反省会
「あぁ~、もう。なんであんなに包囲したはずなのに失敗したんだろ」
舞が、悔しそうに舌打ちした。
「ったく、逃げられるとか、ありえないって」
そーはアイスコーヒーのグラスの上側をつかみながら、小さく水面を揺らした。
「…スカル、スカル。ごめんなさい、いいの思いつかない」
「って、あんたは、何でまだボケに必死になってるんだよ!」
そーが思わずつっこみをいれた。
テニス場前の喫茶店にて、反省会中。
トランシーバーまで調達し、路角に地点Aとか名前をふったり、盛大に準備したのに。
徒労に終わってしまったことで、全員の顔から落胆の表情が見て取れた。
澄香は、そんな光景を眺めながら、ストローからメロンクリームソーダを吸い上げる。
と、舞の視線が澄香を捉えた。
「で、澄香は、どうだったの?」
「どうだったのって?」
澄香は、舞の問いかけに思わず首をかしげた。
「どうって…。突然、消えたって言われても納得のしようないじゃん」
「まぁ、そうなんですけどね」
そう言って、澄香は視線を落とし、メロンソーダのアイスを手持ちのスプーンで沈めてみた。
今までエメラルド色に透き通っていたメロンソーダに、濁りが交じる。
喫茶店に流れる軽快なメロディが終わり、変わってギターがピックスクラッチをかき鳴らし別の曲が始まった。
「突然、足音が消えて忽然と姿を消すなんて、人間業じゃないよな」
そーが、もうお手上げと言わんばかりに後ろの席にもたれかかり、腕を組んだ。
「…そうでもないわ。ストーカーされてることに気づいて、
慌てて靴脱いで、足音を消して逃げたのなら説明がつかないこともない」
「けど、一本道で、しかも後ろには、舞の奴が張ってたんだぜ?
逃げれるはずないって」
そーの反論に、百恵は、静かに考える。
「…電柱を登って」
「見たけど、いなかったよ。ねぇ?澄香」
舞の言葉に澄香は、首を縦に振った。
「…壁の隙間から、他の人の家に逃げ込んだ」
「そんな隙間もなかった。それに壁も2メートル半はあるから登れないって」
「…なら、マンホールのふた開けて」
「逃げるために頑張りすぎだろ、それ」
そーと、舞の反論にさすがの百恵も追い詰められ始める。
また、百恵は考え始めた。
そして、
「…空飛んで」
「飛べるか!」
「…幽体になって」
「死んでるのか!」
「…次元の壁を超えて」
「超えるか!」
「…ギブアップ」
「よしっ!」
百恵は白旗の代わりに手元のおしぼりを振った。
しかし、結局何の解決にもなってないことに気づき、
四人は徒労に終わった今の現状にただただ嘆息をつくしかなかった。
その時だった。
「あの…もし?」
一人の少女が、澄香たちの前に立っていた。
「私たちと一緒に勉強会をしませんこと?」
制服からして若月高校の生徒であることは確かだった。




