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進化

「こ、これは……」

 俺は、あの謎の球体を手に取り、鑑定をした結果、その球体の正体に言葉を失った。


『魔力:3』

『攻撃力:3850』

『防御力:2743』

『俊敏力:4211』

『魔攻撃:1』

『魔防御:1456』

『運:0』

『魅力:10』


 それぞれの玉を鑑定した結果がこれだ。

 つまり、これらの玉が意味する事は……

「……あのクレバーモンキーのステータスか?」

 完全解体は、ステータスすら解体して残すらしい。とんでもないな。

 てか魔力低っ!魔攻撃も俺と同等!?

 運がゼロなのは……俺の腋臭で死ぬくらいだもんなぁ。あながち間違いじゃないかも。

 魅力に至っては俺より上なんですね。魅力が猿以下の俺って……。あ、あれ?目から体液が……。汗とは決して言わない!

「うわぁ……これどうすりゃいいの?」

 恐らく、これらのステータスを自分のモノに出来るんだろうけど、なんと言うか……スキルを習得した時以上に扱えなさそうだ。

 そんな事を目の前の球体に思っていると、なんかもう慣れてきた激しい光を放ち、再び俺の体内へと入っていく。

 すると、あのスキルを習得した時等に流れる声が頭に響いた。

『ステータスの追加が確認されました。1000を超えるステータスは、その数字を10分の1に落とし、追加されます』

 つまり、あの馬鹿げた攻撃力は全て俺のモノになる訳ではないと……。攻撃力は380、防御力は274といった感じかな?

「……まあいきなりとんでもない力を手に入れてもなぁ……」

 そう思っていたからこそ、逆に全てが手に入らなかった事にホッとしていた。

 いきなりあのクレバーモンキーの様な素早さや、力を手に入れても使いどころに困る訳だし。

「……全部のドロップアイテムを回収してからステータスを確認するか」

 そして最後に残ったのは、一つの宝箱だった。

 そんなに大きいモノでは無く、両掌に収まるサイズだ。

「……鍵穴とかないからすぐに開けられそうだけど……何が入ってるんだ?」

 宝箱なので、好奇心をなにやら刺激される。

「……よし!」

 俺は意を決し、宝箱を開けた。

 宝箱を開け、中に入っていた物は一つの鎖と何かが入っている袋だった。

「なんだ?この鎖……」

 鎖を手に取り持ちあげてみる。

 大きさとしては、アクセサリーとして、ズボンなどに装着するチェーン程度の長さしかない。

「うーん……本当にただのアクセサリーっぽいな」

 まあ何もせずに考え続けても分かる訳も無いので、俺はすぐに鑑定をした。


『賢猿の鎖』……ズボンなどのベルト通しに装着する希少レア級装備品。装着すると、フィールド上でのレアイテム採取率がアップする。


「おお!」

 これは凄いぞ!完全解体で手に入ったレアアイテムと言ったところか?

 それにしても、効果が素晴らしいな!完全解体で倒した相手から確実にレアドロップアイテムを回収できたとしても、フィールドでレアアイテムを回収できる確率は低いわけだからな!

「それにしても……この希少級装備品とやらの『希少』の部分がレア度でも表わしているのだろうか?」

 なんかスキル『鑑定』の効果が説明されている時にもレア度って書いてあったなぁ。結局まだ神から貰った異世界の知識も確認してないし。

「普通レアアイテムとかって運が高い奴が手に入るんだろうけど、俺は関係無いのか?」

 なら何で俺の運はゼロなんだろうか?今までの俺の生い立ちとかからか?それとも見た目の結果から?

 まあ確かに死にかけたり、鑑定した結果全てがバッドステータスになるモノばかりだったというのもあったから、運がゼロと言うのも間違いじゃない……のか?

「まあ何でもいいや。それで、この袋の中身は?」

 俺は早速手に入れた鎖を装備してみた後、今度は宝箱に鎖と一緒に入っていた袋を取り出す。

 かた手のひらに収まるサイズだが、何だかズッシリとくる。

「何が入ってるんだ?」

 中身を確認すると――――

「……硬貨?」

 袋の中には、見た事も無いコインが入っていた。

「なんだ?……銀色の硬貨が3枚と、金色の硬貨が5枚……それに、銀より薄い色をしてるけど……白金色?の硬貨が1枚……」

 これ……この世界の金か?

 う、うーん……価値が分からんから何とも言えない。それに、今の俺の居る場所じゃ金なんていくらあっても意味ないし……。

 まあ硬貨の価値は、神から貰った異世界の知識にかかれてるだろう。そう信じる事にした。

「さてと……一応全部のドロップアイテムを回収し終えた訳なんだけど……」

 ……レベルアップとかってねぇの?

 確かに倒し方は酷かったけども!でも一応レベル120の相手だぞ!?レベルが一気に上がってもいいと思うんだ!

「おかしいな……絶対にレベルが上がる筈なんだけど……」

 首を傾げ、そう呟いた時だった。

『大量の経験値を得た事を確認しました。これより進化を行います』

「はい?」

 いきなり頭の中を流れてきた言葉に首を捻っていると――――

「んん!?あ、頭がッ……!」

 突然頭に凄まじい激痛が走った。

「いてぇぇぇぇぇぇええええええ!何なの!?え、いきなり何!?ってマジで痛いんだけど!?」

 頭がかち割れそうな程の激痛が襲いかかって来る。

 俺は思わず、頭を抱えた状態で地面をのた打ち回る。

「あがががががががががッ!!」

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い!マジで何!?

 あまりの痛さに冷静に物事を考えられないでいると、突然変な音が聞こえた。

 バキバキバキッ!

「何の音!?ってイテテテテテテッ!」

 嫌な予感しかしないっ!だって今の音確実に俺の頭から聞こえてきたよ!?

 凄まじい痛みに悶えていると、唐突にその痛みは綺麗に無くなった。

「イテテテテッ!……あ、あれ?」

 急に痛みが引いた事に首を傾げる。

「い、一体何が――――」

 そこまで言いかけた俺だが、今度は顔に凄まじい激痛が走った。

「うごおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 本当に何なの!?物凄く痛いよ!?

 俺は顔を両手で押さえ、再び地面をのた打ち回る。

 グキバキグキャ。

「鳴ってる!顔から出ちゃいけない音が鳴ってるよ!?」

 何が起きてるの!?とにかく凄く痛いんですけど!?

「うがあああああああああっ!……ん、ん?」

 再び唐突に痛みが引いて行った。

「ほ、本当に何が――――」

 今度は体に激痛が走った。

「もう嫌あああああああああ!」

 グキグキバキグキャベキャ!

「ほ、骨がああああああっ!肉があああああっ!」

 誰か!誰か助けて!ヘルプ!ヘェェェェエエエエルプッ!

 一体俺の体に何が起こってんの!?凄まじい痛みなんですけど!?普通じゃねぇぞ、この状況!

「も、もう嫌だぁ……!」

 俺は体を押さえ、地面を転がりながら思わずそう呟いた。

 それに、普通許容範囲を超える痛みを受けたら気絶すると思うんだけど、全然気絶出来る気配が無い。

 延々とこの激痛を味わわなければいけないのか?嫌過ぎるっ!

 俺の意思とは関係なく涙があふれてくる。

「あがあああああああああっ!」

 俺が地面を転がりまわっていると、またもやさっきまでの激痛が嘘のように無くなる。

「ぜぇ……ぜぇ……」

 い、一体何が起きてるんだよ……!

 なんかいきなり進化がどうとか頭に流れたと思ったら、なんでこんな激痛を体験しなくちゃいけないわけ!?

「も、もう流石に終わりだよな?」

 俺は体を何とか起こし、息も切れ切れになりながらそう呟くのだったが――――

「おううううううううううっ!」

 今度は下半身に凄まじい痛みが走った!

「ぎいやあああああああああ!下半身は駄目!駄目だろ!?」

 グキグキベキボキバキグシャメキャ!

「例に違わず凄い音鳴ってるよ!?」

 頭が痛くなったと思ったら次は顔。顔が痛くなったと思ったら次は胴体。胴体が痛くなったと思ったら次は下半身かいっ!

「誰か本当に助けて!?」

 痛さでどうにかなりそうなんですけど!?よく俺廃人状態にならないな!?ある意味スゲェ!

「……って自分褒めてる場合じゃねぇぇぇぇええええええええ!」

 骨が!砕けてるよ!?絶対!

 それに、どうしても鍛える事が出来ない部分が悲鳴を上げてますよ!?加減して!

 このままじゃあ俺……男の子としての機能を失ってしまう!……二度と使いどころ無いかもしれないけど。

 でもそう言う問題じゃ無いじゃん!?他の部分と違って感じる痛さが半端じゃないっ!

「な、何故こんな事に……!」

 歯を必死にくいしばり、痛みを我慢しようと試みる。

「……ああああああああああっ!」

 全然我慢できねぇよ!痛すぎる!もう嫌っ!

 下半身……それも、アソコを必死に押さえながらのた打ち回るという、地球にいた頃なら間違いなく通報モノの行為をしていた俺だったが、やがてあの激痛は綺麗に引いて行った。

「ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……」

 もうこれ以上あの激痛を耐えられる自信が俺には無かった。

「本当に勘弁してくれ……!」

 本当に切実にそう願った俺に、あの声が頭に流れてくる。

『進化が完了しました。全ステータスに1000加算されます』

「お、終わったのか……?」

 なんか、後半の言葉にとんでもない事を言ってた気がしたが、俺はそれ以上にあの激痛から解放されるという事で、頭が埋め尽くされていた。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 よ、よーし……落ち着いてきたぞ……。

 俺は息を整えるために深呼吸を何回か繰り返した。

 そして、激痛が走る前に聞こえた『進化』と言う単語の意味を確認するべく、ステータスを開いた。


≪柊誠一≫

種族:新人類

性別:男

職業:ホームレス

年齢:17

レベル:1

魔力:1020

攻撃力:1386

防御力:1275

俊敏力:1422

魔攻撃:1001

魔防御:1147

運:1000

魅力:

≪装備≫

最終兵器な学生服。最終兵器な学生ズボン。必殺の肌着。必殺のパンツ。

≪スキル≫

中級鑑定。完全解体。麻痺耐性。睡眠耐性。混乱耐性。魅了耐性。石化耐性。阻害耐性。毒耐性。斬脚。刹那。超調合。道具製作:超一流。

≪状態≫

進化×9。疲労

≪所持金≫

10530000G


「おかしいだろ!?」

 思わず自分のステータスにツッコんだ。

「初期ステータスほぼ1の俺が何でいきなりこんなインフレ状態になってんの!?」

 進化パネェな!?効果が凄まじ過ぎるだろ!?やっぱり後半の言葉嘘じゃなかったのかよ!?サラッと聞き流してたよ!

 しかも、≪状態≫の進化の部分がMAXから9になってるし……。

 と言う事は、まだあの激痛を9回も体験しなきゃいけないのか!?

 い、いや……確かにこうステータスに表わすととんでもない訳なんだけど……9回も耐えられる自信ねぇよ!?

「そんでもって何で未だに魅力の部分は何もプラスされてないんだよ!おかしいだろ!?」

 全ステータスに1000加算されるんでしょ!?魅力の1000どこに消えた!?俺ってマジで魅力ゼロなの!?

 種族は何か知らんけど新しい人類認定されたらしいし。

 そして一番気になるのは、何であのクレバーモンキーを倒して未だにレベルが1なのか!もしかして、あの『進化』とやらのために、得た経験値全部消費したとか!?

「うわぁ……なんか色々とへこむわぁ……」

 そう言い、視線を地面に落した時だった。

「ん?」

 俺は変な違和感を感じた。

 おかしい。どこかがおかしい。

 ……何で、真下・・の地面が普通に見えるんだ?

「!」

 俺は急いで自分の腹を触った。

「……や、痩せてる……!」

 そう、俺の感じた違和感は、前の俺なら確実に真下の地面では無く俺自身の腹が見えていたのに、今は綺麗に真下の地面が見えていた事だった。

 あれだけ自分のお腹が邪魔で真下の地面が見る事が出来なかったというのにだ。

「本当に痩せてるぞ!?それに、急激に痩せると皮膚が伸びきってたるみまくる筈なのに、全然そんな様子も無い!」

 こ、これはスゲェ……!あのデブだった俺が痩せた!ダイエット効果凄いな!?……もっと驚く事があるんだろうけど。

 でも、痩せたという事実は、今の俺にとっては非常に重要な事だった。

「なんか心なしか筋肉もついてるように見えるんだけど……」

 自分の腹を触って思う。異常に引き締まってる気が……。

「まあ、気のせいだろ。それに、痩せたからと言ってブサイクな事には変わりないもんな」

 俺はそう頷くと、不意にズボンに違和感を感じた。

「あれ……ズボンがずり落ちる……」

 何でだ?……考えるまでもねぇじゃん。俺が痩せたからだな。

「うーん……痩せれた事は素直に嬉しいんだけど、今着てる服が……」

 上の服でさえ、全体的にダボッとした感じになっている。

 仕方が無いので、俺は今あるベルトを一番きつい位置で締め上げることでズボンに関しては何とかした。

「上は……諦めるしかないだろ」

 そう割り切った俺だったが、更に変な違和感に気付く。

「ん?……何だか視線が高くなったような……」

 身長でも伸びたか?この短期間で?

「……まさかな。いきなり痩せる事はあっても身長は無理だろ。脂肪と違って骨だし」

 まあいきなり痩せるのも無いと思うけど。……無いよね?

「ただ、あの体中から鳴っていた、聞こえちゃいけない様な音が原因だって言うんなら……納得できるけど」

 うーん……ま、いいか。今のところ支障がありそうもないし。

 理由はよく分からないけど、あの激痛を体験するだけで痩せられるなら地球で売れたかもね。……いや、無いか。あの激痛を体験してでも痩せたいとか……どんだけ痩せる事に必死なんだよ。自分大事に。

「さぁーてと……この後どうしましょうかねぇ……」

 俺は地面に腰をおろし、考える。

「クレバーモンキーとの戦闘で2つも最上級回復薬使っちゃったしなぁ……」

 作り方は理解できてるし、クレバーモンキーから得た知識によって、特薬草の位置も分かる。

 それに、最上級回復薬を作るために必要な水は、俺も今喉が渇いているので非常に欲しい。

「……よし!まずはこの森で生き抜く事を考えよう。そのために、クレバーモンキーから得た知識をフル活用しなくちゃな」

 そうと決まれば早速行動開始だな!

「いっちょやってやるぜ!」

 何をかって?……さあ?

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― 新着の感想 ―
[一言] こんばんは。 ふむ···なるほど、つまり『突然!マッチョマ○』ということですね分かります(違
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