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お家に帰る

【マイダーリン】と2人で夜の道を歩く。

私の家は宿からは遠いけど

さっきの奴隷販売所とは比較的近かったから、少し遠いけど歩けない距離じゃない。


変なヤツに絡まれるのを避けるために、大通りはやめて横道を歩く。

明るく騒がしい街から少しずつ遠ざかっていくと

2人の足音と優しい風の音が聞こえる。


話したいことはお互いに沢山あるんだろう。

でも、それは家について、ゆっくりしてからでいいと思う。


今は、お互いの体の温かさと預けられている体重だけで良い。




そして着きました。

我が家。

【マイダーリン】は当然結界への進入可能にしたし、幻覚魔法もかかんない様にしてあるよん。


うん。

驚いていました。

この歳で1人で一軒屋持ちって凄いらしい。

しかも、旬じゃない作物まであるし大量だしね。

やべぇ。知らんかった。


ってか、砂糖の木とか家の中を見たら腰抜かすんじゃね?


まぁ、腰を抜かしてでも此処に住まわせますけどね。

既に逃げ道は無いのだよ。



あ、本当に腰抜かした。


「見たことの無い物ばかりだ。何なんだ?どうなってる?世の中は此処まで進歩してるのか?」


とか言い出しちゃった。

そら、奴隷だから世間一般には疎いよね。

でも、此処は異常ですよ~。

取りあえず座って、座って。


「なんだかよく分からんが、先に挨拶をさせてもらいたい。

俺の名前は【エンガ】

見ての通り、支えがないと歩けない身体だ。

獣人特有の力強さも踏ん張りが利かないから発揮出来ねぇ。

片目だから遠くを見通す能力も半減だ。

身体は丈夫で、ある程度の傷は直ぐ治るが

馬鹿みたいに食う。

正直、俺はフルフェイスな上にマイナスばかりのオッサンだし、何にも良い所が無ぇ。

そんな俺でも、お嬢ちゃんが『買う』と言ってくれて本当に嬉しかった。

初めてだったからな。

だからこそ、

初めてこんな俺を受け入れてくれたお嬢ちゃん

だからこそ、俺はお嬢ちゃんの負担になりたくねぇ。

俺をダンジョンの囮に売ってくれ。

俺を買った金額には届かねぇが、びた銭にはなると思う。

本当に嬉しかった。

ありがとうな。お嬢ちゃん。」



ってさ、頬を染めながら、獣耳を下げながら、尻尾を私の足にまとわりつかせながら語る

悶絶級に可愛いオッサンをどうしろと?


え?

このままベッドに連れてく?

いやいや、まだ早いでしょ。

もう少し手順を踏まないと。


落ち着いて。落ち着いて。

落ち着いて。落ち着いて。


っよし。

私も心をさらけ出して正直に話そう。


「私は【ヤエ】

お嬢ちゃんじゃなくて【ヤエ】って呼んで。

言葉も硬くしなくていいから。貴方の言葉で喋って。

それと、誤解してるみたいだから私も本音で喋らせてもらうね。

私は奴隷が欲しかった訳じゃない。

【エンガ】と生きて行きたくて貴方を購入したの。

奴隷としてではなく、一生をエンガの傍でエンガと共に生きていくために。

これは私の自己満足。

私は18歳の小娘だし、お互いに不満も出てくるだろうけど、私はエンガを手放すつもりは無い。全力で【エンガ】を養うし、幸せにするつもり。だから私と一緒に生きてください。」



私の気持ちを言葉にしてみたけど、なんかプロポーズだよねこれ。

こっぱずかしー!!

私がこんな台詞を口にする日がこようとは!

と心の中で悶えていると



真っ赤になって

獣耳がせわしなく動いて

目がまん丸になって

尻尾が私を放さなくて

のどがゴロゴロ鳴ってる

エンガがいた。



エンガは戸惑いながらも


「良いのか?本当に、本当に役に立たないぞ。それに俺、獣人だしオッサンだし・・・」


その言葉をぶったぎって


「問題ありません。私なんて18歳の小娘、ただの異世界人ですから」

と爆弾を投下してみる。



・・・・・・・・・。

目を見開くエンガ。


「異世界人?そっか。だから俺を蔑まないし、こんなすげぇ家に住んでんのか。いやぁ、俺、初めて聞いたな。そっか。異世界人がいんのかぁ。」


ああ。

なんて素直で可愛らしいオッサンなんでしょう!!!

普通疑うでしょ?

なんで素直に信じてるのぉぉぉ!


嘘じゃないけど、こんなにあっさり信じてもらえると、何だか心が楽になった。

ずっと1人で抱えて生きていくんだと思っていたから。


でも、こんなに簡単に信じてくれるのは

【エンガ】

だからだと思う。

出会えたことに、神様に感謝だね。



「じゃぁ、これから此処に住んでもらうって事で良いよね?部屋も余ってるし。お風呂に入って食事もしなきゃね」


「その前に、1ついいか?本来なら奴隷は主人を名前で呼ぶことはねぇんだ。お嬢ちゃんじゃ駄目なのか?」


そりゃ勿論、


「駄目。だめ。ダメ。私は【お嬢ちゃん】じゃなくて【ヤエ】。エンガにはちゃんと私の名前を呼んで欲しいの。」


「分かった。それじゃあ、ヤエ。

買ってくれた事、改めてありがとう。これから世話になる。よろしくな。」


なんかさ、名前呼ばれるたびにキュンキュンしそうなんですが///


「と、その前に、怪我を治そう。エンガ、腕と目に触るけどいい?」


「は?いや、触るのはかまわないけど、治すってどうやって?無理だろ?」


「異世界人には出来るんだよ。」


とチート魔法で治してしまいました。


「嘘・・だろ・・・?

目が、見え、る

あし、脚が生えた・・・。

俺の脚、俺の脚がある!!!

歩ける!見てくれ!歩ける!

ヤエ、見てくれ、跳んでもなんともねぇ!

ヤエ、ヤエ、ヤエ、見てくれ

目が・両方の目でお前を見れる!

脚が、お前を抱えて走れる、跳べる!

ヤエ、ヤエ、ヤエ、


ありがとう

あでぃがどぉ~」


膝をついてボロボロと涙を流しながら何度も何度もお礼を言うエンガが愛おしくて。


私はただただ、エンガの頭を胸に抱えて

微笑みながら、頭をなでながら

「エンガが嬉しいと私も嬉しい。

エンガが幸せなら私も幸せだよ」

と甘い甘い言葉を口にするのでした。

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