19、大団円
あの日、エリーデ様の隣でポロポロと泣いたエリアスは
涙と一緒に悪いものを全て出し尽くしたようだった。
おかげで私は即日開放され呪い?の腕輪も外してもらった。さらに、結婚の話も白紙に戻ったらしい。
しかも!あのエリアスから「すまなかった」という謝罪までもらったのだ!
…人は、変われるものなのだな。
「大丈夫なの? 」
自国へ戻る直前、私はエリアスに問いかけた。
隣国の姫(私)との婚約を白紙に戻して、今まで姉とされていたエリーデ様と結婚するのだ。
さすがのエリアスでも、少し時間が必要なのではないか。
私は、二人の幸せのためならばいくらでも協力をするつもりである。
ひいては、それが私の幸せにつながるからだ!!!
私の言葉を聞いて、エリアスは迷うことなく答える。
「今までの苦労に比べれば、大したことじゃない。手に入らないと思っていた宝物に手が届いた。
ならば俺は己の理想と、エリーデの幸せのために突き進むだけだ 」
「そうエリアスが決めたなら、大丈夫ね 」
そうして、私たちは顔を見合わせて笑いあう。
「あぁ、俺が決めたことは絶対だ 」
「えぇ、絶対に幸せになってね 」
当たり前だ、と笑うエリアスはとても幸せそうだった。
帰路に就く前、とてもお世話になったメイドさんにも挨拶をと、教会に行くと
メイドさんはなんと帝国騎士の服を着ていたのだ。しかも、ふりふりのすっごく可愛いやつ!
「あなたは…一体? 」
「私は、団長アレクシスの部下でございます。貴女様の危機を救うべく、参上しました 」
「え? アレクの…? 」
「はい」と顔を上げて微笑む少女。それを見て、ホッとすると同時になんだかいたたまれない気持ちになる。
「アレクは、私の事…信じてなかったの? 」
もしもの時に助けてくれる者がいたなんて、私は知らなかった。
それはきっとアレクなりの思いやりなのかもしれない。
だけど、まるで監視みたいじゃないか、とも思ってしまうのだ。
「い、いえ!違うのです 」
私の表情を見て、少女は慌てたように言葉をつづけた。
「このことは、その、団長は知りません! 私が勝手に…独断で、していることなのです 」
非常に難しい顔をして、少女は言葉を選んでいるように見える。
「えっと、団長は貴女を信じて待っています。だけど、とても貴女を心配に思っておられる。私は、その、団長の憂いを少しでも晴らすことができたら…と、海を越えたのです… 」
「そうなの… 」
アレクを大切に思ってくれる人が居たことを知って、とても嬉しくなる。
「ありがとう」と伝えると少女は、礼をして去っていった。
そして、帰路の途中。
私はずっと聞きたかったことをヒューバートに怒りを込めて聞いた。
「なんで、裏切ったの?ちょっと、悲しかった 」
「だって…海の向こうよりは隣国の方が近いじゃないですか。でも、申し訳ありませんでした」
と、悲しそうな顔をしたので殴る拳をほんの少しだけ緩めてしまった。もう!
それから私はヒューバートと共に自国へと戻り
その一月後にエリアスとエリーデ様が婚約したことを知るのだった。
―――――――――――――――――――――――――
私の騎士たるアレクシスへ
間が空いてしまい、ごめんなさい。
隣国へ行っていたので、手紙を出すのが遅れました。
でも、私は毎日を健やかにすごしていますよ。もちろん、お祈りも欠かしていません。
また、報告が一つあります。
このたび、隣国の王子の婚姻が決まりました。
彼は、昔からよく知る友人でありとても優秀な人です。
今回の婚姻には、私も微力ながら尽力したので、とても嬉しく思います。
これで、隣国との国交もより強固なものとなるでしょう。
そして、両親が貴方との婚約を認めてくれました。
両親も貴方の素晴らしさがわかったようです。もうすぐ、私は貴方の元へ行けます。
だから、どうか待っていてくださいね。約束ですよ、待っていてくださいね。
では、今日はここまでとします。
貴方に会える日を思って。
リリア
追伸
私を助けてくれた、可愛い騎士様にもお礼をお伝えします。
本当にありがとうございました。
でも、あんなに可愛い人が近くにいるなんて、少し心配になります。なんてね。




