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自作小説倶楽部 第10冊/2015年上半期(第55-60集)  作者: 自作小説倶楽部
第55集(2015年01月)/「成人式」&「車」
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02 ぼうぼう 著  成人式 『大人の成人式』

   成人式 『大人の成人式』

.

 いつものラーメン屋で、いつもの一杯をすすっていた。一日の疲れをここでリセットする。もう二十年の習慣だが、ちょっと胃に重く感じるようになってきたのは気のせいではなく、年のせいだ。

 今日は俺の成人式だ。ちょうど店内のテレビからのニュースも成人式をとりあげていた。目の端に画面が映り込む。インタビューを受けていたスーツ姿の男性の声が俺の心を突き刺す。

「社会に出て、家族ができ、家を建て責任感を今日改めて感じました」

 次に答えた女性は訪問着だ。

「今、子育てと仕事でいっぱいいっぱいですが、二十年ぶりの同窓会で気分転換するのが楽しみです」

 振袖姿がちらほら見えるが、画面は彼女たちを執拗に追うことはない。

.

 俺の所にも招待状は来ていたが、即ゴミ箱に突っ込んだ。成人式は今は人生の勝ち組のための式になっているからだ。成人式が四十歳に変更になってどれくらいたつだろうか。今では二十歳の成人式は昔話なのだ。

 大人になりきれない大人、精神年齢が低い成人へのアンチテーゼが成人式を四十歳に引き上げた。結果、二十歳で成人式を行っていた時代には考えられぬほど、同級生の社会的地位はバラバラで、今では「社会的成功者のための式」となっている。

 出世の足掛かりもつかめずここまできた俺が、のこのこ出席できる式ではないし、出たくもない。それでも、俺は、今日成人したのだ。ラーメンをすすりながら心の中でつぶやいた。

「おめでとう、俺」

.

そして、思う。今から俺は巻き返す。人生はまだ折り返しだ。四十歳の成人式は人生の二番目のスタートラインだ。俺の逆襲はこれからだ。今までだって人生、想定外だらけだった。これから、俺が想定外に成功する可能性を誰が否定できようか。

 俺は、八十歳の成人式を独りでもやる。生きて八十歳で成人式をやってやるんだ。俺は立ち上がった。

「ごちそうさん」

店の外は寒い風が吹いていた。でも俺はわかる。やがて春はやってくる。


(おわり)


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