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皆でお茶をしましょう。

エンガの心配をするトリアに感謝しながら、エンガの作業が終わるのを待っていると、店仕舞いを終えたらしいネリーがお茶の準備を始めた。


正直、魔獣の解体作業場所から少し離れた場所とはいえ、机や椅子を出してお茶するのってどうなの?

血とか割とグロくない?

とは思うのですが・・・。

ああ、ネリーもトリアも慣れてるのね。

成程。

じゃあ、私も大人しく待つことにします。


お茶の準備を手伝っていると


「あ!そういえばヤエ!昨日貰ったやつ!甘くて美味しかったわ!アレ、林檎なんだっけ?どうやったらあんなに甘くて柔らかくなるんだい?コーザが気に入ったみたいでね。出来れば、作り方を教えてくれると嬉しいんだけど・・・。もし、商品として販売するなら買わせておくれ!!」

と、ネリーからのお願いが。

すると、


「あ!昨日のやつか??オレも食った!美味かった!甘ぇーし、トロトロでシャキシャキで、塗ったパンが軟くなって食いやすかった!!あれ、売るんなら俺にも売ってくれ!!あんまし高ぇと買えねーけどよ。また食いてぇ!」

と、トリアも鼻息が荒い。


2人とも《林檎のジャム》を この世界の硬いパンに塗って食べたらしい。

そして気に入ってくれたらしい。

良かった。

この様子なら、林檎のジャムは無事に販売出来そうだ。


「喜んでもらえて良かった。あれ、エンガも一緒に作った作品だから、エンガにも感想言ってあげてね。きっと喜ぶから。ネリー、申し訳ないんだけどジャムはウチで販売しようと思ってるの。だから、レシピは教えられないんだけど販売の時にはお知らせするね。トリアにも。販売の値段はまだ考えてないけど、そんなに高くする予定はないから気軽に買えると思うよ。2人にはこれからもお世話になるし、少し割引するから期待しててね。」

と、お返事しておく。


実際、林檎もお砂糖も自家製で格安。

更に、作るのも私の時短魔法を使えば、簡単に大量生産が可能である。

なので、そんなに高くしなくて良いと思う。

瓶とかの値段はかかるけれども・・。

それと、林檎の皮むきとかが面倒だね。

そのうちパートさんでも雇うかな。

販売が軌道に乗ったら要検討だね。

と、話をしていると、解体を終えたエンガとコーザが手を洗ってこちらにやってきた。

トリアとネリーにジャムの事を褒められて、ホクホク顔のエンガは私の隣に座ろうとして


「終わったぞ!ヤエ!俺、色々、覚え・・・・。スンスン・・・。スンスン。スンスンスンスンスンスン。」

突然、エンガは真顔で私の肩から首の辺りに顔を埋めて、匂いを嗅ぎ始めた。


「え?なに?エンガ、急にどうしたの?え?え?臭い?私、なんか臭いの?」


なに?なんなの?どうしたの?

急にスンスンと私の匂いを嗅いでるのよ?

臭いの?

私、臭いの?

え?

臭うの?

と、不安に思っていると、エンガが私の肩にグリグリと頬っぺたを擦り付けてきた。


「・・・。ヤエ、なんか、トリア臭ぇ。なんか、この辺、すげぇトリアの匂いする。」

と、私の肩やら腕の辺りやらに頬っぺたをグイグイと押し付けるエンガ。

そんなエンガを見て、私もコーザもネリーも驚き、ポカーンとした表情を作るのみ。

そんな中、ため息をついたのはトリア。


「あー。そういや、さっき、店番した時に隣にいたからな・・・。にしても、エンガ。オレ臭いってなんだよ。しかも、んなにグリグリすんなよ。ヤエに牙当たったら大変だろ?マーキングも程々にな?」

と、当然の事の様に話すトリア。


え!?

マーキング!?

マーキングって何!?

エンガが私の事を【自分のもの】って周囲に分からせるために匂い付けしてるって事??

どうなの?

その辺、詳しく教えてください!!

鼻息が荒くなった私を横目に


「ん。そうだな。あんましグリグリしてっとヤエに傷つきそうだしな。こんなもんで良いか・・・。トリアの匂いも消えたし。俺の匂いだし。良し。」

と、納得したらしいエンガ。


「もうオレの匂いなんてしねーだろ。つーか、ヤエからエンガの匂いがすんの謎だったんだけどよ、もしかして毎日やってんのか?それ。」

と、不思議そうにエンガに聞くトリア。

それに答えたエンガは


「んにゃ。普段は髪紐を結ぶ時にめちゃくちゃ髪触るようにしてる。流石にグリグリはしてねぇよ。あんまし獣臭ぇのもヤエに悪ぃから、軽いので良いと思ってる。でも、今回は別だ。トリアの匂いの上書きだから。少し強めにしとかねぇと。」

と、うんうん頷いている。


は、初耳です!!

それ、初耳だよ!!エンガさん!!

毎日、髪紐をお互いに結んでるのって、気合を入れる為だと思ってたけど違ったのね??

お互いのマーキングの意味だったのね??

知らなかったよ!!

んでもって、そのご満悦なお顔、すごく可愛いです!!

【俺の匂いだし。良し。】

とか、ご機嫌なのが可愛いよ!!

色々、つっこんで質問したかったけど、もうどうでも良いよ!!

可愛いエンガは正義です!!

トリアやネリー、コーザが苦笑してるけど、気にしない!

私はニッコニコだよ!!

大好きっ!!


【ぐぎゅ~ぐごごごっご~】


何か聞こえた。

以前にも似た音を聞いたことある気がする。

これは・・・。

エンガのお腹の音だな。

そう思ってエンガの方を見てみると、驚いた表情のエンガ。

あれ?

今の豪快なお腹の音、エンガじゃないの?

じゃあ、トリアの・・・。

あれ?

トリアも驚愕の顔してるね。

じゃあ誰・・・?


皆の視線の先を見てみると、照れた表情で、頬を掻いているコーザの姿が。


「エヘヘ、お腹なっちゃった。ごめんね~。緊急の解体があってお昼食べてなくてさ~。お腹空いちゃった~。」

なんて、頬を赤く染めてるコーザ。

いやいやいや、普段のゆる~い口調からは考えられない位、豪快で男らしいお腹の音ですね。

そんなコーザのお腹の音を聞いて、ネリーは


「ああ、ごめんね、コーザ。今から作るから少し時間がかかるけど、もう少し我慢してくれるかい?それとも、何か肉だけでも焼こうか?」

と、申し訳なさそうにコーザに提案するネリー。


どうやら、コーザは緊急のお仕事でお昼ご飯を食べ逃したらしい。

しかも、ネリーが仕切っているお肉屋さんも忙しかったらしく、まだご飯の用意が出来ていないと。

だから、直ぐに出来る肉を焼いた物だけでも、お腹に入れておくかどうか聞いてるらしい。


んー。

お肉だけってのも味気ないだろうし、ネリーの様子から言って、この世界の食事は直ぐには用意できないんじゃないだろうか?

だったら、一緒に軽食を食べてしまうのも有りだな。

丁度、机と椅子も用意してあるし。

という事で、


「じゃあ、夕飯にはまだ早いし、軽食でも一緒にどうかな?私、炊いた穀物にお肉を巻いて味付けした物を持ってるから。どうかな?勿論、時間が大丈夫ならトリアも一緒に食べて行って。」

と、提案してみる。

すると、


「食う!!」

と、即答のエンガ。


「オレも良いのか??良いなら、食う。」

と言うトリア。


「ん~、お言葉に甘えても良いかな?思ってるよりもお腹空いてるみたいで、お腹の音が止まらなくて・・・。」

と、恥ずかしそうに返事をするコーザ。


「良いのかい?だったら、私もいただこうかね!正直、ヤエの料理の腕が気になってたんだよ!!楽しみ!!」

と、ハードルを上げていくネリー。


いやいや、今朝作ったとはいえ、流石に冷えてますからね。

そこまでの質は期待しないでほしい。

と念押ししてから、ネリーの持ってきてくれたお皿にレタスを引いて、今朝作った《肉巻きおにぎり》を並べていく。

肉巻きおにぎりをレタスで包んで食べれば手も汚れないし、些細ではあるが野菜も取れるから良いでしょう。

にしても、ネリーもコーザも初めて見る《肉巻きおにぎり》に戸惑いの表情。

逆に、エンガとトリアは既に私の作る食事を口にした後なので、期待でソワソワ。

【まだか、まだか】

と、目で訴えてくる。


「お茶も入ったし、食べていいよ~。」

言うと同時に、両手に肉巻きおにぎりを掴んだエンガとトリア。


私は そんなにお腹が空いていないので、お茶だけいただく。

ネリーの持ってきたお茶の葉も水も特に変な匂いも無いので、この世界は食べ物だけが変なのだろう。

お茶や一部の調味料はまともなのに、なんで変なスパイスやら食品の管理は出来ないのだろうか・・・。

謎である。

そう考えていると


「ヤエ、申し訳ないんだけど、コレ、中身は何の穀物なんだい?凄く良い匂いだけど、味付けは?」

と、ネリーが尋ねてきた。


ああ、多分、お米を食べる文化が根付いていないのと、この世界の食事ではありえない匂いなのが気になるのだろう。

説明しないとネリーもコーザも食いっぱぐれそうなので、簡単に炊いたお米の事と、オークの肉を巻いたこと、味付けについて教えてあげた。

すると、ネリーとコーザは【なるほど。なるほど。】と感心しながら《肉巻きおにぎり》を口へ運んだ。


反応はどうだろうか?

正直、この世界の食事の事を考えると、美味しい物に分類されると思うのだが・・・。

エンガとトリアも美味しそうに食べてるし、大丈夫だとは思うが、獣人と人間の味覚の違いがあるかもしれないので、反応が気になる。

2人の様子を息を殺しながら見ていた私だったが


「ちょっと!美味しいじゃないか!コレ、凄く美味しいよ!ヤエ!」

と、喜んでくれたネリー。


「もふ!ほいひーよ!!モグモグゴックン。いやあ、エンガが褒めるから期待してたんだけど、それ以上だね~!美味しいよ、本当に!」

と、ニコニコと頬張るコーザ。

それに対して


「だろ!?ヤエの作る飯はなんでも美味いんだぜ!!」

と、自慢を始めたエンガ。

そして、モグモグと食べ続けるトリア。

あれ?

トリアさん、お腹空いてたの?

お昼もめっちゃ食べてたよね?

ってか、お昼からそんなに時間経ってないよね?

もしかして食い溜めですか?

お口いっぱい、頬袋みたいになってるけど、大丈夫?


そんな もぐもぐトリアを始め、ネリーもコーザも沢山食べた。

皆の満足そうな顔が嬉しい。

でもね、エンガは最初に両手に取った2個しか食べてないのよ。

皆に勧めて、


「腹はいっぱいになったか?美味かっただろ?ヤエの飯は美味いからな!」

と、ご満悦のエンガ。

お腹が空いてる皆に食べさせる為に自分はそんなに食べてないのに、嬉しそうで。

本当に愛しいよ。

熱くなってきた目頭を押さえながら、可愛いエンガの頭を撫でてあげる。

エンガは何で撫でられてるのかは分かっていない様子だったけど、私が撫でやすいようにと、頭をこちらに下げてきた。

ウチのオッサン、マジ天使。


『ヤエ、顔。』

おっと。

どうやら3人から注意されるほどデロンデロンな顔をしていたようです。

エンガに見られる前に元の表情に戻した私の表情筋、素晴らしい。


うん。

大丈夫。

優しくて素敵なエンガには、後で温かいのを食べさせてあげるからね。

楽しみにしててね。

そう考えつつ、皆と一緒にお茶で一息ついていると、真剣な表情のネリーからとあるお願いをされた。


「ヤエ、もし、もしね、この《肉巻きおにぎり》を自分で販売する気が無いのであれば、このレシピを私に売ってくれないかい?勿論、ヤエがこのレシピを私に譲ってやっても良いと思えればの話なんだけど、良ければ、考えてみてくれないかい?」

と、先ほどのジャムの件よりも真剣な表情でお願いしてくるネリー。


うーん。

レシピの販売か。

考えたことも無かったから、少し考えてみよう。

まず、この《肉巻きおにぎり》を私の店で販売するかどうか。

私的には【否】だ。

ご飯は時短魔法で炊けるし、お肉も自分たちで狩れるし、問題ないように思うけど

まず、おにぎりを握るのが面倒。

そして、肉を均一に巻くのが面倒。

それを均一に焼くのも面倒。

全体に絡ませながらタレを煮詰めるのも面倒。

というか、私は正直、赤の他人の為に《おにぎり》を作る行為が嫌いだったりする。

なので、

【こんな面倒なもん、エンガの為でもなきゃ作らんわ。】

が私の感想である。

よって、私のお店での販売は却下。

かといって、レシピの販売はいくらの値段になるのか。

正規の値段が全く分からない。

レシピを売って、販売が上手くいかなくて大赤字になったなんて言われても気まずいし、

逆に大儲けで、ネリー達がこちらに気を遣うなんてなっても気まずいよね。

どーすべ。


そう私が悩んでいる間、エンガは大人しく、私の隣でお茶を啜っていた。

多分、私が聞いたりしない限り、この話は私とネリーで決める話だと思っているんだろう。

2人のお店で売る物だとしても、実際に作るのもレシピも私の物。

相談されたり、一緒に考えてと言われれば考えるけど、それ以外は自分が口を出すべきじゃないと考えているんだと思う。

こういう所、大人だよなぁ。

そうぼんやりと考えていると


「無理ならいいんだよ!そんなに悩まないでおくれ!売れると思ったし、ウチは肉屋だから提供も簡単だし、ヤエが販売しないなら、どうかと持ち掛けてみただけなんだから。そんなに悩まないでおくれ!変な事いってごめんよ!」

と、私が考える時間が長かったからか、ネリーは笑い飛ばした。


「うーんとさ、レシピを買い取るって良くある事なの?値段とか、そういうのは私、一切分からないんだけど、詳しく教えてくれる?」

兎に角、話を聞いてみないと何とも言えないんだけど、ネリーになら任せても良いんじゃないかと思ってる自分がいる。


「そうだねぇ。私もレシピの買取なんてしたことないし、早々無い事だとは思うよ。だから、お互いの納得のいく値段での取引をすべきだと思う。私としてはね、販売してみて、売れ行きを見てからレシピ自体の値段を決めるか、《肉巻きおにぎり》だけの毎月の利益から一定の割合をヤエに納めるのが良いと思うんだけどね。その辺はヤエも納得してくれる方法を考えたいと思うんだけど、どうだい?考えてみてくれないかい?あ、制約なんかがあれば言っておくれ。勿論、無理なら無理で全然構わないからね。」

と、提案してくれた。


なるほど。

そういう考えもあるのね。

【毎月の売り上げから一定の割合を納める】

というのは、中々良い提案ではないだろうか?

自分では作らずに、販売もせずに、少しのお小遣い稼ぎになる。

うん、魅力的。

でも、何個か条件を付けさせてほしい。

それが可能ならそれでOKだ。


「条件付きでも大丈夫なら良いよ。私は毎月の利益から一定の割合の方が助かるかな。売れない時は無しで良いし、売れたならそれに沿ってお願い。で、条件なんだけど。まず、このレシピを他人には教えない事。それと、私がレシピの生みの親だってことは内緒にすること。それから、私が個人的に作ってエンガと私が食べる事は認める事。勿論、私は販売はしないし、エンガと私以外が食べる事は無いって約束する。」


これくらいかな。

まず、何よりも、この《肉巻きおにぎり》をエンガが食べれないのは困る。

なので、私とエンガの分を私が作る事は許可してもらわないと。

ついでに、私がレシピの元になっている事も内緒にしてほしい。

まあ、最初に提案したレシピを他人に教えるかどうかは、他のお店に真似されると困るのはネリー達だろうし無いとは思うけども。

そういう考えて提案したのだが、ネリーは即答だった。


「よっしゃ!!その条件で良いんだね?じゃあ、契約書を書くから、レシピを教えてちょうだい!!今週中には店に置けるようにしてみせる!!」

と、意気込んでいるネリー。


その後、金銭関係の内容や条件について契約書にしてお互いにサインした。

そして、レシピを書いて渡す。

鍋でのご飯の炊き方を中心に、様々な事に気をつけてあげながら。

ネリーの家には炊飯器は無いから、鍋で炊いてもらわないとね。

勿論、新鮮なお肉を使う事は何度も伝えておいた。

すると、ネリーは


「秘訣は新鮮な肉だね??それなら!!トリア!!あんたの出番だよ!!オークならあんたの腕なら狩り放題だろう!?次の狩りではオークを中心に狩ってきておくれ!!もし、この商売が軌道に乗ったら、専属で指名させてもらうからね!!頑張っておくれよ!!」

と、トリアへネリーからの激励が飛ぶ。

トリアは、まさか自分へ話が振られると思っていなかったらしく、一瞬、ビクッと身体を縮めた後、


「え?オレ?」

と、キョロキョロ。


「当然だろう!!私達が一番信用してる冒険者はあんたなんだからね!魔法も使えて、強くて、引き際もちゃんと判断できる冒険者なんて早々いないよ!」

と、ネリーが言うと


「お、おう、そうか?・・・ま、まー、しゃーねーなー!そこまでネリーが頼むなら!オレが狩って来てやんよ!!」

と、困惑していた様子から一変、ドヤ顔に変化したトリア。


おおー。

まさかの展開。

一つのレシピから新たな雇用が生まれようとしています。

トリアの安定した収入源が増えるなら、嬉しいです。

が、くれぐれも無理はしないように。

そう思っていると


「トリア、狩りを頑張んのは良いけどな、無理だけはすんなよ?俺、トリアが怪我すんのは嫌だからな?」

と、エンガがその場にいた皆の代わりに言ってくれた。

すると、トリアはハッとした様な表情で


「わーってる。流石にコレで浮かれて怪我したらダセーもんな。大丈夫だ。気をつける。」

そう頷いてくれたトリアに皆、安堵の表情だ。

やっぱり最年少の、頑張り過ぎそうな少年に、みんな心配していたらしい。

トリアの【かーちゃんもそう言いそうだしな】なんて一言は聞かなかった事にしよう。


そんなこんなで様々なお話を終えて、今日はその場で解散。

トリアは途中まで一緒に。

護衛やお買い物のお礼を言って、また今度、お店に来てもらえるようにお願いして、お別れ。


そして、お家への道をエンガと2人で歩く。

勿論、手を繋いで。

大理石はエンガが片手で持ってくれてる。

その筋肉がどうなってるのか、本当に謎です。

逞しくてカッコいいけどね。

エンガは道中、コーザに教えてもらった事を披露。

テンション高く、

【こうだった!ここが思ってたのと違った!俺、ちゃんと覚えたからな!】

と嬉しそうに報告してくれるのが本当に可愛い。

【トリアとの狩りも楽しかった!また皆で遊ぼうな!】

と、トリアとの狩りは遊びの範囲に入ってるらしい。

興奮しすぎて、今日は中々眠れないんじゃないかな?

そう心配になるくらいご機嫌です。




はーい。

お家に到着。

ああ、落ち着く。

やっぱり違うよね。

お家では気を抜ける。

エンガも大理石をキッチンの机の上に置いて、

【ん~】

と身体を上に伸ばしている。


「運んでくれてありがとうね、エンガ。」


「おう!そんなに重くねぇし、こんぐれぇ全然かまわねぇよ!でもよ、これって何に使うんだ?」

と、爽やかな笑顔を披露した後に首を傾げるエンガ。

うん、可愛い!


「これは大理石。この上でパン生地を捏ねたり、お菓子作りをしたりするの。エンガのお店《もふもふ雲》で出すお菓子なんかをね、エンガと一緒に作るための机なんだよ。」

と、購入した理由を教えると


「一緒に?一緒に作るのか?そうか!こんだけ大きけりゃ、俺も一緒に並んで作れるもんな!楽しみだな!」

と、大理石を嬉しそうに撫でるエンガ。

お菓子作りをするのかとウキウキしている所、申し訳ないんだけど


「お菓子作りは明日の朝にして、今日は魔具の方を先に作ってみようか。」


作りたい魔具があるので、それを優先したい。

勿論、エンガとのお菓子作りも大事だけれども。

今日はエンガは沢山働いているし、一度に沢山の情報を頭に入れるとショートしそうで心配なんです。

なので、そう言ったんですが・・・。


「ん。明日。」

と、少し寂し気な横顔のエンガ。


それは反則だよ!!

そんな顔されたら反対できない!!

しかも、まだ大理石をなでなでしてるし!!

触り心地が良いんだろうけども!!

ウキウキしちゃった分、お預けで悲しいのね!?

よーし分かった!!

エンガがまだ元気でやる気に溢れてるんなら、私も反対しないよ!!


「んーと、エンガ?簡単なクッキーで良ければ、今から作る?この板の上で生地を伸ばしたり型抜きとかするけど。やる?その代わり、時間かかっちゃうし、夕飯は簡単な物になっちゃうからね?それでも良けれ・・・」


「やる!ヤエと2人で《くっきい》作る!!飯は何でも良い!!ヤエが作るのはなんでも美味ぇからな!!あ、何だったら鞄の中に入れてるパンでも良いぞ!!だから、作る!!」


はい、決定でーす。

食い気味で来ましたね。

やっぱり作りたかったのね。

じゃあ、御夕飯は簡単な物にさせてもらう事にして、クッキーを作りますか。

あ、その前に


「エンガ、肉巻きおにぎり食べる?温かいのがあるから、食べるなら出すよ?さっきは2個しか食べれてなかったでしょ?クッキーの前に食べて軽く腹ごしらえする?」

さっきの事を思い出して、忘れないうちに食べさせてあげようと思って声をかけると


「食う!!良いのか!?あったけぇの!!食いてぇ!!」

と、目をキラキラと輝かせながら、両手をグーに握りしめ、尻尾をピーンと伸ばすエンガ。


そんなエンガを座らせて、お茶を入れてあげて、温かい肉巻きおにぎりを2個出してあげる。

あまり食べさせると御夕飯が食べれなくなるから2個だけね。

すると、嬉しそうに肉巻きおにぎりを持ち上げ、小さく一口。

【はふはふ、もきゅもきゅ】

と食すエンガ。

どうやら少し熱かったらしい。

ハフハフ言ってるの凄く可愛い。

癒される。

嬉しそうに食べているエンガが可愛くて、食べる姿を眺めつつ、

ソファの横のテーブルの上にあったエンガの鞄に、残りの肉巻きおにぎりを入れていたら、突然、エンガがこちらを凝視し始めた。

そして、何かを考えた後、空いている方の手で私の腰を引き、自分のすぐ隣に座らせた。

私は何が起きたのか、理解できなくて脳内パニック状態。

にも関わらず、エンガは幸せそうに

【ふん~♪】

と鼻を1つ鳴らして、ゴロゴロと喉を鳴らし始めた。

いつもとは違って、ちまちまと少しづつおにぎりを食べながら、ゴロゴロ。

ついには、どうして良いか分からなくて硬直している私の頭に、エンガの頬っぺたがスリスリ。

手は腰にまわったままである。

エンガは嬉しそうにゴロゴロ。


何コレ?

なんなの、この幸せは。

どうなってるの?

分からない。

良く分からないよ、エンガさん。

でも、これだけは言っておこう。

わたくし、ヤエは今、すごく幸せです!!

んでもって、自分の体温が上昇しすぎてクソ熱いです!!

大丈夫かな?

全身の血管、切れてないかな?

汗臭くないかな?

大丈夫かな?

心配になってきた。

あ、エンガさん、モグモグしながら、ゴロゴロしながら、

私の横腹で手をフミフミするの止めてもらって良いですか?

物凄く、くすぐったいです。

まあ、この幸せを逃す気は無いので、口が裂けても言いませんけどね!!

今の私は、置物よ!!

喋らず、動かず、ただただ、傍にいる置物よ!!

くすぐったくて笑いそうでも我慢よ!!

頑張れ私!!


そうして幸せを噛み締め、笑いを堪える事、数分。

エンガの食事が終わると同時に、私は解放された。

【ごちそうさま。美味かった!】

と、満足そうにお茶を飲むエンガは、何事も無かったかの様で、何も言えず。

何も聞けず。

取りあえず、クッキーの製作を開始することになった。


あれはいったい何だったんだろう?

今日はいっぱい頑張ったからって、私へのご褒美だったの?

だとしたら・・・。

最高のご褒美、ありがとうございます!!

これで明日も頑張れます!!



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