザよりデケェから、もっと上の方で!』『ここには、ヤエが座れる椅子が必要だな!俺の作業を見ててくれる用にな!』などと、自分のお部屋が楽しみでしょうがない小学生みたいにはしゃぐエンガ。
可愛いし、愛おしい。
一通り意見を用紙にまとめ、色々な位置の希望なんかも決めつつお話ししてたらお出かけの時間に。
待ちに待ったタルグさんとのお茶会のお時間です。
あ、勿論、神様のお話は皆には内緒にするようにお約束しました。
もし、神様に会えなくなったら嫌だもんね?
さてさて、お出かけの準備を開始。
エンガは一番のお気に入りの服を着て、入念にお顔のブラッシング開始。
私はタルトにドーナツ、スコーンとクロテッドクリームにジャム、更にはお気に入りの紅茶葉をバスケットに入れて準備完了。
洋服も出来るだけ大人しくて上品な感じのに変更。
そして、忘れてはならない。
お互いにタルグさんの所で買わせてもらった髪紐を結び合い、褒め合いっこ。
そして出発。
バスケットはエンガが持ってくれて、反対の手は私と繋いで二人で向かう、髪紐屋さん。
エンガは目に見えてウッキウキ!
軽やかな足取りで、今にもスキップしそうなくらい。
いつもは私を気にして足取りを合わせてくれるエンガが、少し大股で歩く姿は、もう、あれだ。
控えめに言って超好き。なにこのオッサン、本当に可愛い。
すれ違った小さい子が
「あのおじさん、ぼくと おかあさんみたい!おてて つないでおでかけうれしいの!」
って指さしてて、お母さんは少し驚いた顔をした後
「ふふふ、そうね、お母さん達と一緒ね。ほら、お父さんが待ってるわ。急ぎましょう。」
と、微笑みながら子供と手を繋ぎなおして去っていった。
子供から大人まで、幅広くエンガの可愛さが伝わっている様で何よりです。
なんて小さな幸せを噛み締めつつ、タルグさんとの待ち合わせ場所、髪紐の屋台へ到着...。
かと思いきや
「っるせーんだよ!!クソ爺!!小言ばっか言いやがって!うぜぇ!くたばれ!!」
そう怒号が響いた。
そして、今日は閉まっているはずのタルグさんの髪紐屋さんの屋台前から、声の主であろう青年が私達とは逆方向へ消え去っていった。
間近まで来ていた私とエンガはポカーンである。
今からここでタルグさんとの待ち合わせがあるのに、この騒動。どうしてくれんの?
周囲の人々は珍しいからかエンガにも注目し始めたし。
と、イライラしてたら、屋台の後ろから寂しげな表情のタルグさんが現れた。
私達には気づいていないようで、ため息を吐き、ズボンを叩いて土を落としている。
コレはもしや・・・。
そう考えた瞬間
「タルグさん!!大丈夫か!?怪我、無いか!?良く分かんねぇけど、転んだ、のか?」
と、エンガも気づいてタルグさんを起こした直後、さっきの青年にぶつかったのか、何なのか分からず、下手に声をかけられないでいる。
「大丈夫ですか?お怪我は?」
聞いてみるが
「ああ、ヤエさんにエンガさん。驚かせてしまってすみません。転んでしまっただけです。年を取ると踏ん張りがきかなくて転びやすくなるんです。怪我も痛いところもありませんし、大丈夫ですよ。ああ、約束のお時間ですね。今日を楽しみにしていたんですよ。さあ、我が家へご案内します。」
と、何事もなかったかのように穏やかに微笑み《こちらです》と手招きしながら道案内を始めたタルグさん。
エンガは何か言いたそうだけど、周囲の眼もあるし、タルグさんが否定したのだから、私たちが容易に突っ込む話ではないと思う。
そう思って、エンガの手を握り、首を振る。
エンガにも思いが伝わったのか、エンガはそのまま何も言わず、2人でタルグさんの後を追いかけた。
少し歩いたところにあるアパートの様な建物に案内され、部屋に通される。
「少し歩かせてしまいましたが、大丈夫ですか?ここが私の家になります。今は1人暮らしなので、小さい部屋で申し訳ないのですが、ここなら周囲を気にせず、時間を気にせず、ゆっくりとエンガさん達とお話しできると思いまして。さあ、どうぞ。寛いでくださいね。」
そう言いながら、椅子を引いてくれるタルグさん、本当に紳士。
その様子を不思議そうに見ているエンガに《女性が座る際には椅子を引いて、女性が座る状態に合わせてそっと椅子を良い位置に動かし、女性に座っていただく作法ですよ。》と、説明してくれていた。
タルグさんの部屋は木の家具の暖かみがあるお部屋だった。
本が数冊、木棚に並んでいて、木の机にお揃いの木の椅子。
窓には白いカーテンが揺れていて、おひさまの光が柔らかく入ってくる。
シンプルで心地いい素敵な部屋。
「さて、2人が来てくれたのですし、お話の前にお茶とお茶菓子を用意しましょうかね。」
と、タルグさんが言ってくださったので
「あ、あの、お茶菓子は持参したものを出させていただいても良いでしょうか?エンガのお店《もふもふ雲》の商品で、私たち二人で作っているんです。それで今、周囲の方々から感想を頂いているんです。宜しければ、アドバイスなんかを頂けると嬉しいのですが・・・。値段設定なんかも気になっていまして・・・。」
と告げると
「おやおや、そうでしたか。それは有難いですね。正直、年を取った男の感覚で若い子たち向けのお茶菓子を用意するとなると、困ってしまって。どこにでもある様な品を無難に選んでしまったんですよ。2人が作ったお茶菓子、とても楽しみです。お茶を入れてきますからね、少しだけお待ちくださいね。」
と、孫が作ったお菓子を喜んでくれるお爺ちゃんみたいな反応をしてくれたタルグさん。
エンガは『ちぃっと緊張するな。喜んでくれっかな?』と言いながらも、嬉しそうに持ってきたお菓子を机に並べ始めた。
お茶はタルグさんが入れてくださるそうなので、持ってきた茶葉は帰りにお土産的な感じで置いていこう。
さあ、お茶を持ってきてくれたタルグさんとのお茶会開始です!!
「おや、綺麗なお菓子がこんなに沢山!初めて見るものばかりで、どれも美味しそうで目移りしてしまいますねぇ。ああ、そういえば、先日頂いたジャムのお礼がまだでしたね。凄く美味しかったです。綺麗な蜂蜜色のリンゴの甘みと酸味と食感のどれもが初めての体験でした。この歳になってこんなに『食事』で驚いたは初めてでしたよ。とても美味しく、楽しい時間でした。ありがとうございました。エンガさんとヤエさんからの《ありがとう》の気持ちが沢山詰まっていて、本当に美味しかったですよ。」
と、嬉しそうにお礼を言ってくれた上に、私たちの頭を、優しく撫でてくれた。
何というか、
大人の包容力、すごい・・・。
エンガも私も、こんなに褒められて子ども扱いされて、嬉しくて照れてしまった。
「へへへ、喜んでもらえたんなら良かった!あ、あのよ、これからも、なんか作ったら持ってきても良い、ですか?」
と、嬉しそうに不安そうにタルグさんに尋ねるエンガ。隣の私も頷く。
それに対してタルグさんは
「ええ!勿論です!人からの《贈り物》なんて滅多にありませんから、年甲斐もなくワクワクしてしまいますねぇ。こんなに可愛い二人が、私の為に何かを作ってくれるという感動は、何物にも代えられませんねぇ。うん、嬉しいですねぇ。胸の辺りがポカポカします。」
と、またまた私とエンガの頭を撫でこ撫でこ、と可愛がってくれるタルグさん。
「ん、ふふ、なんつーか、あれだな。俺も、胸がポカポカする。タルグさんに頭撫でてもらうとよ、ヤエに褒められた時とはちっとちげぇ、幸せな気持ちでいっぱいになる。これからも、仲よくしてくれると嬉しい・・・。」
と、エンガが嬉しそうにへにゃにゃとした可愛い笑顔で告げると同時に
【ぐ~ぎゅるるるるるる】
と、エンガのお腹から音が・・・。
お昼は軽めにしたし、その後のお話し合いで頭使ったし、お腹すいちゃったのね。
「う、あ、すまん、お腹、すいて、その...。」
と恥ずかしそうなエンガにタルグさんがクスクスと微笑み
「ふふ、私からもお願いします。これからも仲良くしてくださいねぇ。さあさあ、お茶が冷めちゃいますからね、こんなに沢山のお茶菓子も用意していただいたんですし、いっぱい食べて、いっぱいお話し聞かせてくださいねぇ。」
と、取り皿を並べてくれたタルグさん。
その後、エンガは一生懸命、持ってきたお菓子の説明をして、タルグさんに褒められ感心され、歓喜!!
お茶を飲みながら、
お菓子の味を褒められ、お店の話をしては褒められ、お家でのお手伝いの話をしては褒められ。
何というか、孫が可愛くてしょうがない、何でもかんでも褒めてくれるお爺ちゃんみたいなタルグさんと、何でもかんでも報告して、褒めてほしい少年の様なエンガ。
タルグさんはそこまで御歳な感じではないし、エンガもそこそこオッサンなはずなんだけど、凄く癒される空間です。
私はお茶を頂き、スコーンをモグモグしながら、エンガとタルグさんの微笑ましいお話に相槌をうっている。
そんな素敵な時間を夕暮れまで過ごし、次回のお茶会の約束もして、また髪紐を選んでもらう約束もして、エンガのお店《もふもふ雲》に来てもらう約束もした。
お菓子はほぼエンガが食べたけど、タルグさんにも全体的に少しづつは食べてもらっているのでOK。
お店のアドバイスや価格なんかも相談させてもらった。
持って行ったお茶は手土産に渡してきた。
最後にはタルグさんが出口までお見送りしてくれて、エンガはルンルンで手を振り振り、何度も振り返りながら、2人で帰宅。
今日も素晴らしい一日でした。




