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ハーレム100  作者: 松宮星
ジパング界
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68/224

アナベラのひとりごと (※)

アナベラとリーズが、二人で旅を始めた時からの話です。

「オレは金がほしかったの。遺跡盗掘の支度金さえいただきゃ、勇者一味に用はねーんだよ」

 髪は短いし、シャツにズボン姿。

 リーズは男の子みたいなカッコーが好きで、男の子みたいにしゃべる。

 でも、目は大きいし、顔はかわいい。ランボーなのはあんま似合わない。

「護衛なんざいらねーよ。つーか、ド素人について来られても邪魔。ちゃんとお宝は七三で分ける。七を勇者に届けるからさ、聞きわけて帰ってくんない?」


 そーいうわけにはいかない。

 だって、イザベルさんが言ってたもん。

 えっと……

 リーズの旅は危ない、血がいっぱいだって。

 だから、リーズが遺跡でお仕事をする間、あたしが護衛する。あたしがリーズを守る剣になるのだ。

「占い女のたわごとなんざ、本気にすんなよ。オレは一人で大丈夫だ。あんたなんかいらねえ。ついてくんなよな」


 だめ。

 イザベルさんの占いは、絶対、当たるもん。

 あたしが居ないと、リーズがケガしちゃう。


 いっしょに行くって言ったら、リーズは舌うちしてジャンプした。

 塀からひょいひょい高い建物にのぼって、ピョンピョン跳ねて遠くへ行ってしまった。


「あばよ、ねーちゃん。伯爵邸に帰りな」


 リーズの方が足が速い。体も身軽。

 だけど、あたしは十才から傭兵をやってきた。女だから、身軽さと柔軟さを生かすよう鍛えてきた。岩場渡りは得意。屋根を逃走中の賊をつかまえたこともある。

 それに、お仕事がない時、いろんなバイトをやってきた。煙突そーじとか、大工さんのアシスタントとか、軽業の相手役とかー

 けっこー道なき道を行くのは得意ー

 屋根にのぼって、リーズを追っかけた。リーズほどぴょんぴょんできないけど、ハシゴなくたって、ぜんぜん、へーき。


「なんで、あんた、ついて来られるんだよ!」

 屋根から塀、道に下りてから、又、塀へ。

 段差に手間取ってると、置いていかれやすい。

 だけど、少し距離が開いても、へーき。リーズの気配は覚えてるから見失わない。盗賊が逃げたがるコースもだいたい読める。

 それに、持久力はあたしのが上。リーズはまだ子供だから、体ができあがっていない。

 バテるのが早い。

 追いつくのはかんたんだった。

 あたしは、えへへと笑った。




 そのうちリーズはあきらめた。逃げなくなった。でも、


「オレから十歩はなれて歩けよ、ねーちゃん。あんたの仲間と思われたくない」


 一人で歩きたがる。

 そーいうわけにもいかない。街中でリーズが刃にさらされたら、たいへん。

 手をつないであげたら、急いで振りほどかれてしまった。


「触るなよ、バカ! ガキじゃあるまいし、手なんかつなげるかよ!」


 いくつ? って聞いたら、十四だって答えた。

 やっぱり、あたしの方が、ずーっとおねーさんだった。


 いくつまでなら手をつないでいいの? って聞いたら、

「知らねえよ」

 と、リーズはそっぽを向いた。


「誰かと手ぇつないだことなんてねえもん」


 おかーさんとも?

「居ねえよ、そんなの」

 どーして?

「オヤジに愛想つかして出てったか、オレを産んで死んだかだろ?」


 おとーさんとは、手をつながなかったの?

「オヤジがガキのメンドーみるかよ」


 リーズは、おとーさんの部下達に囲まれて大きくなったのだそうだ。

「ものごころついた時から、スリやかっぱらいを仕込まれてきたんだ。おててつないで優雅にヨチヨチなんて、お坊ちゃんやお嬢ちゃんだけだろ」


 そんなことないのに。


 手をつないであげた。

 リーズは照れた。

「離せよ、バカ!」

 大きな声で怒鳴った。

 けど、離してあげない。

 あたしが本気になれば、リーズは手をほどけない。


「やめろよ! 離せよ! おい!」


 あたし、手をつなぐの大すき。


 前後に大きく手を振って歩く。

 昔、おとーさんとおかーさんと手をつないだ時みたいに。


「やめてくれよ! ただでさえ、あんた素っ裸で目立ってるのに!」


 裸じゃないよー

 ビキニアーマーつけてるもん。


「紐ビキニじゃねえか! 胸の先っぽと下をほんのちょっと隠してるだけだろ! 着てるとはいわねーよ!」


 む。

 特別注文(オーダーメイド)なんだ。

 世界で一つしかない、すっごいアーマーなんだぞー

 ここは勝負! って時に着れば、絶対、勝てるんだからー


「あーもう! わかった! すごい鎧だよなー わかったから、手ぇはなせ!」

 だめ。


「頼む! もう逃げない! 絶対、逃げない! だから勘弁してくれ!」


 おかーさんたちが生きていたころ、あたしが真ん中になって三人で手をつないだ。三人でぶんぶん手を振りまわした。

 真ん中のあたしは、宙に何度ももちあげられた。

 ブランコみたいにゆらゆらされるのが、大すきだった。


「ちきしょー、公開羞恥プレイかよ……オレまでバカみたいじゃねーか……」


 リーズは、そのうち静かになった。

 頭をうなだれたリーズと手をつないで街の中を歩いた。

 照れ屋のリーズは首まで真っ赤。かわいかった。




 街や大きい村に泊まると、リーズはこっそり出かけたがった。

 夜中に起き上って、あたしが寝ているのを確認してから出てこうとするのだ。


 もちろん、いつも止めた。

 一人にしたらリーズが危険だもん。

 血だらけになっちゃう。


「ちくしょー! よく寝てると思ったのに!」

 そんなことはない。

 お仕事中は、浅くしか眠らない。


「あんた、おかしいよ! 刹那のスリ技を見切るし、神速のオレ様を捕まえるし! その上、気配まで読んで!」

 おかしくない。

 傭兵だから。


「警備ヘボそうな屋敷があったのに! あの成金そうな家構え! ぜったいしこたま貯め込んでるはずなのに!」

 何で泥棒したいの?

 スリも。

 あたしがちょっと目を離すと、リーズはお財布をいっぱい持ってたりする。全部、とりあげて落し物で届けたけど。

 お金なら、オランジュ伯爵さまからいっぱいいただいてる。旅の資金はたっぷりある。


「使わねえと技が錆ちまうもん! 日々の鍛錬がものを言うんだぜ」


 それは、そうかも。

 あたしも、剣術や体術の稽古はかかせない。


 んじゃ、あたしが練習相手になったげる。

 あたしのお財布を狙って。

 あたしと追っかけっこをしよう。

 あたしを出しぬいて宿屋から出ればいい。

 スリと泥棒の練習になる。


「あんたが練習台?」

 リーズは嫌そうだった。

「すっぽんぽんじゃスリの練習相手になんねーよ、バーカ。服の膨らみや歩き方から、どのへんに財布があるか予想するんだぜ?」

 んじゃ練習の時はビキニアーマーの上に服を着るーと言ったら、

「ずっと着てろよ、バカ! 露出狂! 変態!」

 リーズは怒鳴った。

 もー おねーさんにバカバカ失礼だぞ〜

 お仕置きに、後ろから羽交い締めにして、ぎゅ〜と締めてやった。



 あたし用のマントと服を買った。着るのは練習の時だけだけど。


 昼間は移動で忙しいから、リーズとの練習は夜。宿屋に泊まってからか、野宿の時は寝る前。

 ついでに、剣術の稽古もつけたげた。

 リーズはダガーの扱いがうまいけど、素早さを生かしてるだけだ。

 自分の有利になる間合いがわかってなかったし、突くばっかで攻撃は単調だった。

 あたしがちょっとコツを教えてあげると、リーズはめきめきと強くなっていった。のみこみがいい。頭がいい。剣術の勉強だと素直だー


 あたしたちはどんどん仲良くなってったんだけどー


 南の大きな街で、あたしはついにリーズにやられてしまった。


 一階が食堂の宿屋。

 ルームサービスもあったんで、あたしたちは部屋で食べた。

 香辛料たっぷりの辛めの肉料理とサラダにパン。リーズは果物ジュースも注文した。

 リーズは、けっこー食事にうるさい。旅をするのなら地元の美味いものを食べなきゃ損だ、と言う。庶民料理にしか興味ないから、高級料理店には行きたがらないけど。

「甘酸っぱ! ちょっと癖があるけど、イケルぜ」

 リーズは南国果物のジュースが気に入ったようだ。

 あたしも飲んだ。

 酸味があって、ちょっと舌にピリピリした。でも、新鮮な果実を絞ったばっかだから、美味しかった。

 ごくごくっと飲み干してから、舌に違和感を感じた。

 果汁にだいぶごまかされてるけど、覚えのある不快感が口に残ったんだ。


 薬くさかった。


「薬ぃ? そーいう味の南国果物なんだろ」

 リーズのは大きな瞳が、クリクリしている。期待と興奮で落ち着きが無い感じ。


 あたしはおトイレで、胃の中のモノを吐き出した。

 吐き出したんだけど……

 全部を出す事はできなかった。


 意識が遠のいてしまった……


 で、ちょっとの間だけ、眠っちゃった。


 頭がモーレツに痛かったけど、無理やり起きた。


 部屋に戻ると、リーズは居なかった。

 あたしに睡眠薬を盛って、盗賊のお仕事に行ってしまったらしい。


 両手剣を背負い、あたしはリーズを探しに出た。




「どーして、オレの居場所がわかったんだ?」

 リーズの気配は覚えてる……

 どっちに居るかは、だいたいわかる……


「あんた、犬かよ!」

 ちがうよー 匂いじゃないよー 気配でわかるんだ……


「霊能者かよ!」

 ちがうって、傭兵だよ……


 リーズの手をひっぱって走った。

 できるだけ遠くへ行かなきゃ……


「なんで来たんだよ?」

 リーズがケガしたら、たいへんだから……


「しねーよ! そりゃあ、ちょっとドジふんだけど、あれぐらいオレ一人で」

 きみ、無茶しすぎ。

 昼間、大きなお家の前で腹たててたでしょ?

 お貴族さまの別邸。お金にものをいわせて、街で好き勝手やってるって噂を聞いて……


「オレは貴族が嫌いなんだよ!」

 うん……


「金と身分のあるバカほど始末の悪いもんはねえ! オレは金持ちしか獲物にしねえんだよ!」

 うん……

 だよね……

 だから、前、高級馬車から降りた勇者さまを狙ったんだよね……


 でも、下調べもなしに、貴族の別邸に行くとかムボー。

「あんたがへばりついてっから、下調べできねーんだよ!」


 護衛だって居るだろうし……

 危ないと思った……


「侵入はバレたよ。けど、めぼしいものいただいた後だし、顔は見られてねえ。うまいこと逃げきったんだ」

 うん……

「なのに、あの用心棒、妙に勘がよくて……裏道に居たオレを見つけて身ぐるみ脱げって迫ったんだ。証拠もないのに、泥棒の一味だって決めつけやがって」

 きみがかわいいからだね……

「なに言ってるんだよ! あんたバカだろ!」

 そーでもない。けっこー居るんだ。そーいうダメな大人。仕事にかこつけて、悪さするんだ……

 きみはかわいいから……

 人目につかない所に、一人で居たから……

 狙われちゃったんだ……


「べ、べつに、あんなの、オレだって倒せたし……いざとなりゃ逃げりゃいいし……」

 うん……

 リーズでも倒せたよね……

 あれぐらいの剣技なら、多分……なんとか……


「あ? おい、ねーちゃん、大丈夫か?」

 でも、一人だったら、ケガしちゃったかもしれない……

 イザベルさんが言ってた……きみの未来に血が見えるって……


「しっかりしろよ、立てるか? なー、おい!」

 一緒にいよう……

 あたしが守ってあげる……

 あたし強いんだぞ……

 戦士ギルドのランクは低いけど……

 お仕事、失敗したことないし……

 必ず勝つアーマーつけてるし……


「ねーちゃん! さっきまでシャキシャキしてたじゃねえか! あのブ男、一発でのしてくれたじゃん!」

 きみに何かあったら、みんな、悲しむ……

 おとーさんも、勇者さまも、イザベルさんも、みんなも……

 あたしも……


 だから、リーズ……


「わかった! わかったから、しっかりしろ! 立て! 頼む、アナベラ…………道端で寝るな〜っ!」



 目を覚ましたら、朝日が目にしみた。

 マントをかけられて、どっかの家の壁に背もたれていた。


 あたしは、お外で寝てしまったらしい。


 すぐ隣にリーズが居て、あたしと並んで座ってた。


 ずっとそばに居てくれたの? って聞いたら、にらまれた。 

「あんた、素っ裸なんだもん。夜の街に一人で転がしとくわけにはいかねーよ」

 マントはからんできた酔っ払いから、巻き上げたのだそーだ。

 犯罪はいけないぞ。

「慰謝料だよ。あいつ、あんたにエッチなことしよーとしたんだぜ」


 あたしのテーソーを守ってくれたのか。


 ありがとーって言ったら、リーズはますます不機嫌そうな顔になった。

「南国だからどーにかなったけど、外で夜明かしとかバカみてえ。宿とったのにさ……」

 リーズが睡眠薬を飲ませるからだよ。

 リーズがあたしをにらむ。

「あんた、重すぎ。胸とケツに脂肪ため過ぎだよ。ひきずってもろくに運べやしねえ」

 むぅ。

 人をおデブみたいに〜

「デブじゃん、胸とケツは」


 生意気な子は後ろから羽交い絞めにして、ぎゅっとしてやった。


「ごめん! デブじゃない、ぷるんぷるんのぷりんぷりんだったよな!」

 もう薬を使わないでよとも、脅した。

「使わない! あんた寝かしたらたいへんだってわかったから! もう絶対しない! だから離して!」


 ちょっとだけぎゅうぎゅうしてから、許してあげた。


 リーズはいい子だ。

 あたしが寝てる間ならどこへでも行けたのに、そばにいてくれた。


 リーズも、あたしを大切に思ったくれたんだ。

 えへへと笑みがもれた。






 それから、ずーっといっしょ。


 古代遺跡のスゴいトラップを発動させちゃったり、盗掘団と出くわして戦闘になったりで、けっこー危険な目に合った。

 でも、リーズは無事。

 大きなケガはさせてない。

 これからも、しっかり守る。


「アナベラ」

 リーズが目で合図を送ってきた。

 視線の先は床の岩板。四つのブロックだけちょっと盛り上がってる。

 それから、リーズは天井を指さした。

 トゲトゲだ。

 あそこ踏むと、天井が落ちてきて串刺しなのか。


 古代遺跡は、泥棒よけのトラップがいっぱいだ。


 ほんのちょっとだけ見た目が違う岩を避けて進んでたら、別のトラップが発動した。

 壁面から矢が飛び出してきた。

 標的はリーズだ。

 切り落とした。


 リーズが口笛を吹く。


「ほれぼれするねー バカだけど、あんた剣技はちょ~一流だ」


 むぅ。

 それ、ほめてるの?


「あんたは剣の腕っぷしだけは一流、オレは冴えた頭脳と盗賊の腕前が一流。オレたちいいコンビだよなー」

 また始まった。このとこ毎日、リーズはあたしを誘う。

「なあ、魔王戦の後も、コンビ組もうぜ。あんたみたいなおひとよしのバカは、ずる賢い奴らの餌食だったんだろ? しょーがねえから、オレ様がこれからずっとメンドーみてやるよ」

 むぅ。

 えらそー。

 あたしの方がずーっとおねーさんなのに〜

「あ? ごめん、すねるなよ。六四でいいからさ。オレが六であんたが四。な?」

 分け前分配の提案は、最初は八二だった。

 リーズなりに気前のいいところを見せてるみたい。

 でも、あたしは傭兵だ。泥棒になる気はない。


「んじゃ、雇う。オレ専属傭兵ね。盗掘中心にすっからさ、一緒に稼ごうぜ」



 魔王が目覚めるのは四十八日後だと、リーズが教えてくれた。

 あと何日だって毎日教えてくれる。



 あたしは、今は勇者さまの仲間。

 勇者さまの傭兵だ。


 先のことは、魔王戦の後に決める。

 返事は保留にしてるけど……

 リーズがお得意さんになってくれるなら、食いっぱぐれなさそう。

 いっしょに何かするのは楽しいし。

 リーズと契約を結んでもいいかなー と、だいぶ思ってる。


 でも、まずは今の契約をちゃんと果たさなきゃ。

 魔王に勝つんだ。


 あたしは攻撃して、100万と……

 えっと……

 100万とちょっとのダメージを出すんだ。


 勇者さまのために、がんばらなくっちゃ!

挿絵(By みてみん)

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