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店番の依頼。

金銭関係は計算に矛盾が出てきたので、曖昧にしてあります。

申し訳ございません。

エンガと並んで、冒険者への依頼の相談をすることになった。

受付嬢さんは未だに緊張してるのか、用紙を取り出して、その用紙と私の顔を交互に見ながら、挙動不審になりながらも少しづつ話始めた。


「あっと、えっと、それでは、今から依頼の交渉をさせていただきます。まず、あーっと、お店の依頼との事ですが、どのようなご用件で・・・?あ!あの!もし、仕入れの依頼ならば、ギルドで取り扱っている品も多いので、そちらからの買取優先でお願いしましゅ!」


うん、早速、舌を噛んだね。

それと、一度質問したんなら こっちの話を聞いてから進めてくれないかな?


「仕入れじゃなくて、店番を依頼したいんです。Gランクのお店なので街はずれの露店になりますが、それでも大丈夫な方。色々と条件があるので、それら全てを守っていただける方にお願いしたいんです。私のお店は回復薬と食品のお店なので、その店番として最低限の武力がある方、計算が出来る方で。」


私の言葉を聞いて、舌を噛んだ痛さからか涙目だった受付嬢さんは ゴクンと唾をのみ込んで、私に言った。


「店番ですか?しかも露店?えっと、商業ギルドの方で人材を派遣してもらった方が良いのではないですか?」


うん。私もそう思ったんだけどね。


「Gランクの露店だと人材派遣はされないんですよ。奴隷の紹介なんかはあるみたいなんですけどね。残念ですけど。なので、冒険者の方に依頼としてお願いしようと思ったんですよ。回復薬も扱いますし防犯も兼ねての選択ですねぇ。」



「そうだったんですか。ああ、商業ギルドは大手の味方ですし、露店は趣味やら変わり者が出すお店ですからね。普通なら自分一人で・・・。ああー!!っと!!すみません!!そうですよね!一人じゃ忙しいですよね!女性には大変でしょうし!!そうですよね!しちゃいますよね、依頼!!お任せください!

えーっと、話を戻して、その、条件って何でしょうか?あまりに厳しいと、流石に、紹介が出来ないかもしれません・・・。あと、値段にもよりますが・・・。ああ!!もちろん!募集はさせていただきますよ!ええ!募集は出来ます!はい!冒険者である以上、銭勘定は出来ますし、Eランク程度の方々でも充分強いですから!店番が出来そうな人間はウジャウジャ大量にいますよ!ハイ!」


と必死になっている受付嬢さん。

冒険者をウジャウジャって・・・。

もう少し言い方に気を付けたほうが良いんでないかい?お嬢さん。

まあ、こちらからの条件は最初から決めているので、悩む必要は無い。


「募集人数は2名。募集が多数の場合は面接で決めさせてもらいたいですね。

条件は1、高価である回復薬を売るのだからお金の管理をキッチリとすること。2、うちで扱う全ての商品に関する情報の全てを黙秘すること。3、盗みや横流しなどをしないこと。4、フルフェイスで獣人のエンガを、雇い主である私のパートナーとして認め、接すること。4が一番重要。コレが無理な人間はまず来るなって書いてください。」


一瞬、顔を引き攣らせた受付嬢だけど、私からの圧力を感じてか、必死にペンを動かし始めた。



商品についてだけど、

正式に人を雇う前に、回復薬以外にも販売する商品を作り、その販売を副業にしながら、5日に渡って少しづつ魔力回復薬と体力回復薬を売ってもらうつもりだ。

回復薬は高価なので、少しでもかなりの売り上げになる。

前回、少しだけ開店した時も、露店のお店にもかかわらず、回復薬は飛ぶように売れた。

それほど回復薬を欲しがる人が沢山いるという事なのだ。



体力回復は

小回復薬、軽い傷を治し体力の2割回復

中回復薬、骨折や大きな傷を治し体力の7割回復

大回復薬、切れた腕が生えるレベル、体力MAX+α


魔力回復は

小回復薬、魔力を1割回復

中回復薬、魔力を7割回復

大回復薬、魔力MAX+α


の種類があり、正直、高い!馬鹿じゃないの!

とか言いたい金額なのだが、購入者から文句は一切出ない。

神殿に連れて行けば、神官様が多少は安い金額で治してくれるらしいが、神官様は希少な人種。

冒険者がチームに入れて連れて歩けるわけじゃないし、遠征先、いざという時に頼れるのが《回復薬》だけなのだ。

高いだのなんだの言ってられない。

ガチで自分達の命がかかっている薬なのだ。

だから、効果が出るのであれば高くても買い手がつく。

本来なら新規出店の露店では売りにくい商品なんだろうが、

その点、私の商品は既に隣の店の御爺さんと冒険者さんで結果を出していたのでちゃんと売れた。


あ、小回復薬と中回復薬の値段には結構な差があるのだけど、

それは瀕死の状態において、一瞬で7割回復するのと、ちまちま回復するのとだと戦況が変わってくるからという理由だ。

値段の差はそのせい。

ついでに、魔力回復薬は出回ってる数が少ない上に、自力で回復するのが大変だそうで、魔術を使う方々には大量に売れる。

なので需要と供給の偏りのせいで暴利になっている。



沢山販売して、目をつけられるのも嫌だから

週5日に渡って数個づつ販売することにした。

前回は小回復薬と中回復薬を数個しか出さなかったけど、それなりに良い金額になってしまった。

Gランクの露店だから正規よりも安く販売したのに、だ。

だから、チート持ちで沢山作れるけど店にはあまり出さない。

それと、大回復薬は販売しない。

売ってないところがほとんどだし、冒険者ギルドでも超希少品らしいし。

更に私は

【エンガを治すのに使った1本しか持っていなかった。】

と奴隷商人に言っているのだから、販売出来ない。

どうしても販売しなければならない時には独自のルートで新しく手に入れたとか言うしかない。


まあ、回復薬の販売については

いざとなれば販売個数を減らしたり、

【品薄】だの【仕入れ中】だのと言って他の商品の販売だけにしていればいいし、

まあなんとかやっていけるだろう商売だと思う。



因みに、一応、冒険者にもランクがあってG~Sランクと分類されるらしい。

ランクが一番低いGランクは初心者、子供が多く所属していて、薬草採取や掃除、荷物運びや大工仕事など街の住人からの依頼が多く、一日の稼ぎは500円から3000円程度らしい。

Sランクになると、一回で驚きの料金を支払われるとかなんとか。

私が雇うのはおそらく、受付嬢さんが言った様にEランク辺りの人間になるんだろう。

只の店番だし、冒険者でやりたい人間は少ないと思うけど、

武器を購入するために長期でお金を貯めてる人間や、冒険者ギルドに登録はしてるけど研究職の人間や、他の街に行きたくない人間なんかには良い話だと思う。

魔獣を相手にしないから安全かつ消耗品を使う事も無いから、募集はある。

・・・だろう・・・。きっと・・・。


ここで漸く、受付嬢さんが用紙の記入を終えたらしい。

ここまで書き上げるのに2枚の用紙をダメにしたのは見なかったことにしておこう。

そして、受付嬢さんは小学生が作文を発表するかの如く、紙を顔の前に掲げて元気よく読み上げた。



「お待たせしてすみません!!書き終わりました!えっと、先程の内容を再度確認させていただきます!!

まず!一番重要なのが!そちらの男性を《雇い主様のパートナー様》として扱うことぉ!!そして、お金をしっかりと管理出来て、お店の情報を黙秘する契約を結べるEランク以上の冒険者!!で大丈夫でしたでしょうか?!あ、盗みや横流しなんかの犯罪行為は禁止されているので、大丈夫です!!そんな人間はギルドが許しませんから!大丈夫です!ああ!!それと!!そんなヤツを2名、ご所望で!!」

受付嬢さんは変な倒置法を使ってから、ヤクザの舎弟も驚く位、勢いよく頭を下げた。


この人に頼んで本当に大丈夫なのか?

という不安が募る一方なのですが、押しに弱そうなのでこの人で良い気もする。

まあ、このまま話を進めましょう。


「はい。その内容でお願いします。」


「えっと次なんですが、依頼料はおいくらになさいますか?冒険者への店番の依頼はかなり少ない上に、露店の店番の依頼なんて聞いたことがないので、そちらで指定していただいて、一度募集してから・・・。という事になるかと思いますです。あ!あと!ギルドに仲介料として、冒険者への依頼料に2割プラスした金額を支払っていただくことになります。冒険者からの依頼なら1割なのですが、冒険者には登録なさらないとの事なので・・・。」

怯えた表情で聞いてくる受付嬢さん。


「ああ、はい。2割で大丈夫です。あ、ついでに。食事は支給しませんので、自分で用意するか交代で食べに行くかしてもらう事も条件に追加でお願いします。給金は週5日で一カ月でコレでどうでしょうか?それにギルドの仲介料を足すと月々にこの支払いで大丈夫ですか?」


実際に貨幣を見せながら話をする。


私はチートで何の苦労も無、回復薬が作れるし、かかるのは容器代くらいだし、土地代も安い。

だとすると、人件費を払ったとしても、私達の収入は月に・・・・。

ああ、人生イージーモード!!

そうなると、私だけじゃなくてエンガにも商業ギルドに登録してもらって、エンガ単体でお金を預けておいた方が良いかも。

自分の口座を持ってる方が安心だろうし。

いざという時に、商業ギルドでおろして使えるって方が良いだろうし。

うんうん。

脳内で頷いていると、必死に計算していた受付嬢さんが用紙に条件と金額を追加で記入し


「ああ!はい!大丈夫です!では、コレで募集で良いでしょうか?ご確認ください!」


と依頼用紙を渡してきた。

一文一文読み上げて、隣にいるエンガにも許可を取りながら確認をしていく。

エンガは金額は分からないみたいだけど、内容についてはウンウンと頷いて真剣に耳を傾けてくれている。


「一応、考えていた通りに書いてもらったけど、コレで良いかな?もし、募集しても集まらない様ならその時にまた考えようか?」


「おう。良いんじゃねぇか?金の事は分かんねぇけどよ、ヤエが良いと思うんならそれでいい。無理だっつーんなら、暫くは俺らでやればいいだろうしな。」

とエンガにも不満は無いみたいだ。


「じゃあ、これでお願いします。一応、募集期間中は2日置きに冒険者ギルドの方まで来ますので、その際に募集状況を教えてください。それと、募集相手にも同じように伝えておいてください。」

依頼書を受付嬢さんに返して手続きをお願いする。


「あ!はい!では、商業ギルドのカードの提出をお願いいたします。もし、今回の依頼の件で何か問題を起こした際には、商業ギルドへ報告されますので予めご了承ください。無いとは思いますが、料金の踏み倒しや故意に冒険者に危害を加えるなどが当てはまりますので、お気をつけください。」


マニュアルをチラ見しながらの警告ありがとう。

素直にカードを渡すと、平らな板の上に依頼書とカードが置かれた。

依頼書に変な模様が浮かんだところで終了らしい。

そのままカードを返された。


「お待たせしました。これで依頼書の作成の完了です。もし、契約する冒険者が決定する前に、内容の変更などがございましたらギルドの受付の方に来てください。以上です!」


と、やり切りました!

という雰囲気の受付嬢さん。


「ありがとうございました。それでは、また3日後にまたお邪魔させていただきます。」


一応、頭を下げて席を立ち、エンガと手を繋いで部屋をでる。

受付嬢さんが誘導するように先頭を歩いて行くのだが、足取りが軽いな。

そんなに私の相手は嫌だったのかい?

清々しい顔をしちゃってまぁ。

何だか意地悪したくなっちゃうじゃないか。


ギルドのカウンター付近まで来ると、他の冒険者の方々とのご対面、再び。

皆、自分は関係ないとばかりに目を逸らしたり、私たちを見て隣の人間と笑ったり。

まー、懲りてない奴らだね。

まあ、次は腕か足を貰う気でやるってギルマスにも言ってあるし、何かあるならかかって来ていいよ。

返り討ちにしてやるから。

とか考えてたんだけど、笑ってた奴らを連帯責任を恐れただろう他の冒険者達が睨んだりして、喧嘩を売ってくる奴はいなかった。



ドアを出る所で

「では、3日後の同じ時間にまた来ますので。今後も宜しくお願いしますね。受付のお姉さん。」

と、本日お世話になった、晴れやかな笑顔の受付嬢さんにご挨拶。

【え!?私!?3日後も私!?】

なんてキョドキョドしてるのを置いて、

帰りは大人しく冒険者ギルドから帰してもらいました。




その後、冒険者達を叱り疲れ、面倒に巻き込まれた事で不機嫌なギルマスに全てを報告した受付嬢。

椅子の件も自分が話した事も全て素直に話した為、受付嬢としての心得やらなんたらと、お叱りを受けつつ、

【じゃあ、今後は貴方が担当しなさい。今後も、なんて指名されちゃったみたいだし。貴方位抜けてる子の方が合ってるかもしれないわ。】

なんて言われてしまって肩を落とす事になり、

更には依頼主の名前を聞いてない事に雷を落とされるのでした。


_____________________________



冒険者ギルドを出て、

エンガと歩いてやって来たのは、お洋服のお店。

以前、エンガの服を私一人で買いに来たお店なんだけど、

ここでエンガさんご所望の《コシミノ》があるかどうか。


問題はそれだけじゃない。

エンガはまだ簡単な計算しか出来ない。

つまり、私がエンガにコシミノを購入してあげるという状況だ。

想像してみてほしい。

貴方が服屋の店員をしていたとして、

突然現れた、奴隷の首輪を付けた獣人のオッサンとその主人らしき女性。

そして、その女性が買ったのは、獣人のオッサンに着せるだろう、

《コシミノ》だ。

注意すべき点として、その《コシミノ》がこの世界では着るのが恥ずかしいと言われている品だという事。

それを購入する女の子と、後ろで買ってもらえるのを待っているオッサン。


ねぇ、これ、レベル高くない??

羞恥プレイだよね?

上級者向けの。


エンガがルンルンで、

《コシミノ~♪新品のコシミノ~♪ふふ~ん♪》

なんて歌ってなければ、忘れたふりでもして、別のものを購入するのにぃぃぃぃぃ!!

ああああああああああ。

ご機嫌なエンガ可愛いけど、私の何かが失われそうだ。

可愛いけど、めちゃくちゃ可愛いけどさ!!

なんて考えてたら

着いちゃったよ。

お店。

兎に角、入り口から気を引き締めていかないと。


「あの~。すみません。お店を拝見したいのですが、宜しいですか?」

エンガと二人で並んで、入り口から中の売り子さんに声をかける。


「は~い。、、、店長に聞いてまいりますので、少々お待ちください。」

売り子さんは頭を下げて奥に引っ込んで行った。


売り子の自分だけでは判断できないから、わざわざ店長に聞きに行ってくれたんだろう。

断られないことを祈る。

ここで買えるのが一番なんだよね。

着れるサイズも分かってるし、一度購入してるから大体の金額も分かってるし。

あ、来た来た。

答えはどっちでしょうか?


「お待たせいたしました。大変申し訳ないのですが、そちらのお客様は毛が商品に付く可能性が高いので、商品を直接お手に取るのはご遠慮くださいませ。お嬢様が商品をお広げになり、それを見ての購入をお願いいたします。また、試着した物は全て購入していただくようにお願いいたします。それらをお守りいただけるようでしたら、どうぞ、ごゆっくりご覧くださいませ。」

と売り子さんは笑顔で店内に腕を向けた。


「ありがとうございます。エンガ、それでも良いよね?」


「おう♪良いぞ♪ヤエと選ぶんだしな♪問題ねぇよ♪」


うん、ウキウキなのね。

新しい《コシミノ》を購入できる喜びでルンルンなのね。

もう、目線は《コシミノ》を探して店内の端から端に忙しなく動いている。


「何か質問や、ご購入の商品が決まりました際にはお声がけください。」

再度服を畳み始めた売り子さんの背中を見つつ、私とエンガはお店に入った。


服を確認しつつも、グングン進んでいくエンガ。

【コレじゃない!俺が探しているのはコレじゃない!!】

とばかりに、グングンと歩き、店内を進む。

そしてたどり着いたのは男性用の下着コーナー。

メンズの下着が並ぶ、店の中でも奥の方に作られた、デリケートなコーナー。


そのコーナーを端から見つめ、調べていくエンガ。

そのエンガを見守る私。

どういう状況だよ、コレ。



そして私の耳に聞こえてくる、大きな声。


「あった!!一つだけどあったぞ!!ヤエ!!《コシミノ》あったぞ!!」


と、声高々に、嬉しそうに、戦利品を掲げるエンガ。

うん。

買うんだから手に取っても良いんだけどね、下着コーナーの中でも更に奥、云わば、キワモノ系の下着が置いてある場所にあった《コシミノ》を掲げて、私の名前を呼ぶのは止めてほしかったかなぁ。

【見つけ出したぞ!褒めて!】

みたいな表情してるけどね、売り子さん、商品落としてコッチをガン見してるし、

ガタンガタン!って大きな音を立てながら、店長さんらしき人がカウンターの奥から出てきて私を凝視してるからね。


「・・・エンガ、他の人の迷惑になるからね。大声は止めようね。」


「あ、おお、ごめん。」


ああああああああ!!!!

ショボーンってしないで!

コシミノを両手で持って、切なそうな顔しないで!!

尻尾下げてションボリしないでぇぇぇぇ!!

その顔、心臓が痛いから!!!!

もういいや!!

変態でも良いよ!!

全力で喜ぼう!エンガ!


「にしても、残ってて良かったね!!最後の一枚だったなんてラッキーだね!!」

精一杯、テンションを上げて言ってみる。


「んお?お、おお!最後の一枚だ!あって良かったなぁ。ヤエも嬉しいだろ?俺の一張羅!新品のコシミノ!」


「うん!嬉しいよ!帰ったら早速着てみようか!でも、これだけだと足りないから、普通のズボンなんかも買っていこうね!あっちにあるみたいだし!寝巻用の邪魔にならない、緩い感じのズボンも買っていこう!」


エンガのテンションが上がったところで、パジャマの棚へ誘導するように言葉をかける。

すると、この店の店長らしき中年太りのおっさんが近寄ってきた。

ヤバイ。

大きな声で騒ぎ過ぎたかもしれない。

冷や汗が背中をつたう中、店長が口を開いた。


「あのー、お客様。そちらの商品はドエロい下着と同じなので、大声は控えたほうが宜しいかと。それとですね、《コシミノ》はこの一点が最後の品なのですが、他にもオススメがございまして、こちらの《獣シリーズ》。これなんか如何でしょうか?まず、こちら。ブラックウルフの革を使った短パンでして、着心地は抜群。動きやすく、慣れない方でも履きやすいノーマルタイプ、お連れ様の毛並みとの対比が美しいかと。こちらはビッググレイホースの革を使った巻きスカートタイプ。こちらは長い巻きスカートタイプなので、上級者向けになりますがホース特有の革の艶と、お連れ様の太ももの筋肉の張り、そして足首の細さが楽しめるかと。あと、こちらはレッドラビットの革を使った短いスカートタイプ、両サイドの大胆なスリットが堪らないと大評判の品です。下にはこちらのお揃いの革で出来たパンツを履いていただくとより一層、楽しめます。更にこちらは・・・・・。」


店長さんは何気ない表情で《コシミノ》を

【ドエロい下着】

と言い放ち、更には何故か、それに準ずる商品を猛プッシュしてきた。

どんどんと言葉が出てくる。

何だこいつ。

これらの商品を丸暗記してんの?

引くわ~。


そんでさ、エンガさん。

そんな変態チックな商品を凄くキラキラとした目で見つめないでもらえる?

何、【おお!すげぇ!こんな商品があんのか!!うおお!!】

みたいな目で見てるの?

買わないよ?

そんなの着せないからね?

普通のズボンで十分だからね?

それ以上、《セクシーエンガさん》のレベル上げる必要ないからね?

《コシミノ》はまだ笑える風だから我慢出来るけど、

そっちのはガチのやつだから。

そういう感じの性癖の人のやつだから。

ほら、ついには太ももの側面の布がほぼ無いズボンとか、両サイドを紐で結ぶような前と後ろを隠す布みたいな商品とか、褌みたいな商品まで出てきちゃったじゃない。

店長さんが心底嬉しそうに、嬉々としてエンガさんに説明してるけどさ、買わないからね?

エンガさん、まさか、欲しいんじゃないよね?

珍しいだけだよね?

ほら、もう帰ろうよ、コシミノは見つけたし。

私、お腹いっぱいだよ。


「ヤエ!俺はコレとコレとコレが良いんだが、ヤエはどれが良いんだ?どれが好きだ?」


ああ、私に話を振らないでほしかった。

店長さん、【もう一度説明しましょうか?】とか要らないから。

同志を見つけた的な笑顔でこっち見んな。そしてちょっと黙ってろ。


にしても、本当にこれ買うの?

さっき店長に【ドエロい下着】って言われたんだよ?

もう、コシミノ買うだけでも、精神的にダメージでかいのに。

ああ、うん。

買うよね~。買うしかないよね~。

そのワクワクしてる感じの顔、女の子がデートで可愛いワンピースを両手に持って、彼氏に【どっちがいいと思う?どっちが好き?】

なんて聞いてるのと同じ顔だよ。

今、私に差し出されてるのはオッサンが履く【ドエロい下着】だけどね。

思考の世界に逃げていた私だったけど、

【ん?】と首を傾げてつぶらな瞳でこっちを見てるエンガが可愛くて、

私が選べる選択肢は一つしかなかった。


「私はコレが好きかなぁ。そっちのも良いけど、全部形が似てるし、ちょっと趣向を変えてこんなのも良いと思うよ?でも、エンガならどれでも似合うよ。カッコイイし、可愛いし。」


吹っ切れたよ。

さり気無く、私の一押しをオススメしてやったよ。

そんな私の一言に、嬉しくなったのか


「おお!これがヤエの好みか!!じゃあ、それも買おう!あ、金大丈夫か?無理ならこっちの止めるぞ?ヤエが選んでくれた方を買うからな!安心してくれ!」

なんてニッコニコの笑顔が可愛いんだけど、貴方が握りしめてるの【ドエロい下着】だからね?


「お金は気にしなくて大丈夫だよ。思ってたよりも安いし、4着全部買えるから安心して。あと一応、普通の緩めのズボンと下着も何着か購入していこうね。」


「そうか!良かった!これで、俺の寝間着は完璧だな!」

と鼻息が荒いエンガさん。


「あの、そちらの商品をご購入でしたら、こんなパンツは如何ですか?先ほどのシリーズの下に履く、見せるパンツです。締め付けの少ない、楽な着心地で当店の一押し商品です。あと、こちらの両サイド紐タイプのパンツも・・・・」


おいぃぃぃぃぃ!!!!

お前はもう黙ってろって!

エンガに見せパン買わそうとすんな!

しかも紐パンまで持ってくんじゃねぇぇぇぇ!!

この変態がぁぁ!!!


「結びにくいから紐はいらねぇよ。でも、こっちのパンツはくれ!」


あ、はい。

買うんですね。

スパッツみたいな見せるパンツも追加で購入です。


その後、やっと普通のズボンも2着選び、お支払いをしました。

ええ、女性の売り子さんは近寄って来てはくれず、ニコニコ顔の店長さんにお会計をしていただきましたよ。

更には、獣シリーズの新作が入荷したら、1セットづつ取り置きしておいてくれるとか言われた。

エンガは嬉しそうにお礼を言っていたけど、私は引き攣る笑いしか出来なかった。


購入した商品をエンガの鞄にしまい、お店を後にした際に、頭を下げた店長さんからの

【またのご来店をお待ちしております!】

なんて元気いっぱいのお見送り、無かったことにしたい。



なんだかぐったりとするぐらい疲れてしまったけど、

次は《もしゃもしゃ草》を営業しなければ!

短い時間だけだけど、回復薬販売店として地盤を固めていかないと。


エンガと手を繋いで、2人で仲良く露店の方へと移動です。

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