新商品が並びます。
おはようございます。
今日もいい天気。
絶好の露店日和ですな。
というか、この世界に来てから天気が悪い日がない気がするんだけど、その辺はどうなんだろう?
後でお店番の2人に聞いてみよう。
そう思いながら、今日も朝食を用意していく。
今日はお魚な気分だったので、焼き魚をメインに卵焼きやこんにゃくの炒め物や小鉢などの和食寄りに。
エンガにはつくね団子も用意。
そして、昨日洗っておいた、お店に出す用のジャガイモを蒸し器にぶち込む。
何度も繰り返して、篭に詰めてから時間停止の鞄に入れておく。
詰める作業はある程度雑でも構わない。
エンガが食べるもんじゃないし。
と思っているわ私は、経営者としては最悪だと思おうが、仕方がない。
急がないとエンガが起きて来ちゃう。
なんて思いつつ作業を終了させると、丁度良いタイミングでエンガがリビングにやってきた。
「おはよう、ヤエ。見てくれ!今日はちゃんと、寝ぐせ直してから来たぞ!」
と、ドヤ顔のエンガ。
うん、可愛い。
今日も寝ぐせがあったという事を、自ら暴露してるんだけど、気づいてない。
そんなところも愛おしくて大好きよ。
「おはよう、エンガ。今日は両方ともホワホワで整ってるね。カッコイイよ。」
と、背伸びをしてホワホワな両頬を勝手に撫でさせてもらうと
「ん!?か、カッコイイか!?そ、そうか?え、えっと、あ、ああ、腹減ったな!!朝ごはん、何だ!?」
と、私の行動と返事が予想外だったのか、そっと私の手から逃れ、ソワソワとキッチンを覗こうとするエンガ。
そんな後ろ姿もプリティーです。はい。
今日も一日の活力、ありがとうございます。
照れてる獣人のオッサン、本当に可愛い。
と、エンガの素晴らしさはこの辺までにして、エンガにもエプロンを付けてもらって、盛り付けを手伝ってもらう。
テーブルに食事を運ぶのもエンガの役目だ。
エンガのお皿、山盛りで重いからね。
全て並べ終えた所で、一緒にいただきまーす。
魚の目玉も尻尾も骨も残らない、綺麗な完食、毎度ながら凄いです。
私は骨と頭、尻尾だけは勘弁していただく。
今日も美味しくいただきました。
その後のお皿洗いはエンガがやってくれるとの事なので、お茶の準備。
デザートはオレンジのタルト。
昨日まではイチゴのタルトだけだったけど、今日はオレンジのタルトも並べてみようと思って、昨日エンガと一緒に作った奴だ。
食後のデザートなので小さめにカット。
「終わったぞ~。っ!?昨日の甘酸っぱいやつ!!食って良いのか!?」
と、手を拭きつつ、嬉しそうに席に着くエンガ。
「お皿洗いありがとう、エンガ。お疲れ様。お茶も入れたから、どうぞ。7時の待ち合わせまでまだ時間があるから、少し打ち合わせしていこう。」
「ん?打ち合わせ?」
と、既に席に座り、タルトをモグモグしながら聞き返してくるエンガ
「うん。一応ね。回復薬の数とかしっかり把握しとかなきゃだし、もし逃げられたらの対処とか。後は商品の説明とかは私がするから、エンガはその間に《もふもふ雲》の方の商品を出しててくれると助かるかな。昨日の少年が仲間を引き連れてくるの早いかもしれないしね。後は・・・。綿あめは《もしゃもしゃ草》の店番が確定してからにしたいから、昨日作った干し芋とオレンジタルトとドーナッツ、小瓶の方のジャムを出すのを忘れない様にお願いね。」
と、昨日作ったものが入ってる鞄をエンガの方に渡しておく。
「ん。分かった。俺の店だかんな。俺が頑張んねーとな!ヤエの店の説明に俺が付き添うよりも、それぞれ準備した方が早いしな。分かった。けどよ、もし、あのオッサン達が逃げたらギルドの罰則があるんだろ?平気だと思うぞ。それに、逃げるなら俺が捕まえるから大丈夫だ。安心して良いぞ。」
と、キリッとした表情でカッコイイことを言ってくれるエンガ。
でも、お髭に付いてるホワホワな生クリームがとても可愛いんだけど。
これもギャップ萌えだよね。
見た目が可愛いのにカッコいい事いってくれて。
もう、胸がキュンキュンです。
「うん。あの人達なら大丈夫だと思うけどね。エンガが捕まえてくれるなら安心だね。頼りにしてるからね、エンガ。今日も1日頑張ろうね。」
「っおう!!!!」
と、ぱあぁぁ!!っと満面の笑顔でご機嫌なエンガさんの可愛さよ。
残りのタルトを少しづつモグモグする可愛さったら。
もう、本当に、可愛い、です! はい!
こんなに可愛い人に引き合わせてくれて、神様、本当に感謝しかないです。
そのうち、神様のへの感謝の気持ちを込めて神棚でも作るべきだろうか?
商品の新作とか、お酒とかお供えするの、良さそう。
ん?
【ぜひ!是非とも!!待っておるぞ!!】
って聞こえた気がしたけど気のせいかしら。
まあ、帰ってきたらもう一度考えよう。
そろそろ行かないといけないからね。
【待って、後回しはダメ、絶対!!帰ったら作ってくれ~!!すぐじゃろ!?一瞬じゃろ!?】
って聞こえた気がしたんで、作る。
そう思ったら、声が止んだ気がする。
そんなこんなで神様からのお声?に返事しつつ、お皿を片づけ、エンガとお互いに髪紐を結びあって、お出かけ!
しかし、そこで問題が・・・・。
トリアがばらした事で、マーキングすることに対して開き直ったらしいエンガ。
「俺の匂い付けとくからな。頭、グリグリすんぞ。」
って言葉と共に、頭頂部にエンガさんの顎を乗せてグイグイと髪に匂いを付けられるとは思いませんでした。
しかも、エンガさんの喉がゴロゴロと鳴る、至福のオマケつき。
鏡に映るエンガは
目を細め、頬を染め、タルトを食べている時よりも幸せそうな表情を浮かべている。
この人は、本当に、私をどうしたいのか。
驚き桃の木山椒の木。
同じく鏡に映ってる私の目玉はこれでもかと見開かれていたのは言うまでもないでしょう。
そして、気づけば露店に居ました。
放心状態の私の手を引いてきてくれたらしいエンガ。正直、どうやって歩いたのか覚えてない。
気づいたら露店に居ました。
エンガさんって、たまに凄い事してくるよね。
褒めると照れて可愛いくせに、こっちをキュンキュンさせてくる大きな一撃をこれでもかと放ってくる時がある。
そのうち吐血するんじゃないかって心配になるわ。
ん?
大丈夫かって?
ああ、うん。大丈夫。
お店?ああ、うん。大丈夫。お店ね。お店。
頑張ろう。
うん。大丈夫。説明、しっかりできるよ。大丈夫。
エンガは《もふもふ雲》お願いね?
と、エンガから心配されつつも、何とかお互いに準備を始めることに。
私はオッサン2人が来るのを・・・。
っと、やって来ました。
【カルロス御爺さん】と【ボリスさん】
約束の時間前の集合、恰好も綺麗でとても好ましいです。
「おはようございます、カルロスさん、ボリスさん。」
『おはようさん。』
と、少し眠そうなボリスさんと、真面目な表情のカルロスさん。
『エンガさんはそっちか?挨拶しても?』
と、2人が聞いてきたので、許可することに。
通路挟んで直ぐだから、エンガにもこの会話は聞こえているだろう。
「エンガさんも、おはようさん~。」
と、エンガにも軽く挨拶する2人。
「お、おはよう!!!」
と、かなり気合の入った挨拶を返したエンガ。
多分、突然の事で緊張したんだろうな。
尻尾太くなってる。
周囲に出ているお店が少ないからか、人も少なくエンガの声が響いた。
そんなエンガの大きな声に少し驚いた様子の2人だったが、
「気合入ってんな~。俺達も頑張って売るからな、そっちの店も頑張れよ~!」
「ああ、元気があるのは良い事だ。周囲の士気も上がるからな。」
と、2人とも口元で柔らかく笑いながら、頷いて軽く手を振ってくれた。
「おう!頑張る!ボリスさんとカルロスさんも頑張ってくれ!説明はヤエに任せてるから!これからよろしくな!」
と、自分の大きくなった声にも怯えずに肯定してくれたのが嬉しかったのか、少し緊張は解けたらしい。声はまだ大きいが、エンガは少し悩んだそぶりを見せた後、そっと小さく手を振り返した。
きっと、手を振り返すべきなのか良く分からなかったんだろう。
繊細なエンガらしい。
大丈夫、間違ってないよ。2人はエンガに手を振ってくれたんだもの。
良いのよ、頑張ろうね~。で、手を振ってもらって嫌な気持ちになる奴なんていないから。
私的には、大きな虎の獣人さんが小さく手を振ってる姿、めちゃくちゃ可愛いし。
と、頷いてみていると、何も言われないことにホッとしたらしいエンガは品出しの作業に戻った。
「さーて、こっちも開始しましょうや。教わる事多いだろうし、早く始めたほうが良いだろ?」
と、ボリスさんの提案で早速、説明開始。
2人とも直ぐに筆記用具を出して、聞く体制に入っている。
あー、良いな。この2人が続いてくれたら、嬉しい。
「この拡張鞄に品物が入っているので、この中から出してお願いします。あ、机なんかはこっちの拡張鞄で・・・・」
と、机の設置から商品の説明、立て看板の説明、回復薬の個数制限と、面倒な相手がきた時や対処の仕方が分からない時は私を呼ぶこと。など、実際に商品を味見してもらったりしながら様々な説明を終えると
「芋、デケェな・・・。っつか。この白パンスゲェ。しかも、肉ウメェな。にしても、聞いてはいたが、本当にこんな値段で回復薬売ってんのか?直で冒険者ギルドに卸せばもっと良い金になるんじゃないか?回復薬店なら露店なんて面倒な事せずに、大きい店舗も構えられるだろ?個数の問題か?」
と、聞かれた、というか心配してくれたらしい。
世間知らずの女の子が損してるのを見てられないってところかな?
2人とも、心配そうな顔してる。
「あー、いや、冒険者ギルド嫌いなんで。お店も小さいのが良いので、露店なんですよ。責任とか面倒なんで。」
と言うと
「まあ、ヤエさんがそれで良いなら良いだろう。ワシ達はただ、この店で働かせてもらえる只の店員だ。」
と、これで話は終わりだと、品出しの作業を始めてくれたカルロスさん。
「あー、すまん。余計なお世話だったな。ヤエさんが納得してんなら良いんだ。」
と、少し気まずそうなボリスさん。
「いえいえ。心配してくれてありがとうございます。別に全ての冒険者が嫌いな訳じゃないんですよ?まあ、エンガを馬鹿にするやつは冒険者でも何でも嫌いだし許しませんけど。回復薬を売るのは、お金持ちになりたいとかじゃなくて『エンガと生きていくための最低限のお金』が入る様にする為だし、責任を負わない露店での回復薬なら安くないと売れないでしょう?だから、この値段なんです。」
説明したら納得してくれたらしい。
余計な事だと判断したらすぐに引いてくれるところもポイント高いな。
『大人の言う事を聞け』タイプの人間だったら面倒だもの。
そう思っていると、お客さんが。
いつものさつま揚げと回復薬のオジサン。
早速、2人に対応してもらいましょう。
気安いオッサンが相手だからか、
「朝飯がわりになるものあるか?あと、さつま揚げと回復薬。」
と、いつもより喋るオジサン。
「飯がわりなら、この【チャーシューマン】が良いんじゃねぇか?軟らかくて分厚い肉を挟んだフカフカな白パンにピリ辛なタレが付いてる奴。もしくは、このデケェ芋に、酸味のあるソースをかけた【蒸かし芋】値段はここ見てな。」
と、説明するボリスさんと、さつま揚げと回復薬を用意するカルロスさん。
それを見たおじさんは
「ん?見た事ねぇな・・・。って芋でかっ!?これ、本当に芋か!?食えんのか!?大丈夫な種類か!?」
と、驚愕の表情。
「食えるぞー。俺もオヤジも食った。ウマかった。正直、美味かったし安いしで俺も驚きだわ。」
と、笑うボリスさん。
「・・・・。そうか・・・。んじゃ、両方貰おう。仲間の所に寄るから、半分にして食う事にする。安いから2つ買えるしな。」
と、2つともお買い上げ。
ちゃんと、お持ち帰り用に紙に包んであげるのよ。
芋は真ん中を割って、マヨを注入。
よし、教えたとおりに販売完了。
お金も直ぐに専用の鞄に入れてくれたし、計算も問題ない。
お客さんへの対応も問題なし。
「じゃあ、ここは2人に任せるから、後はよろしくね。私はエンガの所に行ってくるから、何かあったら呼んでください。」
と、2人に任せて私はエンガの元へ。
「ヤエっ!もう良いのか?後はこっちに居んのか?」
と、座って店番をしていたエンガが立ち上がり、お出迎え&椅子を引いて座らせてくれる。
ナチュラルに紳士だよねー。
素敵。
しかも、寂しかったのか、椅子をこないだよりも近くに設置していたりと、可愛さが止まらないエンガさん。
「うん。トラブルがない限り、あの2人に任せてみる。」
と、エンガと話していると、少し離れた所にエンガの目が動いた。
そっちの方を向いてみると、歩いてくる子供が2人。
「おはようございます!!」
「おはようございまーす。」
と、笑顔で現れたベルント君と、少し眠そうなアーベル君。
「おはよう、アーベルにベルント。早いな!」
と、笑顔で対応のエンガ。
「昨日はありがとうございました。オマケのタルトも美味かったっす。早朝分の仕事が終わったんで、寄ってみたんすけど、商品増えてるんすね。んー・・・。やっぱ、ラッキークッキーを一つ。」
と、眠そうな目を擦りながら、手にしていた硬貨をエンガに渡すアーベル君。
「僕からもありがとうございました!!美味しかったし、家族も喜んでました!!僕も早朝の分の仕事を終えてチップ貰って来ました!!僕は、えっと、ラッキークッキーと一口ドーナッツをください!」
と、手にしていた硬貨とポケットから出した硬貨をエンガに渡すベルント君。
これはあれかな?
ここに来るつもりで硬貨を握ってきた感じかな?
思ってたよりも可愛い子達じゃないか。
小銭握りしめて、昨日から楽しみにしていた駄菓子買いに行く子供な感じ。
感想を聞いてエンガも嬉しそうだし、今日の一組目がこの2人で良かった。
笑顔でラッキークッキーとドーナッツの用意してる。
ドーナッツを先に渡して、ラッキークッキーはお決まりの文句と注意を伝えてから、篭を向ける。
これは見てる人達にも分かるように、絶対にやることにした。
2人は文句も言わず、エンガの注意を聞き、差し出された篭から直ぐにクッキーを選び出した。
「ん?今日は早いな?ゆっくり選んで大丈夫だぞ?」
と、エンガが声をかけると
「んや。直ぐに次の仕事があるから。あ、ハズレ。まあ、このクッキー自体美味いから買えるだけラッキーだよな。」
と、直ぐに袋を開けたアーベル君。
「あ、ハズレた・・・・。うん!クッキー美味しいもんね!甘くて美味しいお菓子が、こんなに安く買えてラッキーだよ!エンガさん、僕も今からお仕事だから、このドーナッツはお昼に食べるね。僕、このラッキークッキーのファンだから、明日、また来ても良いですか?」
と、外れたことに落ち込みつつ、一口ドーナツとクッキーを大事そうに抱え、明日もお店に来て良いか問うベルント君。
「おう!明日も来てくれ!休む時は前の日に言うか、【休み】の看板出せるようにしとくからな。」
と、2人が直ぐに行ってしまうことに一瞬落ち込んだものの、明日も来たいと言ってもらえて凄く嬉しそうに返事したエンガ。
そして、私たちに手を振って、『また明日~』と2人は同じ方向に歩きながら去って行った。
エンガと一緒にその様子を微笑ましく見守っていたんだけど、
ベルント君が道を曲がった瞬間、アーベル君がそれまで歩いていた道を凄い速度で走り去っていった。
「・・・・・。アーベル、本当に足が速いんだな。俺より早いんじゃないか?アレ。・・・もしかして、時間に余裕がないのに来てくれたのか?」
と、驚きと無理やり来てくれたのかと不安そうな顔のエンガ。
「本当に速いね。驚いた。んー、本当に時間が無かったら来ないと思うよ?ここに来るより生活費を稼ぐ方が大事だろうし。二人で歩いてきて、歩いて帰って行ったでしょう?一人になったら走ってたけど、余裕をもって行動したかっただけかもしれないし。無理に来たんじゃないと思うよ?」
「そういや、最初、歩いてきてたもんな。良かった。」
と、安心した様子のエンガ。
このやり取りをしている間も、向かいの店《もしゃもしゃ草》は商品が飛ぶように売れていく。
なんだ、アレ。
今までに列なんて出来たことなかったぞ。
回復薬は、もう今日の分は終わったと言っているのに、まだ列がある。
どーいうこっちゃ。
並んでる奴らの声に耳を集中させると
「やっぱ子供から買うのは何かな~。」
「獣人こえーし」
「芋美味いってよ。」
「食いモンが珍しくて美味くて安いんだと。」
「安い芋がデケェのに美味いって本当かよ?」
って感じの声が聞こえてくる。
あー。
あれか。
日本人特有の少し年齢を下に見られる現象のせいで、若すぎる女の子が出してる商品だから食い物は怖くて食えなかったって感じ?
でも、オーナーは私のままだし、商品代わってないし。
店員が変わっただけだからね。
女の子が作った得体の知れない食べ物に違いはないよ。
それと、獣人怖いって言ってる奴、エンガは怖くないからね。
獣人でくくっちゃだめだよ。
お馬鹿さん。
まあ、あっちが売れて、こっちはエンガとまったり出来るなら、それでいいや。
お金はあった方が良いしね。
にしても、あの二人は中々に商売上手らしい。
蒸かし芋を食べるならフライドポテトじゃなくて、さつま揚げにしとけとか、酒のつまみにも良いぞとか、勧め方が上手い。
流石オッサン。オッサン心を分かってらっしゃる。
余計な口は出さずに、このままお願いしよう。
そう考えていると
「スゲェな。あっち、列できてる。やっぱり、あの芋。ヤエが俺を想って作ってくれた芋が人気あんだろうな。あんなにデカくて美味くてホクホクの、ヤエにしか作れねぇもんなぁ。」
と、誇らしげなエンガ。
・・・・。
誇らしげなのは可愛いんだけど、コレ、あれかな?
【エンガの為に作ったお芋】を出してる事、怒ってる?
他の物はエンガの為に育てたとか言ってないけど、蒸かし芋はそう説明したもんね。
・・・・。
エンガの為のお芋って説明したもんね。
エンガを想って作った作物が別のやつの腹に納まる。
これ、ダメな事だよね?
ダメだ。
ああ、これ、本当にダメなやつ。
「ごめん、エンガ。私、そこまで考えてなかった。直ぐにお芋回収してくるから待ってて。本当にごめん。」
と、立ち上がろうとしたら
「んあ?え?なんでだ?ん?芋、売れてるんだろ?なんで回収?ヤエ、分かんねぇから説明してくれ。」
と、今にも歩き出そうとしていた私の手を引いて、椅子に座らせるエンガ。
「本当にごめん。エンガの為に愛情込めて作ったお芋なのに、他の人間に食べさせるなんて、私、馬鹿だった。」
もう、本当になんて馬鹿なんだろう。
大きくて腹持ちが良いし、沢山獲れるし、エンガも美味しいって言ってくれたし。
作るのが簡単だからってメニューに入れて。
エンガの為のお芋って説明したのに。
本当に、大馬鹿だ。
どんどん血の気が引いていく。
気を失う寸前って、こんな感じだろうか。
「ん?んー、ん?あー、分かった。違う、ヤエ、そうじゃなくて。俺は、【ヤエの作った芋がスゲェ】ってのと【その芋はヤエが俺の為に作った新種だぞ!】だから美味いんだぜ!!だから売れるんだぜ!!って言いてぇんであって、あれが全部俺の腹に入るとは思ってねぇよ。じゃねぇと、俺、3食、一生、芋食わねぇと。無くなんねぇだろ?な?ヤエが俺を想って育て上げた新種って事が大事なんだ。」
と、優しい声色で頭を撫でてくれるエンガ。
「大丈夫だ。分かってるから。あとな、もし、売るのが嫌なら、店に出してるの見た時点で嫌だって言うぞ。俺、我慢するの辞めたからな。嫌なら嫌って言う。駄目ならしょうがねぇけど、言うのはタダだろ?ヤエはちゃんと話聞いてくれるしな。分かってるから、大丈夫だ。」
と、落ち着かせる様に頭を撫でてくれるエンガ。
「ごめん、最初にもっと考えればよかった。他のメニューも、、、、」
と言いかけたら、エンガに頬っぺたを軽く潰された。
「ヤエ、泣きそうな顔してるぞ?その顔、ダメだ。俺、嫌だ。芋の事は嫌じゃない。《もしゃもしゃ草》のメニューで良い。このままでいいし、俺にとって何の問題もない。だから、俺を傷つけたってヤエの判断で泣きそうな顔するのは止めてくれ。胸がぎゅーってなるから、それ嫌だ。」
と、困った様な表情で、私の頬っぺたをぷにゅぷにゅと潰したり戻したりするエンガ。
うにゅ。
そんな事を言われたら、1人で落ち込んでいる場合じゃない。
エンガは本当に気にしていないみたいだし、エンガを傷つけてなかったのは良かった。と、いう事にしておこう。
まだまだ失敗ばかりだな、私。
次からはもっと気をつけよう。
よし、大丈夫、気合入った。
「分かっひゃ。次の商品はもっとひゃんと相談しゅゆね。作物の時点から相談しゅゆ。エンガが心から言ってくえてゆの分かってゆ。エンガの大丈夫が本当なのも分かゆ。」
と、口を押えられてるので、ところどころ間抜けな発音になってしまったがしょうがない。
「ふっ、ははっ。可愛いな、ヤエ。それ、可愛い。もう少し喋ってくれ。」
と、エンガは楽しそうに私のほっぺをぷにゅぷにゅしてる。
私からしたら、そんな風に笑うエンガの方が何十倍も可愛いんだけど。
勿論、エンガが望むのであれば、例え少々ブサイクな顔になろうとも、間抜けな言葉になろうとも喋りましょう。
「優しゅいね、エンガ。可愛いって嬉しゅい。エンガも可愛いよ~。しゅきよ~。しゅきしゅき~。エンガも、もひゅもひゅしゅゆ~。」
エンガの頬っぺたに手を当てて、私ももふもふしてやる。
そう思って手を伸ばしたが、
「ッブフっは!ヤエ、可愛いなっ!可愛い!」
と、ちゃっかりと私の手を避けて、嬉しそうに笑うエンガの可愛さよ。
本当にこのオッサン可愛い。
暫くそんな感じでイチャイチャしてたら
「・・・・なあ、そろそろ良いか?俺達、けっこう待ってんだけど・・・。チビが疲れて座り込んじまってんだけど・・・。」
と、昨日の嵐の様な少年が呆れた様子でたたずんでいた。
あれ?
キミ、昨日の駄々っ子モードどうしたの?
今日は何だか大人モードだね。
「っんぎぃっ!?」
と、エンガは爆笑の最中に急に声をかけられて驚いたらしい。尻尾が太くなったうえで変な声が出てた。
笑ってて完全に気を抜いてたから子供の存在に気付かなかったみたいだ。
まあ、多少離れてたし、子供たちからの悪意が無かったのもあるかもだけど。
ちなみに、私は気付いてたよ。
少し離れてたから、他の子がエンガに慣れてから近づいてくるのかと思ってたら、けっこう離れた所ながらも待っていたらしい。
いやはや、すまんね、少年。
「遠くにいたからウチに来たとは思わなかったの。ごめんね。今日はいっぱい連れてきてくれたのね。いらっしゃい。」
と、少年に声をかける
「ゴ、ゴホ。い、いらっしゃい。」
と、エンガも咳を一つして、ご挨拶。
「おう。今日来るって言っといただろ、オッサン。・・・・。あーゆー時に邪魔すると、家のねーちゃんは怒るから、邪魔しちゃいけねーと思って待ってたんだよ。ずっと。」
と、わざわざ来てやったのに。長く待ってたんだぜ。と主張するかの少年。
そうか、少年には姉がいるのね。
んで、恋人との時間を少年は何度か邪魔したことがあるんだろうな。
で、怒られて学んだと。
にしても、ホントに今日は大人っぽいな。
昨日のクソガキモードと駄々っ子モードはどうしたの?
「ご、ごめんな?待っててくれてありがとうな?そっちの子、こっちの椅子、座るか?あっと、えっと、今日もクッキーか?」
と、申し訳なさそうに、小さい子に椅子を勧めつつ、声をかけるエンガ。
「わりーな、オッサン。椅子借りるぞ。モモ、座らせてもらえ。このオッサン、優しいから大丈夫だ。デッカイ猫だ、大丈夫だ。猫の隣なら平気だろ?」
と、しゃがんでる小さい女の子に声をかける少年。
「ん。」
と、疲れて元気のない小さい女の子はエンガと少年の勧めた椅子に座った。
にしても、虎の獣人のオッサンを【猫】って言えるの凄いな少年。
そして納得した女の子も凄いな。
そう思って他の子を観察しようとしたら
「・・・・んにゃー?」
・・・・・・。
え?
なに、今の可愛いの。
え、エンガさん、女の子と目が合った瞬間、にゃーって、言わなかった?
え?
うそ、ちょっと、やだ、可愛い。
「んふふ、にゃーにゃー、かーいーね!」
と、小さい女の子はものすごく嬉しそうだ。
エンガはホッとした顔をしてるけど、
他の子供たちと私はぽっかーん。
「だから言ったろ、このオッサン、良い奴だって。獣人っつーか、でっけぇ看板猫だって。で、オッサン。オレの分のクッキーくれ。モモ、自分の分、自分でな。このにゃーにゃーに、『クッキーください』ってコレ渡してな。お前ら、自分の分は自分で言えよー。」
と、自分の分のお金を慣れた手つきでエンガに渡して、モモちゃんの分のお金もモモちゃんの掌に乗せてあげた少年。
すると、
「えー、テルにいちゃん、モモちゃんだけ、ひいきー。」
「えー、テルにい、俺のもー。」
「えー、良いじゃん、テルテル、俺のも一緒にー。」
「えー、テールー、俺のもー。」
とか、他の子が一気に喋りだした。
「ばーか。モモはまだ小せぇし、俺の妹だからな。特別だ。モモの分は兄ちゃんの俺が出してやんの。それに一人一個なんだから自分達で頼めよ、お前ら。」
と、どうやらモモちゃんは少年の妹らしい。
他の子達も少年より年下の集まりみたいだし、昨日と違って今日は1番お兄さんなのかな?
だからかな?
今日はちょっと大人なお兄ちゃんモードなの。
きっと、守ってあげなきゃモードなんだろう。
この世界の兄という存在は下の子に対してかなり頼りにされる存在らしい。
モモちゃんは素直に
「あーい。にゃーにゃー、クッキーくらしゃーい。モモのー。」
って掌の硬貨を差し出してエンガに笑顔を振りまいている。
「あいにゃー。」
と、返事をしてお金を受け取るエンガの可愛さ、ビックバン。
もしかして、モモちゃんとエンガのコラボって、過去最強の可愛さじゃないですか?
さてさて、この子達のお買い物は無事に終わるのでしょうか?




