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ヤエが作ってくれたエプロン。

エンガさん視点です。

口調がちょっと違う気がして、中々アップする気にならなかったのですが、ある程度形になったので取り敢えずアップしました。

後で消すかもしれませんm(__)m

魔具の事でヤエと喧嘩しちまった。

いや、喧嘩じゃねぇか。

俺が勝手にガキみてぇに拗ねただけだ。

魔具にヤエを取られたみてえな気分になってヤエに八つ当たりした。

情けねぇオッサンだよなぁ、ホント。

ヤエは自分が悪かったって謝って、仲直りのお茶にしようとしてくれた。

ヤエの方がしっかりしてる。

情けねぇ・・・。


仲直りのホットミルクは俺が淹れた。

謝罪の気持ちと、少しでも良い所を見せたかった。

ちっとばかし失敗しちまったが、ヤエは「美味しい。ありがとう。」って言ってくれた。

その顔が嬉しそうで、幸せそうで、安心した。

今後も喧嘩しても仲直りしようって頷いてもらえて、安心した。

ヤエはいつも、当然の様に【2人で過ごす未来】を約束してくれる。

それがどれだけ嬉しいか。


仲直りのお茶をして、幸せな気分でギルドに行った。

猛ダッシュ。

全速力で走ったが、ヤエは軽い息切れだけだったみてぇだ。

俺はまだ余裕があったが、周りの奴らは驚いてたみてぇだし、ヤエは足が速いんだろうな。

商業ギルドで、牧場のマルフィールってやつに話を聞いた。

俺には良く分からん話なんで、ヤエに任せることにしたが、こいつ、何か嫌な感じがする。

騙すとかじゃねぇが、商人って感じだな。

奴隷時代によく見てた奴らに近い。

俺とヤエを見た瞬間に、全身をチェックした感じがした。

ギルドもヤエも良いって言ってるから内容にはケチを付けねぇが、もし、何か問題を押し付けてきたりするんなら俺が全力で抗議してやる。

計算も肉の価値も良く分からないけどな。

今後も要注意人物だ。

俺は頭に顔と匂いを刻んだ。


もしゃもしゃ草の方で仕事を開始した。

レイル爺さんは相変わらず、オニオンリングを喜んで食ってた。

新作のさつま揚げも喜んでくれたみてぇで嬉しい。

ヤエの作ったもんだから美味いのは当然だけどよ、それを認めてもらうっつーか、褒めてもらえるのって俺も嬉しい。

しかも、どんどん客が来た。

俺を見ない様にしてる奴も何人かいるが、気にしねー。

ヤエと2人での販売は息がぴったりで、嬉しかった。

ヤエが他の野郎に笑顔で愛想を振りまくのは嫌だが、俺に向けてくれる笑顔と違う気がするから、我慢できる。

俺に向けてくれる笑顔はなんつーか暖かい。

ふわっつーか、にこにこ、幸せです!みたいな感じで、俺も幸せになれる笑顔だ。

あいつらに向けられるのとは違う。

フフン。

俺はヤエの特別だからな。

なんて思ってたら今日も完売。

スゲェよな。

こんなに飛ぶように商品が売れるなんて。

ヤエはもっと大きな店を持った方が良いんじゃねぇか?

と思うほどだ。

まあ、俺が口を出す事じゃねぇけどな。


店を閉めて家に帰った。

ヤエは魔具を使って様々な物を作った。

使い方も教えてくれて、朝とは違って俺も手伝えるようにヤエが指示してくれた。

本当にヤエにはかなわねぇ。

魔具を使った料理は魔法を見てるみてぇで面白かった!!

ウキウキが止まんねぇ!!

チャーシューの匂いには涎が出そうになった。

しかも、俺の店の《もふもふ雲》の為の《わたあめ》なんて商品まで考えてくれてた。

空に浮かぶ雲みてぇなフワフワなのが出来るんだぜ!?

もう、目ん玉飛び出るかと思ったぜ!!

甘くて、口で溶ける、魔法の様なお菓子。

ヤエの手から作りだされる食い物は全部、魔法みてぇだ。

スゲェ!!

ちっと失敗して、顔がべたべたになったけどよ、ヤエが笑ってくれたから良し。

クロワサン?は難しいから、今度教えてくれるってよ。

俺は粉を撒く手伝いをした。

今度焼きたてのクロワサンを食わせてくれるって。

楽しみだぜ!



んで、昼飯。

肉の塊が食いてぇって言ったら、本当に大きくて分厚い肉を用意してくれた。

包丁で切り込みを沢山いれてたり、玉ねぎをすり込んだり、色々してたからか、見た目は硬そうな肉なのに、全然そんなことはなかった。

齧り付いてもぎゅもぎゅと咀嚼すると、

【ああ!俺、肉食ってる!!】

って感じの、食いごたえのある肉。

付け合わせの野菜も米も沢山用意してくれてて、肉と一緒に幸せを噛み締めてる気分だ。

そう思ってると、ヤエが芋を出してきた。

コロコロとした、大きな芋。

こんなの店では見た事ねぇ。

熱々のそいつを食べた。

美味い。

当然だった。

ヤエが俺を想って作ってくれた芋だったんだ。

俺は幸せ者だな。

俺の為にって、色々考えて料理だけじゃなく作物にまで気を使ってくれるヤエ。

優しいヤエ、やっぱり好きだ。

俺の食べかけを渡しても嫌がらない。

「分けてくれてありがとう」って言ってくれる。

俺はずっと空腹で生きてきたから、腹が減る辛さは良く知ってるし、美味いもんを食える幸せや喜びは人一倍だと思う。

だから、ネリーやコーザ、トリアやノイズにも色々食わせてやりてぇと思うんだ。

でも、ヤエと一緒に食う飯、ヤエと半分こして食べるのが一等好きだ。

自分が幸せだと感じた瞬間を共有できるのは、本当に幸せだと思う。

俺はヤエといると本当に幸せだ。

飯を食い終わって、そんなことを考えてたら、眠くなってきた。

あー、眠い。

ん?

ヤエがエプロン作ってくれるって言ってる。

でも、眠い。

ヤエが俺とお揃いのエプロンを作ってるとこ、見てぇ。

でも、眠ぃ。

目があかねぇ・・・・。

ヤエが

「ふふふ、エンガはお昼寝かな?おねむだねぇ。」

なんて優しく頭を撫でるから、もう、本当に駄目だ。

起きていられない。

サイズを測るって言われて、立ち上がったら、身体をあちこち触られた。

・・・気がする。

だめだ、もう頭が動いてねぇ。

ヤエは部屋で寝てこいっていうけど、部屋で寝たら朝まで起きない自信がある。

それは嫌だ。

目が覚めたら直ぐにエプロン見てぇし、作ってる間に起きれるかもしれねぇし。

何よりも、ヤエのそばにいてぇ。

だから、ソファに横になった。

ヤエが優しく何度か頭を撫でてくれて、俺は眠った。


目が覚めた!!

エプロンはどうなった?!と起き上がるとチョキチョキと音が聞こえた。

間に合った!!

変な形の魔具の前にいるヤエの手が止まったのを確認してから立ち上がって声をかける。

やっぱり、今から俺のエプロンを作るところだった!

間に合った!!

エプロンを作るとこが見れる!!

夕飯はパンで良い!!

美味いし好きだ!!

それに、お揃いのエプロン、早く見てぇし着たい!!

2人で!!

と、気が急いてヤエの邪魔にならない様に気を付けながら応援した。

ついに出来上がったエプロン。

ヤエは「歪な所もあるけど。」って言ってたけどよ、店で売ってるのみたいだった。

ヤエと2人で着た。

お揃いのエプロンだ!ヤエが作ってくれた、世界に1つだけの、俺のエプロン!!

すげぇ嬉しい!!ヤエもニコニコしてて、笑顔だ!!

「エンガとお揃い!頑張った!良くやった私!!」

って言ってたけど、本当、凄いぜヤエ!!

「頑張ってくれてありがとうな!!俺、嬉しい!ヤエに似合ってる!!この色にして良かったな!!」

と褒めると

「エンガも似合ってるよ!!カッコイイ!!大人の男の色気みたいな感じで素敵!!」

と、真っ赤になったヤエから絶賛された。

俺も照れちまって、暫く2人で【いや、そっちの方が似合ってる】と褒め合いが続いた。


で、お揃いのエプロンでテンションが上がった俺は、一緒に何か作りたいとお願いした。

遅い時間だが、この喜びであふれた気分を何とかしたい。

ドキドキで眠れねぇし、興奮が止まらねぇ!!

で、大学芋とやらを作ることになった。

完成形が分からなかったが、ヤエがウキウキしてる気がする。

ヤエの好物なのかもしれねぇ。

そう思った俺は、大学芋の作り方をしっかりと覚えようと気合を入れた。


大学芋は食えるまでに時間がかかって、お預け・・・・。

待つのがつらかった・・・・。

でも、大学芋、作って良かった。

ヤエが食べたいものだったらしい。

いつもは俺の顔を見ながら、俺が食べるのを暫く見守ってるヤエが、自分から進んで手を伸ばして食べ始めた。

ヤエの為にも、俺一人で作れるようにならねぇと。

後でノートに作り方の絵を描いておこう。

忘れねぇうちにな。

大学芋は表面がカリカリで、中がサクサク?ホクホク?で美味かった。

表面は甘いが、中が素朴な甘さでバランスが良い。

食べやすいし、好き嫌いのなさそうなお菓子だなぁ。

って思ってよ、店で売るのか聞いたら、ヤエはポツポツとモゴモゴと、独り言のように話し始めた。

こんな様子のヤエは初めて見る。

いつもと違う。

俺の顔を見てねぇ。

今のヤエには俺が見えてねぇ。

そこで気付いた。


俺は何てダメ野郎なんだ!!

昼に寝てた俺と違って、ヤエはエプロンを作ってくれてたんだ!!

疲れてるに決まってるだろうが!!

バカか!!

自分の馬鹿さ加減に本気で腹が立った。

ヤエの方を見てみると、目が半分もあいてねぇ。

シパシパとまぶしそうに瞬きを繰り返してる。

俺は直ぐに芋を仕舞って、ヤエに歯を磨かせて、部屋に連れて行った。

流石に着替えまではさせられねえが、仕方ねぇ。

ヤエをベットの中に仕舞い込んで、頭を撫でながら、エプロンのお礼を言っていると、直ぐに寝息が聞こえてきた。

ヤエがこんなに直ぐに眠りにつくなんてな。

よっぽど疲れてたんだろう。

なんで、もっとヤエの事を考えてやれなかったんだろう。

自分のやりたい事ばっかり言って。

今回の事で、ヤエは頑張りすぎるって事が分かった。

もっと、もっと、俺がしっかりと気をつけてやらねぇと。

やりたいことは伝えるって約束してるから、言う。

でも、ヤエが「大丈夫」って言っても、ヤエの様子を見て、それが本当かどうかをちゃんと俺も判断できるようにならねえと。

俺は本当にまだまだだな。

もっとヤエを大事に護れる男にならねぇと。

そう決意すると共に、ヤエの額にキスを落とした。

勿論、ヤエが起きてねぇかどうか、何度も手を振って確かめてからだ。

コーザが言ってた。

キスは【大好きだよ】を伝える一番の方法だと。

本当は口にするらしいが、それは夫婦だからなんだと。

俺はヤエと、ま、まだ、夫婦じゃねぇ、からな。

口は駄目だ。

コーザは「なら、額にしてあげなよ。絶対に喜ぶよ。」

なんて言ってたけどよ、やっぱり起きてる時は照れる。

だから、寝てる時から少しづつ、慣れてこう。

【大好き】と【いい夢が見れるように】と両方の想いを込めて。


ヤエの幸せそうな寝顔を確認してから、俺は自分の部屋に戻った。


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