ボクと旅する〜弐〜
この作品はフィクションです。なので、現実的に関係ありませんよぅ。それでは、どーぞ☆
外は曇っていて、雨が降りだしそうだ。
俺がこれからコーヒーでも飲もうと立ち上がって、キッチンへ向かおうとしたその時。
「ドンドンドン。」
と、家の扉を叩く音が聞こえた。
俺が
「何の用だい?」
と声を張り上げて聞くと、外から、
「雨が降ってきそうなので、雨宿りをさせてください」
と言う声が聞こえた。若い声だ。
「いいぜ。今開けっからな。」
断る理由もないから、俺は扉を開けた。
そこには、白いTシャツに青い短パンの12歳くらいに見える少年が立っていた。
「はいれよ。今コーヒーでも出すから」
俺はそういって招き入れた。
「ありがとうございます。」
少年は顔をこわばらせたまま、椅子に静かに座った。
「あんた、名前は?」
気まずい雰囲気を消そうと、明るく声をかけた。
「別に名乗る程いい名前じゃありませんよ。あなたは?」
「俺か?俺は、ケンジっていうんだ。
じゃあ・・・お前は、どこから来たんだ。」
俺は聞き返した。
「僕は・・・ここからずっと東の方にある港街から来ました。いろいろあったもので。」
「そーか・・・わけぇのに大変だなぁ。はいよ、コーヒー。飲めるか?」
俺はコーヒーを少年に手渡した。
「はい。大丈夫です。いただきます。」
と、少年は一口、コーヒーを煤った。それから、
「ケンジさんは、どうしてこんな山奥に住んでいらっしゃるんですか?」
と聞いてきた。
「俺も昔は街に住んでたよ。でもな。追い出されちまったんだよ。住民にな。」
「はぁ。何故?」
俺は続けた。
「何故かって?そんなもん、こっちが聞きてぇくらいさ。街のやつら、俺に向かって
「死ね」
だの
「デカブツ」
だの言いやがる。しまいにゃガキに石を投げられる始末さ。俺は耐えきれなくて、すぐに街を出て、この山小屋を見付けたんだ。」
昔の事で、あの腹立たしさを思い出して、俺は少し熱くなってた。
「そうだったんですか。それでこんな山奥に、一人で。」
「そうよ。だからな、今日はお前が来てくれて少し嬉しいんだ。久しぶりの話し相手だからな。」
俺は笑ってみせた。だが、少年の表情は変わらぬままだった。
いつのまにか、雨が降っていた。
俺は、少年にコーヒーの御代わりをやって、それから旅の道中の話を聞いた。
「知りたがり屋の子どもかぁ。可愛らしいねぇ。将来は研究員かなんかかな?」
「そうなるかもしれませんね。でも、先なんてわかりませんから。」
「おいおい・・・それを言っちゃあ夢がないぜ。あんただってまだ子供なんだからよ。」
そういうと、少年は
「僕は、夢をみないようにしているんです。」
と言った。
「夢をみないように?何故だい?」
すると少年は少しだけ、ほんの少しだけ、顔を歪ませて、
「ろくなことがないからです。僕はそれのせいで家を失いました。だから、もうみないことにしてるんです。」
と強く言い放った。
「なるほどね〜。でもよ、それじゃあこれから先つまらんだろ?」
すると少年は、今度はほんの少しだけ顔を微笑ませ、
「僕は、まだ死にたくありませんから。」
といった。
雨はすっかりあがってしまって、空には虹が架っていた。
「それでは、雨も上がったみたいなので、僕はこれで。お世話になりました。」と深々とお辞儀をしてきた。
「なんだ。もういくのかい?楽しかったぜ。また、機会があったら来てくれよ。」
「はいそうします。」
少年は濡れたサドルを拭いて、鍵を外して、それから、もう一度俺に礼をしてから自転車で西に向かっていった。
さぁてと・・・。昼寝でもするか。
空に架っていた、虹はもう消えていた。
いかがでしたか?今回、ワタクシ視点を変えるという必殺技をくりだしたのですが・・・。 暇潰しシリーズ第三段!!まだまだ続きますのでよろしくどーぞ☆それではまた、機会があれば。