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ヲトモダチ

魔ミキ→美希、風間美希

キノリ→乃莉、谷本乃莉

 千鶴はその美希からの指摘を受けて以来ずっと気分が落ち着かない。自分の中で押しとどめていた何か感情が動き出しそうな気配があるからだ。もう、自分とキノリは合わない方が良いのではないかと思う。

「魔ミキはそういうキノリのことどう思う?」

 動揺の中で黙りこくっているわけにも行かないと千鶴は聞いた。

「内心わかってて挑発的に、……キノリの前でそういう事やってたのは悪かったと思う」

 思わぬ内心の吐露に千鶴は驚いた。もっと簡単な答えが返ってくるものだと思っていたからだ。

「挑発的?」

「だって、あんたとキノリは通った高校も一緒だしその頃ぐらいから仲の良さが尋常じゃない気がしたから。だって何日も連続して泊まりっこしたり急にしだしたじゃない」

「確かに、そういうことはあったけど魔ミキだって他の友だちと一緒にいることだってあったんだし、普通の事だと思うけど」

 美希は美希でそれなりの嫉妬があったようだと千鶴は思いながら、しゃべり続ける美希の話に耳を傾けていた。

「あたしはあの頃、キノリの真面目な雰囲気がつまらなく感じてた。それなのに、千鶴は仲良くしてるじゃない。それが今ひとつ納得出来なかったの。あたしの方がずっと面白いのにってさ。あたしだけが偏差値の低い高校だったってことも引っかかってたのかも知れないし、今だってあたしはこの通り、パート勤務だし……結構ムシャクシャしてんの。だから、深酒して失敗することも増えていって……実は、酒の席に男の人がいるとヤバイのよね。社会に出てから気付いたら大して知らない男の人の隣に寝てたってことが何回かあんの」

「……もしかして、あの永田って人とも?」

「あの日は、永田が居たことで逆にシャキッとしちゃってそれは大丈夫だった」

 美希は自分を嘲笑するような苦い笑いを含めて言った。何だか美希も危うい女だと千鶴は思った。キノリはこのことを見抜いて魔ミキのことを言ったのだろうか。だがそれは、すぐに違うような気がした。魔ミキは携帯の端末を除くと突然ニヤリとしだした。そしてこう切り出した。


「あの時、永田と一緒に居たあと二人の男のこと覚えてる?」

「ぼんやりとしか覚えてないけど、雰囲気イケメンって感じだったよね」

 髪は長めでくせ毛風パーマだった。アパレル系と思わせる流行の服装をしていた。もう一人は金払いが良いと言う印象しかない。そう記憶を辿っていると、オーダーしたチーズドリアが運ばれてきた。チーズの香りが食欲をそそる。だがお構いなしに魔ミキは自分の言いたいことを言う。

 

「今さあ、Twitter覗いたらどっちかわかんないけど、どっちかのリアクションあったわ!!」

「どっちかわかんないって……どっちかが好みだったってわけ?」

「え、ああ……まあね。でもアッチはあたしを窓口としてターゲットにしてるだけかも知れないよなあ」魔ミキは妙なところで冷静な目を持っていると、千鶴はチーズを伸ばしながら思った。

「それ、さっき永田って人に言えば良かったんじゃないの?それ聞きたくて接触してきた風だと私は思ってたけどなあ」

「でもさ、仕事で顔合わせる人間に間を取り持って貰うのって上手く行かなかったときに気まずくなるじゃん」

「……それも、そうか……」

「千鶴ってなんか、男女の恋愛の出来事にうといね。かわすのは上手いこと言うけど」

 魔ミキはそう言うと嬉々として携帯の端末画面に釘付けになる。千鶴は、黙ってドリアを食べ続けた。

 『男女の恋愛の出来事にうとい』それを取ってつけたように言われた気がした。



 私は最低なことをしました。嘘。魔ミキは全くのノンケです。千鶴が思うように、ただ悪ふざけが過剰なだけ。キスだとか恋愛に関わらず普段から融通が利かず取り残される私が常に惨めで、違う意味で友達のラインを外してしまいました。

 魔ミキには嫉妬を、千鶴には恋を、私は―― 

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