今後のために
お肉屋さんの
奥さんは【ネリー】
旦那さんは【コーザ】
と自己紹介していただいた。
しかも、全員で互いの名前は呼び捨てにする約束になった。
私だけ18歳の小娘で年下なんだけどね?
ネリーが、
「ヤエは仲良しな人間に《さん》を付けるのかい?あんたは慣れるまで敬語は取れなそうだから、そっちは暫く諦めるけど、名前くらい気軽に呼びな!」
するとコーザが
「そうだね。仲良しになったんだから。遠慮は無しでいこうね?」
と言ってくれたから、お言葉に甘える事にした。
ついでにとばかりにコーザが
「エンガ、良ければオークの解体を見ていくかい?エンガが解体を出来る様になれば、旅先で手に入れた時に解体してあげられるだろう?ヤエのためにも、覚えてみないかい?」
と思いもよらない提案をしてくれた。
エンガを見てみると、私の方をじっと見つめて
「ヤエ、この後も予定があるのは分かっているんだが、少し時間をずらしてもらっても良いか?俺は、解体を覚えておきたい。」
と。
素晴らしいねー。
私に合わせるだけじゃなくて、自分で決断するのも大事なことだと思うから、この意見は絶対に尊重すべきだ!
それに解体が出来る様になればすごく助かる。
「勿論。エンガがそうしたいと考えたならそうすべきだよ。それに、解体が出来る様になれば私もすごく助かる。」
ついでにもう一つ、やっておきたい事がある。
「エンガが解体を覚えている間に、私の用事を済ませてきても良い?宿屋のキャンセルをしてこないといけないんだけど、今日の予定に入れ忘れてたから。」
やっぱり、エンガは少し動揺したみたい。
目に不安の色が浮かんだ。
私を見つめるエンガ。
私もエンガから目を離さないで見つめる。
「ああ、分かった。俺はここで解体を教えてもらう。ヤエはヤエの用事を済ませてくれ。大丈夫だ。」
良かった!
エンガは私がすぐ側から居なくなる事に不安があるんだと思う。
でも、ここなら安全に安心してエンガを預けられるから、出来る時に
【別行動が出来る様にする】
事も大切だと思ったんだ。
多分、ほとんど離れないとは思うんだけど、狩りの途中で離れて精神的に不安定になられても困るからね。
今のエンガの世界は狭い。
私が中心と言っても過言じゃないと思う。
だから、今日みたいに少しずつ世界が広がって、安心できる人と居られる時には、私を抜いて、エンガ自身がその人との時間を過ごすのも大切だと思う。
「じゃあ、行ってくるね。エンガ、頑張ってね!」
「お、おう!覚えるの苦手だが、頑張るぞ!待ってるから、気を付けてな!」
って、
何で照れたの?エンガさん。
今のはどこがツボだったのか分からなかったよ?
まぁ【待ってる】が物凄く可愛いんだが、どうするよ?
マジで可愛いでしょ?うちのオッサン。
とと、いかんいかん。
さっさと行って、さっさと迎えに来よう。
あんな可愛いオッサン、放置出来ん。
一人で歩いてやっと到着しましたー。
宿屋の《踊るオヤジ》
早速、中のカウンターのおじ様に話しかけて、キャンセルしました。
キャンセルはしたけど突然の事だし、今後もしかしたらお世話になるかもなので、迷惑料として返金はお断りしといた。
そこで現れたのが、
《オークの漬け焼きセット》を譲ったおっさん!
「あ、この前の!漬け焼きの!あの時の礼に店教えるって言っただろ?聞きたい店がありゃあ、教えるぜ!?」
とな。ならば、
「冒険者の方々の御用達の武器屋、皮鎧なんかの装備品が置いてあるお店、教えていただけませんか?」
「ん?武器屋か?武器屋なら《ニールの店》が一番だな。値段は良いが、性能は値段以上だ。種類も豊富で、防具や装備品に至るまで、様々な物が置いてある。しかも、来店者に合わせてピッタリのサイズの物を選んでくれたりもするぜ!」
ほほう。
いいお店の情報を聞いた。
私は冒険者ギルドには行かないから、冒険者特有の情報は助かるねー。
「ありがとうございます。助かりました。後程行ってみることにします。」
「おう!じゃーな!また何かあったら聞いてくれや!」
有り難いが、次は無いなー。
あの手のオッサンは、エンガにどんな反応を示すか分からない。
エンガを傷つけるような反応をするなら敵だから、会わせるつもりは無いよー。
さてさて、愛しのエンガの元に帰りましょ~♪
スキップしちゃうのは見なかった事にして。
実は私もエンガから離れるのは不安なのだ。
私がいない間に
他の女にアプローチされてるかもしれない!
それに何より、エンガが居ないと、この世界に来た時より《独り》って感じが強い気がする。
私の世界もエンガを中心に回ってるからなぁ。
私自身も離れて大丈夫な様にしておかないと。後々困るだろうなぁ。
離れたくないんだけど。
さーて!
お肉の解体が終わったら、一度家に帰って、お昼ご飯を食べてから、商業ギルドと《リューカ堂》と《ニールの店》に行かねば!




