朝ごはん
バァァァァァン!
という大きな音が廊下に響いて
ドタドタと大きな足音が近づいてくる。
何事?
エンガは虎の獣人だから、軽やかな足音のはず。
結界を張っていたはずなのに、もしや泥棒かっ!?
椅子を持ち上げ臨戦態勢じゃ!
いつでもかかってこい!
と意気込むと同時に
バァァァン!!
と大きな音をたてて開く扉。
現れたのは
【マイダーリン】こと【エンガ】
凄く驚いた顔してるみたいだけど、
私のほうが驚いてるよ?エンガサン?
「おはよう?エンガ、どうしたの?嫌な夢でもみた?」
声をかけると崩れ落ち、その場に膝立ちの状態になって、私を抱き寄せるエンガ
「夢かと思った。ヤエに買ってもらえたのも、脚と目が治ったのも、風呂に入ったのも、飯をたらふく食えたのも。 ヤエに会えたのも。」
「夢かと思った。でも、脚も目も治ってるしよ、でかいベッドでふかふかの布団で寝てるしよ、空腹で腹が痛ぇなんてのも無くなってた。
けどよ・・・。ヤエがちゃんと居てくれてるのか、不安になったんだ」
なんて言われたらもう。
可愛くて、可愛くて、愛おしくてしょうがないんだよ、このオッサンは!
そして、実はさりげなくボディタッチが多いなエンガさん!?
朝から私を殺しにかかってるのか!?
落ち着け。落ち着け私。
今、私がすべきことは
エンガを抱きしめ返し、頭を撫でて、その毛並みと逞しい筋肉を堪能することでしょう。
そして
「おはよう。エンガ。夢じゃないよ。昨日も言ったけど、私はエンガを絶対に手放さないし、幸せに一生そばに居てもらうんだからね。だから、その幸せの第一歩として朝ごはんを一緒に食べよう?エンガのために朝から張り切って作ったんだから」
あ、ご飯の単語に耳と鼻がピクピク動いてて可愛いわ。
「そ、そうか、ありがとな。その、あのな、俺もヤエの傍に居てぇと思ってる。それと、お、おはよう。ヤエの作ってくれた飯、ヤエと食いたい」
寝起きで不安になって、考えるより先に本能で行動しちゃって、今になって恥ずかしくなってるんですか?
真っ赤ですよ?エンガさん?
目が泳いでますよ?エンガさん?
大丈夫です。
私の心のカメラに録画されてますから。
一生物ですよ。ご馳走様です。
そして2人で仲良く食べる朝食。
あっという間に無くなりました。
エンガは自分が沢山食べることを理解しているみたいで、私に何度も
【ちゃんと食べてるか?】
【これは食べたか?】
【こっちももっと食べて大丈夫だぞ】
と確認して食べてた。
昨日とは違って私も一緒にだったからだと思うんだけど、なんてゆうか、
《子供に先に食べさせるお父さん》
みたいだった。なんて私は認めない。絶対に。
私も少しは食べつつも、やっぱりほとんどエンガのお腹に収まった。
旨い!って言葉の連発だったから味的には問題なさそうだし
満足そうな顔してたから量的にもあんな感じでいいんだろうけど、
本当に良く食べる。
1食であの量なら、我が家のエンゲル係数ヤバイんでない?
作物を増やす以外にも、《特殊な木》を中心になんかお金を稼ぐ方法を考えたほうがいいかも。
満足そうな顔で、おヒゲにお米がついてるエンガも可愛いなぁ~
今日も一日、頑張らねば!




