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おはようございます!

皆さん、おっはよーございまーす!


なんでか朝早くから目がぱっちりと覚めちゃいました、ヤエです。

二度寝しようかと思ったのですが、全然寝れない。

なので、朝も早くからお料理開始です!


エンガに持たせるパンの種類を増やそうと思います。

人前で食べるのはジャムを付けたパンにするにしても、

人が見てない家の中とか旅の途中とかなら

《時間停止カバン》を使えるので、出来立て熱々の調理パンを作り、持たせてあげようと思います。


あと、ハムとベーコンと腸詰じゃないソーセージ。

これらを魔法をフル活用して時間を進めつつ、塩漬けやら燻製にしてく。

燻製に使うのはリンゴの木を細かくしたもの。

ソーセージは腸詰なんて出来ないからラップを使用。


なんでラップがあるんだって思った、そこのあなた。

私はチートの持ち主だよ?

この家を作った時を思い出してごらん。

エアコンも洗濯機も冷蔵庫も勝手についてたんだから。

なんでかは分からないけど。

どうやって出来たのかは分からないけど。

ついでに言うと、なんでカメラが無いの?

って思ったでしょう?

私もだよ。

なんでカメラもビデオも無いんだよ!!!

素敵エンガを残せないじゃない!!

って思ったよ。

でも、無いのよ。

多分、自分で買ったことも所有したことも無いからかもしれない。

それと、構造とか分からなすぎるから作れないのかも。

これは色々と検証してみるべきですかね。

冷蔵庫は《冷やして保存する箱》で、欲しかったやつがそのまま。

エアコンは《温度を感知して温風や冷風を送る箱》で、欲しかったやつがそのまま。

ラップは《薄いビニールのシートで器の蓋として使う》いつものメーカーのやつ。

カメラは《なんでか分からないけど、写る箱》持ってないし、コレ!と言うものが想像できない。

これらがカメラが無い理由かもしれない。

しかも、ラップやトイレットペーパーなんかの消耗品はいつも間にか元の量に戻っているっていうね。

私のチートのなせる業なのか、神様からのご褒美なのかは分からないけど。



ああ、話がそれましたが、何となくで作ったんだけど、料理は全部上手くいったと思う。

ただ、消費期限とかは全く分からないので、腐るのを防ぐためにも、これらは即《時間停止カバン》行きでございます。


パンもドライフルーツを入れたものや、ナッツ類を入れたもの、ソーセージを巻いた物やピザパンも用意。

更には、コッペパンと食パンを量産して、サンドイッチやらコロッケパン、ホットドック、エビカツパン、メンチカツパンなどの調理パンも用意。


したところで、朝ごはんの準備をしていないことに気付きました。

やべぇ・・・。

朝ごはん・・・・。

用意してねぇ!!!!!

ああああ!

オムライスにしよう!

ご飯は炊いてあるし、卵もあるし。

鶏肉は無いから、ベーコンを角切りにして入れてあげよう。そうしよう。

野菜たっぷりのスープとエビの載ったシーフードサラダ。

厚切りハムのステーキもつければエンガも大満足でしょう。

そうと決まれば急げぇぇぇ!

お腹が空いてるエンガを待たせるなんて言語道断だからね!

エンガが起きる前にご飯を用意しないと!


と、朝から頑張りました。

もう、この時点で疲れたよ。

燃え尽きた・・・・。

朝ごはんの時間には少し遅い気もするけど、エンガが起きてきてないからOKでしょう。

では、そろそろエンガを起こしに行きましょうかね。

どんな寝姿なのかなぁ。

朝までお布団はかけてる派かな?

暑くて除けちゃう派?

寝相はどんなんだろう?

いびきとかどうなのかな?

むふふふふっ♪

何かドキドキしてきたっ!

それっ!突撃!隣のお部屋のエンガさん!

とドアに手をかけた瞬間、


「おう!おはよう!ヤエ!今日も良い匂いだな!」

とエンガがご機嫌に入ってきた。


って、やっちまったー!

最大のチャンスを逃したよ私!


「お、おはよう、エンガ。うん・・、うん、朝ごはん、出来てるよ。」

うん、大丈夫、一緒に住んでるんだもの。

チャンスはまだあるはずだよ!

可愛い寝起きのエンガを見てみたい。

枕を抱っこして寝てたりしたら最高に可愛いんだけど。


なんて妄想を爆発させていると、エンガが声を上げた。


「うおっ!んだコレ!ヤエ!コレなんだ?!黄色いけど、食いもんか?ん?んだ?文字か?・・エ・・ン・・ガ、だな。エ、ン、ガ。・・・俺の名前?

ヤエ!コレ、俺の名前が書いてあるぞ!エ、ン、ガ!ほら!」

とお皿を片手に文字を1つづつ指さして、嬉しそうに解説を始めたエンガ。


うんうん。

喜んでもらえて良かった。

実は昨日、計算のお勉強の前にエンガと私の名前の書き方だけは教えておいたのだ。

この世界と私の世界のカタカナ文字が同じだったから可能だったんだけど、名前を知っておくのは大切だからね。

だから、オムライスの上にケチャップで《エンガ》と名前を書いておいたのだ。

そしたらもう、想像以上に大喜び!

まるで、お子様ランチの旗を振り回しながら歓喜する子供みたいでかぁわいい~♪


なんて、微笑ましく見つめていると、

エンガにギュッと抱きしめられた。


「すんげぇ嬉しい!ありがとうな!ヤエは俺を喜ばせる天才だな!」

と満面の笑顔で言われました。


うん。

可愛いです。

そして、逞しい胸筋が目の前。

ぎゅーってされてるので、良いよね?

私もギューってしちゃうもんね!


「喜んでくれて良かった!自分の名前の書いてあるオムライスって幸せを運んでくれる気がするから好きなの。今日、一日がエンガにとって素敵な日になるように祈りを込めて書いたからね。今日は良い日になると思うよ!」

とギューってしながらエンガに語りかける。


すると、


「そうか・・・。俺の幸せを願って・・・。そうか・・・。うん。ありがとう、ヤエ。俺も、ヤエのおむなんちゃらにヤエの名前書きてぇ。」

とエンガが感動したかの様に、しんみりしながら言う。


「本当に?じゃあ、私の分はエンガにお願い!」

と私のオムライスを差し出しながら、ケチャップを手渡してあげる。


エンガは真剣な顔で私の名前

《ヤエ》

という二文字を黄色いオムライスの上に書いていく。


エンガなら私のオムライスに私の名前を書きたいって言うと思って、私のオムライスにはまだ何も書いていなかったのだ。


ゆっくり慎重に書いていくエンガ。


うん。

ヤエがヤ土になってるね。

なので、


「エンガ、エは上を伸ばさないの。ここはなし。スプーンで薄くのばしてくれる?」

とお願いする。


「んあ?・・・・あっ!・・わりぃ。んと、ここを、スプーンでにょーんとすれば・・・。」

と間違いに気づき、独り言のようにスプーンで作業するエンガ。


ん?

スプーンでにょーん?

にょーん?

ん?

なに、その可愛い擬音。

スプーンでにょーんってのばすの?

え?

なにその可愛いの。

真剣な顔で、にょーんって言いながらのばすの?

可愛いなおい。


ねえ、オッサン獣人が真剣な顔でにょーんとか、こんなに可愛い事を言っていいと思ってるんですか?

襲われても文句言えないよ!?

鼻血出しても私のせいじゃないからね!?

可愛すぎて、変な輩に狙われたり、ボンキュッボンのお姉様方から狙われても文句言えないよ!!

分かってる!?

可愛すぎるのは罪だよ!もう!

まあ、私以外の人間が近づこうとするなら、すべて排除してやるけどね。

マイダーリンの可愛さは全て私のなんだから---!!


と、一人で脳内ツッコミを入れていると


「出来たぞ!うら!《ヤエ》だ!フフン♪」

とオムライスをこちらに向けて、ドヤ顔のエンガ。


フフン♪

でのドヤ顔、ごちそうさまです。

もう、お腹いっぱいです。


「ありがとうエンガ!上手に書けてる!このオムライスを食べれば、私も今日は一日、幸せな日になるね!エンガが書いてくれただけで、もう凄く幸せだけど!」

と喜んだ私を見て、エンガはフフン♪と更に胸を張ってドヤ顔なさってました。

クソ可愛い。


一通りエンガを褒めたら、一緒にオムライスを食べます。

スプーンで、名前のところを少し残念そうにすくっていくエンガは可愛かったです。

でも、味が気に入ったのか、スプーン片手にモグモグしながら、何回も

【うめぇ!】と言ってくれて、

本当に作って良かった。


エンガは何でも美味しそうに食べてくれるし、ジェスチャーと擬音だらけでも感想もちゃんと言ってくれるから嬉しい。作り甲斐がある。


そんなエンガに朝作った調理パンを持たせようとしたら、

【うまそうだな・・・。1個づつ味見しちゃダメか?】

とか、首をかしげながら聞かれた。


即座に許可した私は間違ってない。

皆もあれでしょ?

獣人オッサンが小首かしげながら、

【ダメか?】

なんて聞いてきたら、有り金全部渡すでしょ?

それと同じだよ。

大丈夫。私、間違ってない。正常。正常。

今日のヤエも通常運転です。


そんな幸せな朝食を終えて、今日もお出かけです。


まず、《ニールの店》で武器や防具の購入。

旅に必要なものも揃えないと。

それに、冒険者ギルドで《もしゃもしゃ草》の店員の募集。

後は、《もしゃもしゃ草》を少しの間、開店させて、

サユさんのところに行って奴隷についての知識を仕入れて、昨日お世話になった【髪紐の男性】と【魚屋のオッサン】と【肉屋の夫婦】にジャムをプレゼントして・・・・。

あ、後はコシミノの購入ね。

エプロンの布も買ってこないと。

お洋服もエンガの好みのを仕入れないと。

取りあえず、今日はこの計画で行こう。


エンガにもちゃんと相談して順番を決めて、今日の予定は決定。


2人でお出かけの準備をしていると


「ヤエ、あのよ、その、その髪紐、結びなおしてやるからよ、俺の首に巻いてる髪紐も結びなおしてくんねぇか?」

とエンガからお願いがあった。


状態保存やらの魔法がかけてあるので、崩れたりはしてないんだけど、気分の問題なのかな?

髪紐をお互いに結び合ってからの外出って気合入るのかも。

私としては、お互いを縛って束縛してるみたいで嬉しい。

なんて考えちゃう。結構、マニアックなのかも。


「もちろん良いよ♪先にエンガのを結ぼうね。おいで、エンガ。」

と手招きしてあげると

軽い足取りで目の前まで来たエンガは、髪紐を私の手に持たせて、首を差し出してくる。

首の周りを撫でて毛並みを整えてあげてから、髪紐でゆったりと結んであげる。

昨日と同じ、胸元に垂れ下がる蝶々結びの出来上がりだ。

エンガは笑顔でお礼を言った後、私の髪紐を結んでくれた。

ほどけないように、汚れないように、保存の魔法をかけて出来上がり。


そして、今日も2人でお出かけです。

勿論、仲良く手を繋いで。

エンガはルンルン♪

私もルンルン♪

今日も最高のデートに出発だー!!


行く道行く道で話し声が聞こえる。

【あの二人、やっぱりこの街に住んでるのね】

【そうみたい。でも、何の被害もないし良いんじゃない?】

【そうね。獣人だけど、穏やかな感じだって聞いたし】

【手を繋いで歩いてる獣人なんて初めて見たぞ。】

【女の子の片思いなんだろ?応援しちゃうよなぁ】

【それな。蓼食う虫も好き好きだよな】

【女の子が貢いでるらしいぞ】

【あの獣人を好き過ぎてでしょう?聞いたわよ。】

【嬉しそうになんでも買ってあげるって話よ】

と様々な会話が聞こえる。


うん。

まあ、そこまで不快な物はないね。

皆の目線も緩いし。

多分、ネリー達がそれとなく穏やかとか言って広めてくれたのかもしれない。

助かる。ありがたいなぁ。


でもさ、この【私の片思い】説を大々的に広めやがった奴は許さん。

その喧嘩買ってやるぞぉぉぉ!!

どう考えても相思相愛でしょう?!

エンガも私にラブでしょう?

そうでしょう?

ねぇ?

そうだよね?

え?

そうだよね?

・・・・。

きっとそうだよ、うん。

あれ、なんだか自信がなくなってきたんだけど。

片思いの子が好きな男に振り向いてほしくて、貢いじゃってるのよねぇ。

みたいな生暖かい目で私を見るの止めてもらっていいですか?

ねえ、その可哀想な子みたいな扱い、止めてもらっていいですか?


複雑な心境ではあるが、エンガにとっては問題ないので、このまま素通りさせていただこうと思います。

2人で仲良く、目指すのは《ニールの店》。


______________________


やって来ました、《ニールの店》

あー。

なんて言うか、冒険者が来るところだなって感じの店です。

外にも武器が並べてあるし、多分、店内の奥にでも鍛冶場があるのだろう。

カンカンと金属を叩く音が聞こえる。

どんな店員が出てくるか分からないので緊張する。

ハズレじゃないといいなぁ。と思いつつ

エンガと顔を見合わせて頷き、手を握りなおし、店内に入る。


金髪のチャラチャラしてるアホ面が出てきた。


「あ~いらっしゃ~せ~・・・・・マジかよ、獣人じゃん。しかもフルフェイスとか、超レアもの。うわ~マジかよ。俺、獣人嫌いなんすけど。」


アホだった。


「私はお前が嫌いだ。黙ってろボケナス。チェンジで。チェ~ン~ジ~でぇぇぇぇ!!!!!!店長ぉー!!チェンジでぇぇぇ!!!!!」

私は即座に叫んだ。

出来る限りの大音量で。


それに焦ったのはチャラい店員。


「ちょ、何言ってんすか!大きな声出さないでくださいよ!店主めっちゃ怖いんすから!っつーか、買うのがアンタなら問題ねーすよ。獣人じゃなきゃ平気。なんにします?」


「黙れっつったろうが。見りゃ分かるでしょう?私のパートナーに馬鹿みたいなこと言いやがって。私はお前から買う気は無い。お前が嫌いだ。下がれ。失せろ。」


エンガは呆気に取られてるけど、言い返す。

この店で買うのを止めても良いんだけど、もし、この街に武器屋がここしかなかったら面倒なことになる。

隣町まで装備無しの状態で買いに行かないといけなくなるし、その道中でエンガがケガをしたりしたら困る。

なので、店主さんで判断することにする。


「何騒いでんだ、おめぇ。」

と現れたのはガチムチ、背の低いオッサン。

片手にはハンマーを持ってるところを見ると、鍛冶職人さんでもあるんだろう。


「あ、初めまして。私はこのお店で武器や旅の必需品を購入させてもらおうと思って参ったのですが、この店員さんが、突然、私のパートナーを侮辱しやがりまして。こんな人間から商品を購入するのは死んでも嫌なので、店主さんが対応してくださいませんか?」

と経緯を説明して、お願いしてみる。


「あ?・・・・。このクソガキが。てめぇはまともに店番も出来ねぇのか。後で覚えとけよ?嬢ちゃん、俺の店は人種は問わねぇ。買って大事に使うんなら全部客だ。だがな、武器を粗末に扱う輩には売る気はねぇ。いいな?」

と店主さんは店員を一睨みした後、こちらに語りかけてきた。

それに返事をしようとしたところ


「ああ、分かってる。武器は自分の命を任せるもんだ。粗末になんて扱わねぇ。自分の手足として扱うんだ、ちゃんと手入れもするし、鍛錬も積む。」

と語ったのはエンガだった。


その言葉を聞いて、店主は一つ頷き


「何を買いに来たんだ?俺が見繕ってやる。」

と聞いてくれた。


これは武器を売る客だって認められたって事だよね。

流石、エンガ。


「ありがとうございます。金額に上限は付けないので、私と私のパートナーに武器、防具、旅に必要な物なんかを選んでいただいても良いですか?」


「おう。まずはそっちのでっけぇのからだな。サイズがでけぇのはこっちだ。来い。」

と先頭を歩いて誘導してくれる店主。


そしてついた先には、沢山の武器と鎧、マント、ランプや毛布なんかの野営の装備品。

確かに、店先で見たものよりもサイズが大きい。

並んでるのを見るだけで圧倒される。


店主は振り返り、


「あんちゃん、おめぇの希望の武器はあるか?弓、剣、槍、斧、扱ってきたもんとか、使いてぇもんがあるんなら教えろ。防具は革の鎧を勧めるぜ。獣人は動きが軽くて柔軟性に優れてるのが特徴だからな。下手な甲冑なんか着て動けずに死ぬなんて馬鹿すんなよ。」

とエンガに問う。


「使ってきた武器は特にねぇ。剣と弓はガキの頃に使ってたな。あんたのオススメの武器はなんだ?俺が使えそうなやつ、分かるか?鎧は革にする。選んでくれ。あ、あと解体用のナイフも欲しい。」

エンガは自分の希望を伝えていく。


店主は少し悩んだそぶりでエンガの身体を前後、足、腕と確認しながら眺めた後、


「革の鎧ならこっちかこっちだ。性能は右が幾分か上だが値段も右が上だ。ナイフはあっちに纏めてあるから握りやすいのを好きに選べ。武器は・・・・。弓は背負えばそんなに邪魔にはならねぇから適当に背負っとけ。獣人なら目も良いだろう。遠くの獲物を仕留めるのには弓で瞬殺が一番だからな。獣人の筋力ならこの強弓を勧める。主力じゃなくて臨機応変に使え。あとは・・・、そうだな。剣なら大振りなのが良いだろうな。斧も有りだが、両手がふさがっても平気かどうかだな。獣人は筋力があるからな、重い斧なんかに体重を乗せて使えばかなり強いぜ。・・・・けど、俺がお前に勧めるのはコレだ。」


と選んだ品を近くの机に置きながら説明し、最後に指さした先にあったのは大きな布を被った長い何か。

店主がそれに近づき、布を取ると・・・。

出てきたのは大きな槍だった。


これ、私が知ってる普通の槍ではない。

エンガの太っとい二の腕ぐらいの太さの長い棒の先に鋭い刃が付いてる。

どう考えても一般人には手が回らない。

エンガくらい手が大きい種じゃないと無理だ。

これって、獣人の為に作られたの?

そう思える位、異常な形状だった。


「・・・・。持ってみても良いか?」

槍を凝視していたエンガが店主に問う。


「構わねぇぜ。・・・持ち上がればいいけどな。うちのアホ共は引きずることも出来ねぇ。気ぃつけろよ。」

エンガに許可と忠告をした店主だったが、その言葉を聞いた次の瞬間、


エンガは槍を持ち上げていた。


両手で持ち上げて、片手で握りなおし、高く持ち上げてみせる。


「すまん。少し振っても良いか?ヤエ、そっちに離れてくれ。絶対にぶつからないようにな。」

そう店主に聞いて許可を得たエンガ。

多分、コレで決まりだ。


両手でブンブンと異様な音をさせながら振り回し、片手でグルングルンと振り回し、終いには回転させたまま上に放り上げ、片手でキャッチ。そのまま切りつける。

その一連の動作を何の淀みも無くこなしていく。

動くたびに風が舞うし、ブンブンと低音が響き渡る。

店主は驚いた顔をしていたが、エンガの目は煌いていた。

自分に合った武器を手にした喜びだろうけど、初めてのおもちゃを手に入れた子供の様な、そんなキラキラとした目をしていた。


「コレが良い。こいつにする。ヤエ、こいつ、買っても良いか?もし高ぇんなら、弓とナイフと鎧は今度で良い。コレ、買ってくれ。」

そう言ってくるエンガ。


「当然。エンガが気に入って、ちゃんと使えるんならそれに決定。それと、革鎧と弓とナイフも購入決定。命にかかわるんだから、ケチらないでちゃんとしたの買うよ。革鎧は右のね。」

命を預ける武器と防具なんだから、良いものを買わないと。

お金はあるんだから、使うべきところで使わないなんて問題外だ。


「お、おう。ありがとうヤエ。俺、この槍大切にする。この槍で護るからな。ヤエに傷一つ付かねぇように護るから。安心して俺の後ろにいてくれ。」

なんて照れながら言ってくるオッサン、クソ可愛い。


貴方は一体、一日に何回、私の心を揺さぶるのでしょうか。

今なら、女の子になんでも買ってあげちゃう貢ぐ君の気持ちが分かるよ。

札束出すわ。普通に。

この天然小悪魔ちゃんめ。

なんて二人で見つめあっていると、店主が居た堪れなくなったのか声をかけてきた。


「コホン、ああ、次は嬢ちゃんのだな。マントや毛布と雑貨はあっちで最後に選べ。」

と声だけかけて先を歩いていく。


私とエンガは急いでその後ろをついて行った。

そしてさっきとは比べ物にならないくらい、小さな棚の前で


「あー、申し訳ねぇんだがな、女物は少ねぇんだ。女は自分の身を護る最低限の短剣やら弓くらいで回復職やら盗賊、魔法使い、弓使いなんかがほとんどだからな。うちは鍛冶屋の武器屋だからな。でけぇ剣やら斧がメインで扱ってんだ。その辺の細身の剣やら短剣なんかは自信作だけどよ。わりぃな。」

と頭を掻きながら、説明をしてくれた店主。


なるほど。

鍛冶屋のご主人が作ったものをメインに扱ってるから、武器に関しては大物が多いって事ね。

取りあえず、簡単な魔法を使いつつ戦う方向で行こうと思う。

弓は使ったことないし、エンガに当たるかもしれないから却下。

大振りの剣や斧や槍も自分やエンガに当てそうだから却下。

細身の剣と短剣の2本だけ下げておこうかな。


「私にも扱えそうな剣と短剣を選んでいただけますか?」

店主に聞いてみる。


「ああ、構わねぇぜ。まず、そっちの持ってみろ。あー、次はこっちだ・・・・・・・」



そして無事に私の武器も決定。

シンプルイズベスト!

って感じの作品。

飾りも何もない剣なんだけど、握りやすくて手にフィットする感じで良さげです。


店主さんにはお礼を言って、他の品が決まり次第、お会計に出てきていただくことになりました。

あの店員からは買いたくないのでね。


エンガと二人で野営用の毛布やらテント、ランプや保温効果の高いコップやスープ皿なんかを選んでいきます。


最後に選んだのは外套。

雨でも大丈夫な様に、厚手で丈夫、水を弾く素材で出来ている物。

エンガとお揃いでサイズ違いの深緑。

フードも付いていて、これで雨の日も安心して歩ける。


全ての品を選び終えて、カウンターに戻る私とエンガ。

そこにはアホ店員がいやがった。


「あ、さっきの!獣人と嫌な奴じゃないっすか!なんすか、会計っすか?」

と眉間に皺を寄せたアホ店員。


嫌な奴はお前の方じゃ!

と言うわけで、


「店主さーん!買い物終わりましたー!お会計お願いしまーす!」

即座に店主さんを召喚。


「はぁっ!?ちょ、待ってくださいよ!店主は忙しい人で、こんな事で呼ばれたら俺が怒られる・・・」


「おお、待たせたな。全部決まったのか?おお、おめぇ、あっち行ってろ。客が逃げる。」

と店員を追い払う店主さん。


店員さんはもだもだと文句を言っていたが、店主さんの睨みに走って去っていった。


「わりぃな。で、会計だな?・・・・こんなに沢山大丈夫か?全部、そこそこ良いもんだぞ?もっと安いのから始めても良いんじゃねぇのか?」

店主さんはお金の心配をしてくれているらしい。


「あ、大丈夫です。安全はお金に換えられませんから。自分の命を守る為に支払う金額だと思えば、安いですよ。お金もちゃんと持ってますから安心してください。」


そう言うと納得したようで、そのままお会計を済ませてくれた。

更に、


「沢山買ったオマケだ。これも持ってけ。野外で使う用の砥石だ。切れ味が悪くなったらコレで研げ。んで、帰ったらすぐに修理に出せ。いいな。鈍らのまま使うなよ?」

そう言って、オマケの砥石を差し出す店主さん。


「良いのか?助かる。ありがたく使わせてもらう。」

とエンガがお礼を言って受け取った。


そして、私たちは無事に、

まあ、若干一名、嫌な奴もいたけど無事に買い物を済ませました。

店主さんはイイ人だった。

特に仲良くはならなかったけど、良いお付き合いが出来そうです。



ニールのお店を出て、次は冒険者ギルドで《もしゃもしゃ草》の店員の募集の依頼を出しましょう。


おててを繋いでレッツゴー!!

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