表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白百合狂想曲  作者: シズカンナ
白百合と狂犬のワルツ (番外編 )
28/39

9、新たな決意



俺のお姫様、リリア様へ


手紙の便箋選びに3日とは、ずいぶん思われているのですね。

素直に嬉しく思います。もらった手紙は大切に保管させていただきます。


隊長就任、よかったです。

貴方の心労が一つ消えて、とても嬉しく思います。


ただ、それを成し遂げるまでに何かなかったか、とても心配です。

俺の忠告を聞いて、危険なことにはならなかったのだと信じています。

何もなかったと思って良いのですよね。本当に、そう思って良いですよね?


…あぁ、いけませんね。この前、思いつめすぎだと部下から提言されました。

思いつめすぎてしまう癖は、貴方と離れてから強くなる一方です。

行き過ぎると、今すぐそちらへ貴方を攫いに行ってしまいそうなので、気をつけなくてはなりませんね。


婚約の報告の準備をすると聞いて、今すぐにでもそちらへ行きたい気持ちでいっぱいです。

しかし、恨めしいかな今の俺ではすぐにそちらへ向かうことができません。

貴方の傍らで一緒にご両親に報告をしたかったのに、残念でなりません。


帝国よりも、貴方を思っていますよ。本当です。

変わらぬ愛を。



アレクシス


追伸

次にお会いするときは、「アレク」と呼んでください。

ぜひ、忘れずに呼んでくださいね。




―――――――――――――――――――――――――




どこからつっこんだら良いのか分からないが、とりあえず一番ヤバいところは大丈夫だったらしい。

「侵略」という恐怖の二文字が見られなかったから、バレなかったんだ!!

それが分かっただけで十分だろう。後の部分は見て見ぬふりだ。

アレクシスの愛が感じられただけで良い。うん、そう思うことにしよう。



「リリア、聞いていますか? 」

「あ、うん。大丈夫 」


だから、今はいっぱい練習をしなきゃね!!

そんなわけで、訓練場にて、私とヒューバートは向かい合っている。

これから特訓なのだ。


「それにしても貴方にはこれ以上、剣の訓練など必要ないでしょう 」

「いいの。私、決めたから 」

したり顔で言えば、ヒューバートは不思議そうな顔をした。



私が騎士になった理由は、姉だった。

他の全てを捨てて、新しい自分になった。それが私にとって、姉への親愛の証であったから。

じゃあ、アレクシスに対してはどうだろうと考えて、悩んでしまった。


アレクシスはずっと私を「お姫様」と呼ぶ。

彼は騎士で、私はお姫様。守る側と守られる側。それを明確にしている。


最初の頃にアレクシスが、私をお姫様扱いしてくれたことは、素直に嬉しいと思った。

でも、私はそのまま守られていたいとは思わなかった。ずっと守られる側にいるのは、私には無理。

私の愛情の表し方は、守ること。その人のために全てをささげて守ることだ。


私は、愛しい人のための騎士でありたいと思う。

彼を守れる存在として、隣に立ちたい。


この思いをアレクシスに認めてもらうには、一度しっかりと決着をつけなければならないだろう。

ただ守られるだけの存在でない、としっかりと示さなければならない。

そうでなければ、私はずっと「守られるだけのお姫様」のままだ。

私が私で居るために今よりもっと強くならなくてはならない。


だから、私はヒューバートにお願いしたのだ。



「結局、リリアはずっとそうなんですね 」

「そうよ。誰も、私から剣を奪えないの 」


あの後、ヒューバートにお願いしたことは、訓練を続けてほしいということだった。

隊長でなくなったけど、ヒューバートにはこのまま剣の師匠として私を鍛えてほしい。

再びアレクシスと剣を交える日までに、私はもっと強くならないといけない。

それこそ、20人斬の時以上にビシバシやってもらわないとならないだろう。


意気揚々と、私は新しい双剣を抜いた。すらりと美しい細見の双剣。

その剣には、百合の文様が刻まれている。


アレクシスを守り愛する為の、誓いの証。



「さぁ、はじめましょう!! アレクに、負けないように強くしてねっ!! 」

「…その呼び方はお願いされたんですね。 「ヒュー」に対して「アレク」って…本当に、大人げない人っているもんだ 」


やれやれという風に溜息をつきながら、ヒューバートも剣を抜く。

彼の嫌がる顔なんて滅多に見れないんだけど、本当にアレクシスが苦手な様子。

例の手紙には、一体何が書かれていたのやら…。


「僕の代わりに、その人を、完膚なきまでに叩き潰してきてくださいね 」

「もちろん!! 」


そうして、私は今日も剣の稽古に励む。

新しい決意を胸に、来たるべき決戦の日にそなえて。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ