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素材屋へGO!

エンガとトリアと共に

歩いてたどり着いたのはコーザとネリーのいるお肉屋さん。

ネリーはお店に出ているようなので、直接コーザがいるであろう店の裏に回る。

すると、そこには木箱に座ってぼんやりと日向ぼっこをしているコーザがいた。

私たちの存在に気付いた瞬間、手を振りながら


「いらっしゃ~い。おやおやおや?3人とも仲良くなったみたいだね。うんうん。いいね。友達が仲良くなってくれるのは凄く嬉しいな~。」

と、相変わらずゆる~い感じのコーザ。


そんなコーザに挨拶した後、狩ってきた魔獣の解体をお願いする。

今回はトリアの分も含めて量も種類も豊富だから、時間と手間がかかるのは申し訳ないけど、よろしくお願いします。

そうお願いしていると、エンガが


「コーザ!オークの解体は、この前見せてもらったから俺が家で解体してみる!だからよ、他のもん解体して見せてくれ!俺、覚えるから!頼む!」

と、以前と同じ様に自分で解体出来る様になりたいと、作業を見せてくれるようにお願いし始めた。


成程。

オークの解体は見たからね。

今日は種類も豊富だから、そちらを覚える事を優先したいと。

流石、頑張り屋さんのエンガ!!

その意欲に溢れる姿、カッコイイ!!

頑張ってね!

私は全力で応援するよ!!

にしても、解体をウチでやるなら解体場所を作らなきゃいけないかも。

流石に家の中では出来ないし。

家と作物から少し離した場所に、小屋を建てて、匂いを消す魔法を建物自体にかけて。

うん。良いかもしれない。

エンガがやる気を出してくれてるんだし、保管庫みたいなのでも良いから、エンガの好きなように小屋を建ててみよう。

そう頭の中で考えていると、トリアにも何か話しかけていたエンガが


「ヤエ!俺、コーザに解体を教わってるからよ、その間に他の用事を済ませたらいいんじゃねぇか?俺、ちゃんと待ってるから!頑張って覚えるし、ちゃんと待ってるから!ヤエと離れてる時間も慣れなきゃいけねぇんだろ?トリアがヤエの買い物に付き合ってくれるって言ってるからよ!鉄くずとか魔石とか買うんだろ?行ってこいよ!!」

と、自分が解体をしている間に、トリアに付き添ってもらって買い物に行って来いと言った。



コレが成長かな・・・。

やる気にあふれてて、自分の知識を増やそうとしてる姿は男らしくてカッコイイし、凄いし、嬉しいし、応援したいけど、少し寂しい。

寂しそうにするエンガも可愛かったし、あの姿が見れなくなると思うと少し残念。

しかも、友達とはいえ、男の子と2人で買い物に行っておいでって、好きな人に言われるのって・・・。

少し切ない・・・。

そう思って落ち込んでいると、


「待ってるからな!絶対にここに帰って来るんだぞ!!ヤエ!」

と、グッと堪える様な表情のエンガ。


うん。

その表情、エンガもかなり我慢してるんだね。

私が思っているよりも、エンガも寂しいらしい。

私も寂しいけど、時間も遅くなってきたし、解体を待っているよりも買い物に行っちゃった方が良い。

じゃないと、トリアからお店の場所を聞いて明日行かないといけなくなる。

それは面倒だし、トリアから紹介してもらった方が良いに決まってる。

よし、そうと決まれば、とっとと行ってとっとと帰って来よう。

エンガが待っててくれるんだから、出来るだけ急いで行こう!!


「分かった!じゃあ、私は買い物に行ってくるね!急いで帰ってくるから!!エンガも頑張ってね!!コーザ、エンガをお願いします!トリア、付き添いお願いします!」

と、エンガに返事をしてコーザにエンガの事を、トリアには付き添いをお願いする。

するとエンガも


「トリア!!ヤエを頼むぞ!!寄り道はしねぇようにな!んで、怪我もしないように注意してくれ!押し売りにも気をつけてな!後は・・・。ほ、他の男がヤエに近寄らねぇように、、、頼む。」

と、私を連れて歩くについて、トリアに色々とお願いしているエンガ。

しかも、最後の方はモゴモゴと小声で、何を言ってるのか聞こえない。

対してトリアはエンガの言葉に


「おー。わーってる。大丈ー夫だ。んー?・・・任せとけ。ちゃんと護るから。」

と、こちらも後半はモゴモゴと、何を言ってるか聞こえないけど、若干適当に返事してるトリア。


その後も、必死にトリアに【躓かないように足元には注意しろよ?】とか【危険を感じたら走って逃げろよ?ヤエも連れてな。】と話してるエンガと、

気にかけてもらえるのが嬉しいのか、適当な返事をしながらも、

ニヨニヨと、ちゃんと一つ一つ頷いて聞いてるトリアの組み合わせがとても可愛いです。

最終的に【お金は持ったか?】とかまでトリアに言い出したよ、エンガさん。

お買い物に行くのは私だよー。

買う物があるのは私だよー。

お財布の心配をされるべきなのは私の方じゃない?

トリアは、わざわざ自分の財布を出して見せて【だいじょーぶ。持ってる。】とか返事してるし。

寂しいよー。

もう少し私の心配もしてー、エンガさーん。



そんなエンガとトリアのやり取りが終わり、出発。

エンガは耳を少しヘタらせつつ、


「気をつけてな。」

と、私の頭を優しく撫でて送り出してくれた。


そして、素材屋へ向かう途中、ニヤニヤが治まったらしいトリアが


「エンガって心配性だよな。こんな街中で、んなに危険な事はねーだろー?しかも、オレの事まで心配するなんてな。正直、エンガよりオレの方がこの街の事は詳しいんだぜ?しかも財布の確認って・・・。お前はオレのかーちゃんか!!って思ったぜ!懐かしい!」

と、軽快に笑うトリア。


確かに、先ほどのエンガは子供のおつかいを心配する母親のようだった・・・。

あ!分かった!!

私よりもトリアの心配してるから少し落ち込んだけど、そうか。

エンガは私の買い物風景を自分の目で見てるから、買い物に関してはある程度、安心してるんだろう。

逆に、トリアの買い物風景はまだ見たことがないので、エンガ自身が知らない場所に、弟の様なトリアが行く事が心配だったのかもしれない。

だから、あんなに心配していたのかも。

そう考えると納得だ。

にしても《父親》じゃなくて《かーちゃん》なのが少し笑えるよ。


「確かに。息子を心配する母親みたいだったかも。まあ、そこがエンガらしくて可愛いんだけどね。」

私もトリアにつられて笑う。


「だよな。かーちゃんみてーで笑えんだけど、すんげー心配してくれてんのが分かってさ、照れるっつーか、むず痒い感じでさ。なんか、エンガが皆に好かれんのが分かるよな。何事にも一生懸命、気持ちを伝えることに全力って感じでよ。真正面から向かってくるから、俺もちゃんと向き合わなきゃって思う。」

と、嬉しそうに柔らかく笑うトリア。


うんうん。

何事にも一生懸命で、自分の気持ちを一生懸命伝えてくるエンガは凄く可愛いのよ。

トリアがエンガの内面を見てくれて嬉しい。

そう言おうと思った次の瞬間・・・。


「えっ!?嘘!?あの女の子、いつものフルフェイスじゃなくて鳥の若いの連れてるわよ!!何??心変わり!?浮気!?あんなにベタ惚れな雰囲気だったのに!!」


「ヤダっ!!本当だ!!もしかして あの子って、あのフルフェイスの獣人が好きだったんじゃなくて《獣人》が好きだって事??」


「ベタ惚れだと思ったのにねぇー。《獣人》なら何でも良いみたいねぇー。」


っておいいいいいいいいいい!!!!!!

そこの井戸端会議中のご婦人方!

何を言ってくれちゃってんの!?

待て待て待て待て待て!

ちょっと待て。

かなり待て。

違う、それは違う。

エンガは特別!!

エンガは私のマイダーリン!!

トリアはお友達!!

貴方達の声が大きいから、周囲の人達も不思議そうにしちゃってるじゃない!

こっち見て【浮気?】【誰でも良いの?】【騙された!】

って何よ!?

浮気じゃないし!

エンガだけだし!

騙してないよ!!

私が愛しているのも、手を繋いで歩くのも、一緒に生きていくのもエンガですぅぅぅ!!!

こんな不名誉な噂は抹消せねば!!


「ト、トリア!友達とはいえ、わざわざお店まで案内してもらっちゃってごめんね?すぐに買い物を終えてエンガの所に帰ろうね!!」

私はトリアに目で合図した。

分かってくれ。

これは大問題なのだ。

私が浮気なんぞするわけがない。

もし私が【《獣人》なら誰でも良い尻軽女】だなんて噂が流れてみろ!

エンガが悲しむ!

いや、泣いてしまうかもしれない!

そんなのは許されることじゃない!!

頼む!話に乗ってくれ!!

トリア!!


そんな私の必死な思いが通じたのか、トリアは頷いた。


「別に構わねーよ。エンガに頼まれてるし。ダチが大切にしてる女だしな。店はあっちだ。早く買って帰ろうぜ。あんまり遅くなるとエンガが拗ねそうだしな。腹減ったし。」

と、少し大きな声で会話してくれるトリア。


素晴らしいよトリア!

エンガが頼んでくれた=エンガ公認のお買い物!!

エンガが大切にしてる女=私!!

エンガが待ってるから急ごう=私たちは二人ともエンガが大切!!

の完璧なる図式!!

凄いよトリア!!

ありがとうトリア!!

私はトリアの言葉に全力で頷く!

すると、


「あら、な~んだ。あのフルフェイスの獣人の友達が案内してるらしいわ。」


「浮気じゃなかったのね。そうよね。あんなにベタベタ、惚れてますー!を全力でアピールしてて、今更、他の男に目が向く訳ないわよねぇ。」


「そういえば、今朝も手を繋いで歩いていたものね。新しい話題が出来たと思ったのに残念だわぁ。」


と、井戸端会議を続けるご婦人方。

だからさ、声がでかいよ?

まあ、周囲の人達もその声で【浮気は勘違いだった】と納得してくれたみたいだけど。

自分たちが楽しいからって、勝手に噂話にしないでほしい。

でも、ここで下手に話しかければ、必死過ぎて逆に怪しいとか言われるかもだし。

悪意のある噂とか作られそうだし。

今は取りあえず、訂正出来ただけ良しとしましょう。


「おい。早く行くぞ。エンガ待ってんだからな。急がねーと。」

と、トリアからの言葉に再び歩き出す私達。


「うん。訂正してくれてありがとう。あのままじゃ私は浮気女の汚名を被るところだった。助かったよ。トリアには優しくしてもらってばかりだねぇ。今度お礼させてね。」


「別に!ダチを助けんのは普通だろ!い、いいから行くぞ!!こっちだ!」

と、照れたらしく少し早歩きのトリアの後を付いて歩くこと数分。




到~着!


ん?とうちゃく?

本当に?

ここで良いの?

建物の中が物でごっちゃごっちゃしてる所なんですが。

棚の前に物が重ねてあるって何なの?

入って大丈夫?


「ちゃーっす!オッチャン!生きてっかー?」

トリアはそのまま店内へ。


私もそれに続いて店内へ。

すると、店の奥から煤だらけのオッサンが出てきた。


「いってててて。あ~、なんだよ、トリ坊じゃねぇか。久しぶりだな~。どした?」

と、にこやかな雰囲気でトリアに話しかけるオッサン。

が、私の存在に気付いた瞬間


「お、おお!?なんだ!?新しい女が出来たのか?」

と、驚愕の表情で私とトリアの顔を交互に見るオッサン。


「違う!」

「違います!」

私とトリアの声が揃った。


「適当な事言ってんじゃねーよ。オッチャン。こいつはオレのダチ。ついでに言うと、こいつの旦那もオレのダチ。」

と、私を見てニヤニヤしながら答えるトリア。


うおお!

マジか!!

マジですかトリアさん!

エンガの事を私の旦那だなんて!!

照れちゃうよ!!

照れちゃう!!

だが、要望通りに答えよう!!


「そうなんです!!私、トリアの友人のヤエと申します!エンガは私の旦那と言いますか、まだなんですけど、ふふふっ、今後、旦那になるであろう~」


「ヤエ、いいから。んなに詳しい説明いらねーから。揶揄うつもりだったのに【ふふふっ】って・・・。デロッデロな顔してんぞ。」

と、呆れ顔で言うトリア。


え!?

揶揄うつもりだったの!?

でも残念でした~!!

逆に惚気てやったぜ!!

本当に旦那さんになってもらうために、私頑張るから!

応援してね!!

みたいな顔をしてやったら、トリアから長い溜息を1ついただきました。

そして、


「うっへへっ!!面白れー嬢ちゃんだな~!オッチャンはこの店の主のカザルだ。嬢ちゃんの未来の旦那さんも含め、宜しくな~。まあ、見た目は悪いが多種多様なもんが揃ってる素材屋だ。ご贔屓に~! にしても、トリ坊がダチを連れてくる日が来るとはな~。あの《不機嫌》なトリ坊がな~。」

と、トリアの方を楽しそうに見る、特徴的な笑い方のオッサン、改めカザルさん。

そんなカザルさんの言葉に、トリアの眉間に皺が寄った。


「うるせーよ!不機嫌な顔なのは生まれつきだ!っつーか当たり前だろ。オッチャンに会うのに愛想振りまいてられっかよ。オレはもうそんな歳じゃねーからな。」

と、ツンツンとした態度のトリア。

不機嫌そうな雰囲気は出してるけど、そこそこ仲が良いからこその軽口のようだ。

言葉に棘がないのは私にでも分かる。


「うっへへっ!確かにな~!こんな薄汚れたオッチャンに会うのにニコニコしてたんじゃ、気味悪いわな!!そういや、お前ももう一人前の男だしな~。ヘラヘラしてらんねぇよな~。」

と、笑うカザルさん。


「って!オレの話はどーでも良いんだよ!こいつ!今日はヤエの買い物の為に来たんだよ!」

と、私に話を振るトリア。


ああ、そうだった。

カザルさんの特徴的な笑い方と、店の中に積み上げられた品々に気を取られてたよ。

エンガが待ってるから急がないと。

え~っと、魔具を造るとして、鉄くず、木、魔石辺りを買えばいいのかな?

あ、木はウチで育ててるやつを伐採して使おう。

後は取りあえず聞いてみよう。


「えっと、鉄くずと魔石が欲しいのですが、どのような品がありますかね?」


「ん~とな、どんなもんが欲しいのか、いくら位の物を買いたいのか希望を聞きたいんだが・・・。その顔からして分かってなそうだな~。用途は?」


そりゃそうだ。

こんなに品物があるんだもの。

選ぶのも大変でしょう。

が、魔具を造りたいなんて言って良いものでしょうか?

もっと市場を調査してから来ればよかった!!

と後悔してもしょうがない!

取りあえず試作品を作ってみないとだから、今回はお試しって事で

なんとか濁して伝えてみよう。


「細工物とかしてみたくてですね・・・。えっと、鉄くずは身体に害のない物質で、錆びていないもので、ある程度の高温に耐えられるもの。売り物にならないような小さい物でも数が多ければ大丈夫です。あとは、魔石は・・・。売れ筋は?」

もう、他に何を言えばいいのか分からなかった。


「なるほどな~。細工っつーとアクセサリーや食器の装飾なんかにも使うのか?なら、口に入れても良い素材だな。確かこの辺に・・・おお、あったあった。おらよっと、この辺の素材ならフォークやナイフの修理なんかにも使われるから熱にも強い。細かいのが多くて採取量に対して使う奴が少ないから安いぞ~。細かくて良いならコレが一番だな。魔石はな~、武器に埋め込むなら武器との相性もあるし、魔法を使う奴らが自分で作った魔具の為に大量買いしたりするけどな~。基本はベアー以上ので、ウルフなんかのは小さくて駄目だ。売れねーから買取もしてね~よ~。」

と、身体を様々な方向に捻らせて物を取り、魔石も何種類か見せてくれた。


ふむふむ。

素材の方は綺麗だし、普通の鉄くずみたい。

細かいもので大丈夫だから安いしこれに決定。

で、魔石の方はどうしようかなー。

自分でもオークのなんかは持ってるし、ウルフやゴブリンのも試してみたいから、取りあえず保留かな。


「魔石は保留で、此方の鉄くずください。そこの箱いっぱいに詰めるくらいでお願いします。」

と、近くにあった大き目の箱を指した。

すると、カザルさんは


「ほいほ~い。んで?嬢ちゃんは買い物で、トリ坊は?今日は魔石は無しか?」

と、大き目の天秤で重さをはかり、空箱に鉄くずを詰めつつトリアに問う。


「あ!忘れてた!!オレもこの前の魔石売りたかったんだ!オークとベアー、今の買取金額はどうだ?安いんならまだ持っておく。」

と、自分の鞄の中から魔石を取り出すトリア。


「最近は安定してて平均的な値段だな。うんしょっと。ギルドならもう少し高いだろうが、トリ坊は買い叩かれんだろ?ウチでこのまま売った方が良いんじゃね~か?売るんなら傷なんかも見るから出しといてくれ~。どっこいしょ。」

と、鉄くずを天秤から箱へと何度も移動させながら答えるカザル。


「売る。ここ置いとくぞ。少し店の中のぞいても良いか?ヤエが欲しい物が他にもあるかもしんねーし。」

と、カザルの言うとおりにカウンターに魔石を置き、お店の中を見せてもらう許可を取ったトリア。


お店の中を見てみると、本当に沢山のであふれかえっていた。

下手に触れれば、バランスを崩して雪崩が起きそうなところとか、通るのが怖いくらい。

で、そんな中で発見しました!

コレ!!


「カザルさ~ん!!コレ、ここにあるやつ、大理石ですか!?綺麗ですか!?お値段は!?」


もう、かなりテンションが上がった。

コレが大理石なら購入決定!!

大理石のテーブルでお菓子作りとかパン生地を成型するのとかやりたかったの!

今は小さいまな板の上で、ちまちまと面倒だから!

それに、こんなに大きな大理石なら、エンガと二人並んでキャッキャウフフなお菓子作りが出来ちゃうよ!!

エンガと並んでのお菓子作りの為なら、多少高くても買いますよ!!

そんな私のテンションに少し引いた様子のトリア。

対してカザルさんは流石、客商売。


「あいよ~。ああ、大当たり。大理石だな~。綺麗だけど、使う前に表面は研磨した方が良いかもな~。値段は高いが品質は良い物だから何十年と使える、お買い得商品。買ってくんならトリ坊に持ってもらえよ~。重いからな。」

と、近づいてきて値段を教えてくれるカザルさん。


買いです!

確かにさっきの鉄くずと比べると高いけど、元の世界みたいな高さじゃないし、全然安い方だと思う!

この値段でエンガとラブラブお菓子作りが出来るなら安い物よ!!


「買います!トリア、申し訳ないんだけど、コーザの店まで運んでもらっても良いかな?」

勿論、自分で持つことも出来なくはないけど、自分で持てば、確実に正面は見えない。

その状態で歩くのは危険だし、怖い。

チビなのが悔やまれる!!


「おー。別に良いぜ。ヤエじゃ転びそうだしな。オレはエンガほどじゃねぇけど、力持ちだからな。任せとけ。運んでやるよ。」

と、大理石の板を引っ張り出してくれた。


「はいよ~、釣銭。んで、大理石はウチで研磨してくか?一応、オッチャンは研磨も出来るぞ。奥に作業場あるからな。ただ、手間賃で小銀貨2枚もらうのと、20分くらいかかるからな~。その間は店番してくれ~。」

と、カザルさんは有能さんらしい。


今から研磨してくれるところを探すのも面倒だし、標準の値段が分からないけど、やってもらった方が良いと思うので、お願いする事に決めた。


「じゃあ、これでお願いします。人が来たらお知らせすればいいですか?」

と、お金を渡しながら聞いてみる。


「はいよ~。んだね。人が来たらオッチャンを呼んで。まあ、この時間だとまだ客は来ないと思うけどな~。ああ、強盗には気をつけて。トリ坊、目を離さないようにな。」

と、トリアに一言告げてから奥に引っ込んだカザルさん。


「ま、オッチャンの言ってた通り、この時間帯はまだ人が来ねーから、ゆっくり座ってよーぜ。」

と、狭いカウンターに2人で座る事に。

肩が触れる位置だが、私は平常心。

うむ。

私はエンガ一筋だからね。

他の男と近づいたくらいでドキドキしたりしないのよ!

コレがエンガだったら、心臓が破裂するくらいになっちゃうんだけどね~。

というか、何しててもエンガの事を考えてしまう。

恋ってすごいな~。

と、ほわほわとエンガの事を考えていると


「ヤエ、オッチャンはそこそこ良い奴だけど、あんまし信用はすんなよ?オッチャンは商売人だからな。色々とシビアな部分も多いし、笑顔で嘘つける人間だからな。」

と、トリアから忠告をいただいた。


確かに、そんな感じするよね。

悪徳ではないけれど、商人魂はあるよ的な。

話し方も軽い感じだけど、目がね。

こっちを良く見てるような眼をしてる。

何を欲しがっているのか。何が高く売れそうか。

常に人間を観察しながら、作業してる感じ。

同じお店を経営する者としては見習うべきなのかもしれないけど・・・。

まあ、仲良くなった他の人達とは違って、適度な距離でお付き合いさせていただく事にしよう。


「うん。何となく分かる。商売人な感じだよね。気をつける。こういう情報を貰えるの本当に助かるよ。心配してくれてありがとうね、トリア。」

私達はまだ人との関わり合いが少ないから、人を見る目を養うまでに時間がかかる。

だから、こういう風に些細な事でも教えてもらえると助かる。

そいう気持ちを込めてお礼を言うと


「べ、別に心配なんてしてねーよ!ただ、お前らはあんまし人を疑わないんじゃねーかなーって思ってよ!皆が皆、コーザやネリーみたいな人間じゃねーかんな。気をつけろよ?特にエンガをよーく見張っとけ。少し優しくされると懐に入れちまいそうだからさ、あいつ。・・・本当に心配になってきた。」

と、最初は必死に否定していたが、エンガの今後の人付き合いが心配になったのか、トリアは頭を抱え始めた。


うん。

【そこがエンガの良いところだけどな・・・でも、騙されそうだしな、でも、、、、】

と唸るトリアよ、心の声が駄々漏れだよ。

めちゃくちゃ心配してくれてるじゃないの。

本当に良い子だなぁ。

まあ、私もいるし大丈夫でしょう。

エンガのフォローもしておこう。


「大丈夫だと思うよ?エンガにも野生の勘みたいのはあると思うし。私もいるし。私は《エンガ第一》だから。もし、エンガに何かするような奴だったら叩き潰すし。大丈夫。今後はトリアに教えてもらった通りにもっと注意していくから。」

そう言いながら頷く。


トリアも納得したのか、その後は今日のエンガの活躍を話しながらカザルさんを待つことに。

トリアは年下だからか割と気軽に話しが出来る。

なんか弟属性な子だと思う。

ケラケラと楽しそうに話すし、ちょっとツンとする時もあるけど、そこも可愛らしい感じだし。

根が良い子なの丸分かりだし。

と、ちょっと失礼な事を考えつつ話をしていると、無事に大理石が磨きあがったらしい。


「はいよー。お待ちどうさま。トリ坊、買取の金はコッチ。石は重いから気をつけてな。嬢ちゃんもまた何か欲しいもんが出来たらいつでもおいで。じゃ、またな~。」

と、トリアにお金と大理石を渡して軽く手を振るカザルさん。

トリアはお金を数えてから仕舞い、石を背負った。


「行くぞ。」


「ありがとうございました。またお邪魔させていただきます。」


そう言って2人で店を後にした。


「な?商売が終われば【さっさと帰れ】みてーな感じだろ?獣人のオレがいると立ち寄れねー客もいるから仕方ねーけどな。」

と、さっきの話に付け加えるトリア。

特に傷ついてる感じでもないし、怒ってる感じでもないのを見ると、コレが《普通》なんだろう。

確かに、ネリーやコーザ達とは違うかもしれない。

まあ、カザルさんも客商売だししょうがないとは思う。

でも、エンガを連れて行った場合にどんな反応をするのか少し不安だ。

今後はエンガを連れて行くかどうかを考えつつ、エンガが待っているコーザの店へ急いだ。



色々と考えている間にコーザ達の店が見えてきた。

この間、トリアは特に何もいう事なく、私の隣を歩いていてくれた。

多分、私が考え事をしているのに気が付いて邪魔しないようにしてくれたんだろう。

何て優しくて大人な少年だろうか。

私の方が年上なのにダメダメでごめん。心の中で謝罪する。



「お、いたぞ、エンガ。ブッハ!おい!あれ見ろよ!顔はコーザの方を見てんのに、耳はコッチ向いてんぞ!!オレ達に気付いたのに、コーザの話の途中だからコッチ向けなくて耳だけ向けて焦ってやがる!ブホッ!」

と、トリアが噴いた。


「ちょ、トリア。笑わないで。コーザはまだ私達に気付いてないんだからしょうがないでしょ?ほら、トリアが笑うからエンガの耳がヘタってる。尻尾もションボリしてるじゃない。あれ、落ち込んでるよ?」



見てみなさい、トリア君。

エンガが傷ついてるよ。

私達が帰ってきたからお出迎えしたい。けど、コーザはまだ私達に気付いてないから説明が続いてる。

教えてもらってるのに、見ていない訳にはいかない。

でも、お出迎えしたい。

お帰りって言いたい。

どうしよう・・・。

そんなエンガさんの可愛い心中が丸分かり。

でも、そんなエンガをトリアが笑ったもんだから、ピンとしてた尻尾がへにゃへにゃと垂れた。

これに焦ったのはトリアだ。


「え?マジで?落ち込んだ?オレが笑ったせい?え?ちょ、え?」

と、なぜかパニックに。

そして、そんな時に登場してくれたのがこの方。


「なんだい、トリアもヤエも帰って来てたのかい。そんな離れたとこにいないで、こっちで休みな!コーザ!切りの良いとこで終わりにしときな。もし残っても明日でも大丈夫だろ?」

と、店の中から現れたネリー。


「ああ、2人ともお帰り~。ネリーもお疲れさま。そうだね。後はオークだけだからコレで終わりなんだ。もう少し待っててね~。」

と、私達に気付いたコーザが返事をし


「お、おかえり!ヤエ!トリア!俺、もう少しだから!待っててくれ!」

と、待ってました!とばかりに、先ほどまでの落ち込みは何なのか、元気いっぱいなエンガさん。


「ただいま。もう少しだね!エンガ頑張って!」

そう応援する私と


「えーっと、、、ただいま、、、笑ってごめん。頑張れ、エンガ。」

と、トリアも たどたどしくもエンガを応援してくれた。


すると、エンガの毛がファッサー!!

とフカフカになり、キラキラとした目で


「おう!俺、頑張るぞ!ヤエとトリアが応援してくれんなら百人力だ!」

と、コーザと共に作業に戻るエンガ。


それを見守りながら、

【やっぱりあいつ、単純すぎねーか?なあ?騙されねー?気をつけてやってくれよ?マジで。】

と言ったトリアの顔は真剣そのもので、私は全力で頷いた。


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