表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白百合狂想曲  作者: シズカンナ
白百合と狂犬のワルツ (番外編 )
34/39

15、本気地雷爆発


泣きそうな美形は、まじで破壊力がすごい。

そんなことを頭のどこかで冷静に考えながら、私は冷や汗をかいていた。

やばい、私は、自分で破滅を決定的にしてしまったの、かもしれない。


「だから、リリアは、俺の傍にいてくれ 」

切実な声は、いつものコイツとは全然違っていて私は非常に動揺してしまった。

なんだこれ、なんなんだ!!あ、さりげなく手とか握るな!!私の動揺が知られるだろう。


「なんで、いないって、どういう… 」

「お前の姉と一緒だ。…城を出たんだ。大切にしたい人とやらのため、らしいぞ 」

わお…それは、それは。こんな壮絶シスコンが居る人によく手をだしたものだ。

あの方の傍に近づくなんて、至難の業だっただろうに。ものすごい猛者が居たものだ。

まぁ、それでも、挑戦者のような勇者はきっとどこにでもいるものなのだろう。

でも、でも、私としては非常に迷惑だー!!


なんと言ったら良いのか分からなくて、私はただ握られた手をそっと握り返し顔を伏せた。

それは、本当はするべきことではないのかもしれないが、今の私にはそれくらいしかできなかった。

慰めにもならない。これはきっと同情に近いものだろう。

「でも、私は、あの方の代わりになんてなれない 」

「それで、いい 」


はっと顔をあげれば、ソイツはとても真剣な表情をしていた。

あ、これは、非情にマズイような気がする。

ヒューの時と同じように、聞いてはいけない気がする。


「リリアは、リリアのままでいてくれ。俺には、お前が必要なんだ。 たのむ 」


一般女性だったら、一瞬で陥落するであろう台詞。さらに、縋るような表情。

うわぁ、コイツ本気だ。本気すぎて怖いっ!!

今までの情熱の持っていく場所がなくなって、全部こっちにきてる。

ちょっと、かなり、私には重すぎるんだけど。だけど、なんか眩しすぎて、うぅ、負けそう。


そんな弱気な私の頭をよぎったのは、アレクの絶対零度の笑み。

その瞬間、私は自分の崖っぷちさに気づく。

そうだ、私、ここで諦めるわけにはいないのだ。

諦めたら、戦争になるっ!!帝国が攻めてきちゃううう。


「無理。頼まれても、無理。私だって大切にしたい人がいるの。それはアンタじゃないの 」

「…知っている 」

じゃあ、と返そうとしてぐいっと手を引っ張られて引きずられる。あ、あ、ちょっと、それは。

まずいと思っても、とっさのことに対応しきれず、ぽすっという音と共に私は抱きしめられてしまった。

恐ろしいことに、手は腰に回ってがっしりと掴んでいる。 逃 げ ら れ な い 。


「それでも、俺には、お前が必要だ。 俺が俺である為に… 」

泣きそうな声に私は何も言えなくなってしまった。


大切なものを失くした喪失感は、私にもわかる。

城中を見て感じた喪失感を私は今でも覚えている。

今まで居た人が居なくなる。あったはずの日常が消えている。

それは、酷く恐ろしくて悲しいことだ。


でも、それは、自分で乗り越えなければならない。

誰かに縋って、頼って、乗り越えるものではないはずだ。


「アンタの感傷で、私を使うな 」

自分にしては、酷く冷たい声だと思った。でも、これは大切なこと。

ぐいっと、相手の胸を押すもビクともしない。

それでも拒絶の意思は表したいから、何度も押してやった。


そう、私は負けない。

私は、私が本当に大切にしたい人の為に、コイツに勝つんだ!!


「私は、アンタと結婚はしない 」

きっぱりと言い切った。よし、と思ったところで突然、ガチャンという音が聞こえた。

それと同時に右手に何か冷たい感触。


「だろうな 」

どこか呆れたような声。ゆるり、と私を拘束していた腕が解かれて。

なんか、見慣れないものが私の右手首に、ついている、よ?


「呪術を込めた腕輪だ。俺からある一定距離以上を離れられなくなる 」

ベットにへたり込み呆然としている私を見下ろして、ソイツは勝ち誇ったように笑う。

「まぁ、お前の快諾など期待してない。しかしな、お前がどんなに拒否しても、拒絶しても、結婚は変わらないぞ 」

高らかに言い切るソイツを睨んでも、ソイツの余裕の表情は変わらない。


「なぜならば、俺が決めたことは絶対だからだ 」



ああ、やっぱり、コイツが大嫌いだ!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ