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トリアとの魔獣狩り。

エリニィちゃんのお店から暫く歩くと到着しました。

トリアとの待ち合わせ場所。

冒険者ギルドの前。

まだ時間よりは早いはずだけど、トリアは・・・。


「おい!こっちだコッチ!!来たんならさっさと行くぞ!!」

と、やる気満々、朝から元気なトリアの姿が。


「トリア!おはよう!すまん、待たせたか?」

と、此方も元気なエンガさん。

トリアの姿を見つけた途端、少し早足になったもんね。

私の事を気遣いつつも、徐々に早歩きになったもんね。

エンガは好きになった人には全力だよね。

そんなところも大好きです。


「おはよう、トリア。待たせてごめんね。今日はよろしくお願いします。」


「お、おお。・・・お、おはよう。」

少し恥ずかしそうに挨拶してくれるトリア。

もしかして、挨拶とか慣れてないのかもしれない。

そんなトリアの可愛らしい姿に、つい、エンガと2人で微笑んでしまう。


「とにかく、準備が出来てんなら行くぞ!!」

と、少し耳が赤くなっているトリアからの掛け声を受けて、早速、街の近場の森へと向かう事になりました。



街を出る時に門番に何か言われるんじゃないかと思っていたけど

門番は寡黙な方で、何も言わず、石を差し出すだけ。

その石に、それぞれの身分証を載せる。

すると、ギルドカードは淡白くひかり、通行を許可された。


トリアの後をついて行く形で、森へ向かい歩を進める。

エンガは片手に軽々と槍を持っている状態だ。

私も腰には剣を下げている。

森に入ったら抜き身にして持っていろとのトリアからの指示なので、それに従う。

割と近場にある森なのか、注意点などを聞いている間に、森に到着した。


「ここからは森に入るからな。緊張感持っていけよ。俺が先頭を行く。エンガも周囲には気を張っててくれ。本来なら俺よりも敵に敏感なはずだからな。ヤエも気を抜くな。俺の指示に従え。2人とも、俺が護ってやるから安心しろ。」

と、剣を構えるトリア。


私もエンガも頷き、武器を構える。

今から、命をかけた戦いが始まる。




・・・・・・・・・・。

そう思ってたんだけど。

目の前では、まさかの展開が繰り広げられています。


「ファイヤーバードだ!!」

叫ぶトリア。


「食えるか!?美味いのか!?」

問うエンガ。


「美味い!!」

答えるトリア。


「フンッ!!!!!」

ファイヤーバードと呼ばれた大きな鳥の首を落とすエンガさん。

私は無言でそれを逆さにして血抜き開始。


「オオトカゲだ!!」

叫ぶトリア


「食えるか!?」

問うエンガ


「美味い!!」


「ッだあ!!」

オオトカゲの首を落とすエンガさん。

そして、血抜きを開始する私。


「オークだ!!」

叫ぶトリア


「だりゃああああ!!」

ブンッ!!とすごい音を鳴らしながら槍を横に振い、3体同時に首を刎ねるエンガさん。

そして・・・・。


もう説明はいいよね?

要らないよね?

さっきからこの調子で、血抜きが大変なんですが。

ある程度の血抜きが完了したらトリアが適当に解体してくれて、鞄に仕舞うようにしてるけど、凄い重労働だよ?

トリアも既に敵の名前を叫ぶのと解体だけに徹底してるからね。

私たちの歩いてきた道は、まさに血の道だよ。

一応、トリアの魔法で土を被せながら来たけども。

ちなみに、この世界では血抜きしていくなんてことは無いらしく、そのまま冒険者ギルドなんかに売るらしい。

だから血抜きをすると言った時は、トリアに不思議がられたけど、【その方が美味しいから!!血を抜いて軽くした方が鞄に余裕もできるし!!】の言葉で納得してくれた。




エンガは私とトリアの想像以上に強かった。

動きも早いし、武器をぶん回すのも早い。

斬れなくても、槍の遠心力で敵が潰れるっていうね・・・。

しかも、大きいウサギみたいなやつはワンパン、トリアが何の魔獣か判断する前に右のストレートで頭を潰したからね。

当の本人であるエンガは

久しぶりに全力で動けるからか、生き生きとした表情で、足取りも軽く


「大量だな!これなら俺、ヤエに苦労させずに済むかもしんねぇ!養えるよな!!」

と、ホクホク顔。


なんて頼もしい&愛おしい事を言ってくれちゃってるのエンガさん!!

私を養ってくれるつもりだなんて!!

嬉しいよ!!

凄く嬉しい!!

そして、そのホクホク顔、めちゃくちゃ可愛いです!!

天よ!神よ!見ろ!この可愛いエンガを!!

今日も最高のマイダーリンにありがとう!!

なんて思ってたら、


「なあ、オレ必要なくね??オレ、攻撃魔法使えるし、結構強いんだけど・・・・。まだ土を盛り返すのと、解体以外に何にもしてねーよ?もしかして、魔獣や動物が食えるか食えないかの判定要員か?」

と、少し落ち込んだ様子のトリア。


あ~、そりゃ、そうだよね。

【護衛として来てくれた】のに、さっきから【食べれるかどうかの判定】をして【解体作業ばっかり】してるってのが、、、、ね。

そんな落ち込んだトリアの言葉を聞いたエンガは、心底驚いた様な表情で


「何言ってんだ!?トリアは必要だ!!俺は、トリアがいてくれるから敵に集中して戦えてんだ!全力で戦えんだ!トリアがヤエを護ってくれてるから、俺は戦えてんだ!ありがとう!トリア!」

と、全力で感謝の気持ちを伝えるエンガ。

それに対して


「べ、べつに!!護ってたわけじゃねーし!!見てただけだし!!ヤエが勝手に隣に居ただけだし!!ってか!!エンガはオレがいなくても強えーよ!!」

と、真っ赤になりながらも否定するツンデレトリア。


トリアは否定したけど、

冒険者であるトリアが私の傍にいてくれるから、エンガは今の自分に出来る事を探りながら、実力を試すことが出来るのだ。

信頼できる人間が私を護っていると安心しているからこそ、敵に集中できる。

エンガにとって最高の状況だ。

勿論、私にとっても。

なので、私からもきちんとお礼を言っておこう。


「それでも、隣にいてくれてありがとう、トリア。私も安心してエンガを見てられたし、凄く助かったよ。ありがとう。」


すると、2人からお礼を言われて照れたのか


「次行くぞ!!次!!」

と、首を赤く染めながら足早に歩いていくトリア。

私とエンガは、その後ろをオークを鞄に仕舞いながら追いかけていった。

私達の友達は、少し恥ずかしがり屋の優しい男の子です。



トリアの後を追い、何体ものオークやベアー、ウルフにゴブリンを倒していくエンガと私。

オークやベアーなんかはトリアにも渡し、ゴブリンは魔石だけいただくことにします。

トリアには【こんな小さい魔石、金にもなんねーし、本当に要るのか?】

と聞かれたけど、魔具を作る上で必要かもしれないので、一応確保しておく。

もしかしたら他にも何か使えるかもしれないしね。



そうして歩いているうちに、川にたどり着いた。


「ふう、この辺で飯にしようぜ。エンガもヤエも、手、ちゃんと洗えよ?血の匂いってクセーからな。」

と、トリアは川で手を洗い始めた。

それに倣って私達も手を洗う。

何度も洗って布で拭い、準備完了。

トリアは石の上に座り、黒くて硬そうなパンらしき物を食べようとしているので、素早く腕を掴んで止める。


「トリア!実は、今日のお礼にトリアの分もお昼を作ってきたの。エンガとトリアは沢山食べると思って大量に作ってきたから、一緒に食べて!じゃないと夕飯も同じもの食べなきゃいけないから!ね!」

と、此方からお願いする形でお昼に誘う。

私たちが自分の分までお昼を用意しているとは思わなかったんだろう、

トリアは目をぱちくり。


「オレの分?持ってきたのか?わざわざ?」

と、私とエンガの顔を見比べるトリア。


「おう!ヤエが朝から用意してくれたんだ!一緒に食おうぜ!いっぱい作ってくれたからな!腹いっぱい食えるぞ!!美味いし!!」

と、トリアの隣に私を座らせて、私の隣に座るエンガ。

私は鞄からお昼ご飯を取り出し、トリアの手に持っていた硬そうな焦げ臭のするパンを、無理やりトリアの鞄に戻させて、目の前でご飯を広げて見せる。

大量に焼いたふかふかなパンと、挟める系のおかずの数々。


身体を動かした後の食事は別格なのだろう。

まさに、空腹は最高の調味料。

今日一番、エンガとトリアの目が輝いた瞬間だった。

水筒に入れてきた朝食の残りのコーンスープをカップに移して2人に渡し、

パンに好きな具材を詰めて食べる様に言う。

すると


「ヤエ、手本見せてくれ。俺、詰めすぎると思う・・・・。」

という、エンガからのリクエストにお応えして、

パンにレタスを挟み、エンガの大好きなエビフライを挟み、薄切りのゆで卵をのせ、具沢山なタルタルソースをたっぷりとかけて渡してあげる。

トリアにも同じものを、ソーセージや、から揚げの事を簡単に説明しながら、挟んであげる。

恐る恐る、それを一口食べたトリアは


「・・・うめぇ。うんめぇ!!」

と、モグモグモグモグと詰め込み始めた。


「トリア、あんまり詰め込むと、喉に詰まるよ?」

そんな忠告にもめげず、モグモグと食べ進める。

そんなトリアの姿にエンガも負けじとモグモグ。


「やっぱ、ヤエの作るもんは美味ぇ!!」

と言ってもらえて、胸がホンワカする。

目を細めながら、美味しいと食べてくれるエンガ、本当に可愛いです。

頑張って準備した甲斐があるよ。幸せです。


「なあ、コレ、本当に、ほんとーに、好きに挟んで食っていいのか?」

と、一つ目を食べ終えたトリアはおずおずと遠慮気味に聞いてくる。


『もちろん』

私とエンガの声が揃ったのを聞いて、

弾けるような笑顔で

凄く嬉しそうに、次はどれにしよう、これも良いかも!と、楽しそうに食べ始めたトリア。


そんなトリアを見守りながら食べていると。

エンガは、自分で食べて特に気に入った組み合わせを再度作り、

トリアに【美味いぞ!食ってみろ!】と持たせる。

すると、両手がふさがりながらも、【うめぇ!】と喜び次々に咀嚼していくトリア。

そして何故か、エンガは両手のふさがったトリアの口に、ポテトやオニオンリングを運び始めた。

トリアは美味しさのあまりか、恥ずかしがることも無く、エンガから差し出されるポテトやオニオンリングも食べていく。

まるで親子の様で、

見ていて凄く微笑ましくて可愛い2人なんだけれども・・・・。


これには流石の私も嫉妬だよ!!

エンガからの【あーん】がしてもらえるなんて!!

羨ましいぞ!!

トリア君!!

という事で、私もエンガにおねだりしてみましょう。


「私も!!エンガ!!私にもポテトをあーんして!!食べさせて!!」

恋する乙女はいつでも勢いが大事なんです。

恥ずかしいとか言ってる場合じゃない。

私の突然の発言に驚いたエンガはワタワタと挙動不審になりながらも


「えっ!?えっと、う、、、うあ、、、あー、ん?」

と、照れたような顔であ~んしてくれました。


エンガさん、激可愛いです!!

あーんって言いながら、語尾で首を傾げる感じがまた、素晴らしく可愛い!!

しかも、あーんしてくれた後に、下を向いて【照れる、、】とか何とか、うにゅうにゅ言ってる姿も可愛いよ!

トリアには普通だったのに、私には照れて真っ赤になっちゃうなんて、もう、もう、期待しちゃうよ!!

うっほほーい!!

と、ニヤニヤしていると


「オレの目の前でイチャつくなよ。」

と、ジト目のトリア。


ん~?

トリア君は思春期ですかな。

すまんね!ラブラブで!

羨ましいならそう言ってくれ!

嬉しいから!

ホッホッホーホ!!

と高笑いしたい気分でいると、トリアは


「んぐんぐ、ゴクン。・・・エンガさ、オレの事、子供扱いじゃね?それに比べて、ヤエの事はちゃんと女扱いしてんのな。まあ、俺の事は置いといて、それで良いと思うぞ。じゃないと、女は直ぐへそ曲げるからな。」

と、エンガに対して、女は面倒だというような口調で語りました。


おいおいおい、その達観した様な証言、何歳ですか?

思春期なんかとっくに過ぎてんじゃね?

浮かれた気分も一瞬にして現実に戻ったわ。

でも、エンガは良く分かってないらしい。


「トリアは年下で、ヤエは女だろ?」

なんて、不思議そうなお顔のエンガさん。


「・・・ああ、うん。ソウダナ。」

と、苦笑いで食事に戻ったトリア。


不思議そうな顔をしたエンガに新しく作ったサンドイッチを渡しつつ、今後の予定について話す。

あまり沢山狩っても大変なので、来た道の近くを帰ることに決定。

楽しいピクニック気分だったのだが、突然トリアは真剣な顔で


「帰りも怪我には気をつけろよ?オレ、回復薬はあんまし持ってねーからさ。お前らが大怪我したら、全部使い切っても助けられるか分かんねーからな。」

と、少し切なそうな顔のトリア。


「うん。怪我しないように気をつけるね。それと、回復薬は大丈夫だよ。私達、2人とも持ってるから。でもさ、冒険者なら回復薬は沢山持ってるんじゃないの?どうかしたの?」

トリアの表情がなんだかひっかかる。

なんか、ちょっと気になる感じの表情。


トリアは私達が回復薬を持ってると聞いて、安心したような表情をした後、私の質問に対して苦笑をもらした。


「あー。オレは獣人だからな。ギルドでも獣人を嫌う奴らは多いんだ。だから、本来の値段よりも高値で売られんだよ。文句を言えば売ってもらえなくなるから何も言えねぇ。冒険者は回復薬がねーと命の危険があるからな。背に腹は代えられねーよ。お前たちが持ってて良かった。」

と、寂しそうな表情のトリア。


その話を聞いて、あのギルドなら十分にありうるだろうと、直ぐに想像できる。

一緒に話を聞いていたエンガが、私の服の袖を掴んだ。


「ヤエ、ヤエの店、駄目か?」

と。

恐らく、

【《もしゃもしゃ草》でトリアに回復薬を販売してあげる事は出来ないだろうか。】とか

【《もしゃもしゃ草》は獣人にも回復薬を売ってくれるか?駄目か?】とか

【《もしゃもしゃ草》を紹介するのは駄目か?】とか

の質問だと思われる。

ここで自分の持ってる分を譲ってあげるとか、タダであげるとか勝手に言わない辺り、エンガは回復薬やお店の決定は全て私にあると考えているんだろう。

うんうん。

仲が良いからって、何でも無償で渡すのとか、一方的に何かしてあげるだけの関係はあまり宜しくないよね。

ではでは、私なりの考えを先にエンガとお話させてもらいましょう。


「そうだね。ウチはエンガを敵視しない人なら誰でも大丈夫だから、獣人でも売るし、ギルドより価格も安いし、品質にも自信あるし、ウチで買ってもらえるように営業してみましょうか。」

と、エンガに語りかける。


すると、ぱあっと明るい顔で、エンガが


「いいのか!?じゃあ、トリアに《もしゃもしゃ草》の話するぞ??いいか?」

と、今すぐにでも教えてあげたいのだろう、ソワソワ。

状況が理解できていないトリアもソワソワ。

頷く私を見て、エンガはテンションMAX!!


「トリア!聞いてくれ!あのな!ヤエな、《もしゃもしゃ草》っつー店やってて、そこで回復薬を売ってんだ!んでな、ヤエの店だから獣人でも買えるし、冒険者ギルドで買うより安いんだぜ!だから、これからはヤエの店に買いに来いよ!!な!トリアには必要な物なんだろ!?買いに来い!ヤエも良いって言ってくれたしよ!露店街なんだ!来いよ!」

と、一気に話すエンガの補足を私がさせてもらう。


「そうなの。私、露店街で《もしゃもしゃ草》っていう、冒険者向けのお店を経営してるの。小さいお店だけど、回復薬を揃えてるから、是非、来てちょうだい。ギルドなんかより全然安いからウチで買って行って。それと、もし、お金が無くて回復薬が買えない時は絶対に私に声をかけてね。怪我をして治せないまま狩りに行かなきゃいけない時なんかも。ウチのを無料で譲るから。その代わり、【回復薬を無料で渡した時】は対価として【狩りの護衛を無料】で引き受けてちょうだい。冒険者のトリアとして、今日みたいに私の護衛をしながらエンガの狩りを見守ってほしいの。それならトントンでしょう?」

と、営業をしてみる。

普段は通常の価格で買ってもらうが、

冒険者である以上、もしかしたら怪我をしたままお金がない状態が続くかもしれない。

だから、お金が無くて怪我をしている時や、回復薬を買えずに狩りにいかなければならない時にはウチで無料で回復薬を渡す。

その代わり、今日の様に狩りに付き合ってもらう。

エンガも楽しそうだし、私としてもまた頼みたい。

どうでしょう?


「・・・・・。」

トリアは口をぽかーんと開けていた。


ん?

どうしたんだい?

突然の事で驚いてるのかな?

何の反応もしてくれないトリアに不安になったエンガが声をかける。


「トリア、どうだ?ヤエがこう言ってくれてんだ。友達なんだし、遠慮しねえで来てくれよ。な?」


「・・・。回復薬売ってんのか?っつーか回復薬の店?やってんの?え?え?その若さでか?ヤエが?回復薬の店って・・・。すげーな・・・。でも、良いのか?普通に買うのは納得だけどよ、金がねー時はこんな護衛の仕事なんかで譲ってもらうなんてよ・・・。そっちは損じゃねーのか?」

と、驚きと遠慮で混乱しているトリア。


「全然。損じゃないよ。さっきも言ったけど、トリアがいてくれるとエンガが全力出せるから助かるもの。それに、触っちゃいけない種類の草花なんかも教えてくれるでしょう。有り難い。むしろこっちから、また護衛をお願いしたい。代金は回復薬で。魔力の回復薬もあるからね。好きなのを。要交渉で。」

と、言ってみると、隣でエンガも頷いていた。


「本当に良いのか?そっか・・・。ありがとう。じゃあ、回復はヤエの店で買わせてもらう。んで、もし、金が無くて怪我した時も分けてもらう。その代わり、ちゃんと護衛するからな!オレ、護衛頑張るからな!!よろしく頼む!!」

と、頭を下げるトリア。


「実は、ずっと不安だったんだ。あんまり回復薬も買えねーし、獣人だから身体も丈夫で治りも早いけどよ、大怪我したら、、、オレはどうなるんだろう。ってさ。一人だし。獣人の仲間が助けてくれるって確証もねーし。今の仲間が助けてくれるかも分からねーし。怪我したら、、、どうやって生きてくのかなって、、、思ってて・・・。」

と、涙声のトリア。


そっか。

ずっと不安だったんだ。

冒険者という怪我と隣り合わせの職業で。

なのに回復薬は満足に買えない。

自分なりに考えて、使い過ぎないように節約して我慢して。

狩りに行くのも常に不安を抱えたままで。

怖かっただろうな。

そう思っていると


「ずびび。俺、俺はトリアが怪我したら助けるからな!!病気でも助けるぞ!!俺はトリアの友達だからな!!ヤエにお願いして、回復薬を俺が買って、その回復薬で元気になったトリアに金返してもらう!それなら問題ねぇだろ!!俺はトリアも大事だからな!!怪我したら言えよ!!ちゃんと回復薬買いに来いよ!!絶対だぞ!!」

と、自分の目を乱暴に擦り、興奮状態で捲し立てるエンガ。


エンガは優しいなぁ。

勿論、私もトリアの友達なので譲る気はあるよ。

でも、もしゃもしゃ草の店主である以上、下手な約束はしない。

なので、ここは男2人の熱い友情という事で私は黙っておく。


エンガの言葉を聞いて、トリアは顔を袖で拭ってから上げて、握手を求めた。

2人で握手。

【ありがとう】

トリアからの言葉にエンガが何度も頷いていた。

なんだか兄弟みたい。

エンガの方が少し頼りになるお兄さんみたいな感じ。

微笑ましい。

今の私は空気だけどね・・・。

なんて思っていると

エンガが叫んだ


「なんか来た!!」

即座に槍を構え、対岸を睨みつけるエンガ。

トリアも臨戦態勢である。

私も空になったお弁当箱と水筒をしまった。

すると、現れたのは


「そこから先は我らの領土。立ち入ることは禁ず。」

と、偉そうに語るもじゃもじゃ長髪の男の姿、上半身は。

下半身は艶のある黒馬。

よく物語なんかに出てくるヤツ!!

なんだっけ?

上半身は人間なのに下半身は馬な奴!

と記憶を探っていると、魔獣に詳しいトリアが説明してくれた。


「ケンタウロスだ。こいつらはプライドがたけーから、下手に関わると面倒だ。これ以上近寄らなきゃ平気だから近づくな。」

と、特徴を挙げ、近寄らないように指示される。

それを聞いたエンガは何を思ったのか、トリアに問うた。


「けんたうるる?・・・・美味いのか?」


って!?

ええ!?

エンガさん、あれを食すおつもりですか?

いや、エンガさん本人も若干嫌そうな顔はしてるけど、美味しいって言われたら狩るの!?

食べるのかい??

私は無理だよ??

ほらほら、トリアも目をひん剥いてるよ?!


「いや、エンガ、流石にケンタウロスは・・・。食わねーわ。ってか、あの見た目だろ?食う気しねーよ。お前、食える?」

と、トリアからは正論が。

すると、エンガは少し戸惑いながら


「う・・・。んや。食いたいわけじゃねぇけど、美味いならヤエの為に・・・。」

って、私の方を見るエンガ。

その視線を辿って私を見るトリア。

待て待て待て。

私が言い出しっぺみたいな空気にするの止めてくださいよ!!

マジで!!

食べないからね!?

食べないよ!?

美味しくても無理だからね!?

上半身だけとはいえ、人間だもの!!

食べれないよ!?

狩りも無理!!


「いやいやいや!!!!流石に食べたくないよ!?美味しいと言われても困る!!食べれない!!狩らなくて良いからね!エンガ!!」

そうお断りしていると、


「・・・我らを食うと語るのは貴様らが初めてぞ。ゲテモノ趣味か?その年のおなごが・・・。奇妙な人間もいたものだな・・・。」

って、私を見ながらドン引きした様子のケンタウロスさんが一名。


ちょっと待って!!

濡れ衣!!

完全に私が食べたがってたみたいな空気になっちゃってるけど、違うからね!?

私は全力で首を横に振った。

ケンタウロスの言葉を聞いたエンガは


「すまん!食えねぇ奴との戦いは避けてぇ!!そっちには入らねぇから見逃してくれ!!」

と、ケンタウロスさんに語り掛けるエンガ。

私とトリアも必死に頷く。

その様子をしばらく眺めたケンタウロスさんは


「良かろう。我らが領土に入らぬのなら問題ない。我も貴様らと闘うのは骨が折れそうなのでな。御免被る。・・・・そこのおなごよ、我らは筋肉質ゆえ美味くは無い。食べるのは止めておけ。」

と、可哀想な子を見る様な目で私を見、忠告を残し去っていった。


って?!

ちょっと待って!!

あのケンタウロスさん、完全に勘違いしたままだよ!!

下手したら、他のケンタウロスさん達にも広まるんじゃないの!?

ケンタウロスを食おうとしてる女がいるとか!!

最後の私を見た時の目は完全にそう思い込んでるよね!?

ちゃんと訂正すればよかった!!

驚き過ぎて何も言えなかったのが悔しい!!

そんな私とは反対に

エンガとトリアは

『なんとか無事に乗り切ったな~』

って感じで安堵してるし。


まあ、ケンタウロスさんと喧嘩にならなくて良かったけどね。

ああいう時、サッと【戦いを避けたい】とか【見逃してくれ】

って言えるエンガってカッコイイと思う。

私達の為に、自分を下げてでも無駄な戦いを避けてくれる。

短気だったり、自分の力を過信していたり、自分の事・目先の事しか考えない人間だったら絶対に出来ない事だと思う。

大人な対応だもの。

惚れなおした!!

可愛い面も多いけど、カッコイイ面も沢山なのよ!!

今日もマイダーリンは最高です!



そんなこんなで無事に狩りを終え、街に戻ってきました。

トリアに私達の鞄の容量、個数が凄いと言われたけど、回復薬店出来る程度にはお金持ってるから、と言うと納得してくれた。

流石に自分で作った事なんかは秘密。


街の門番は先ほどの寡黙な人とは違って、チンピラみたいな野郎に交替していた。

そいつが・・・・・。


「んだよ、ガキと獣人かよ。どうせなら魔獣にでも食われて来いよな。仕事増やすなっつーの」

等々、私が子供に見える事とエンガとトリアが獣人な事に対して暴言を吐き始めた。

これは許せない。


『私の事はどうでもいい!けど、私の大事な人達を馬鹿にしないで!!』

『俺の事はどうでもいい!でもな、俺の大事な友達と大切な人を馬鹿にすんな!!』

『オレの事は何とでも言え!!けどな、オレのダチを馬鹿にしてんじゃねーよ!!』


と、それぞれが怒鳴った。

全員が全員、同じ気持ちだったらしい。

門番は私達3人の迫力にタジタジ。


私達は全員で顔を見合わせて、声を出して笑ってしまった。

まさか、同じような言葉で言い返すなんて!

と、3人で笑いながら、勝手に門番の石にカードをかざして街に入る。

その時、前を歩く2人から少し離れて、門番に小声で

【私の最愛の人と親友を馬鹿にするなら、力ずくでも考えを改めさせるけどどうする?】

と告げ、握りこぶしを作って見せた。

殺気を出した私の顔は、やばいモノにでも見えたのだろう、門番は奥に引っ込んだ。

門番の仕事しろよ。

と思いつつ、先を歩くエンガ達の元へ小走りで向かう。

後ろを振り向いて、私の合流を待ってくれている2人の間に滑り込む。


「ん?どうかしたのか?あ、手ぇ繋ぐの忘れてたな。街の中ならもう良いだろ。ん。」

と、私を心配しつつ、手を差し出してくれるエンガ。


「おせーぞー。何してたんだよー。」

と、軽く頭を小突きつつも、心配してくれたのであろう、トリア。


そんな二人に挟まれながら、狩りの思い出を楽しく語って歩く私達。

次に目指すのは、ネリーとコーザのお肉屋さん。

大量に狩ったから大変だろうけど、後々出したら、保冷機能付き鞄の説明とか、面倒な事になりそうだからね。トリアには狩った量がバレているので、全部解体してもらわないと。

トリアも買い叩かれる冒険者ギルドじゃなくて、適正価格で買取してくれるネリー達のお店で本格的な解体、売買をするらしい。

なので、引き続き3人でお肉屋さんへGO!!


よし!

狩りは無事に終了!!

後は肉屋での解体と、魔具の部品集めだ!!


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