表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
生徒会の王女様は距離感がバグってる  作者: レイチェル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/13

王女様のおもてなし

「ん……」


「福島さん、おはようございます」


「んぅ……ああ……おはよう、宮城」



 翌日の朝、福島がリビングのソファーで目覚めると、既に宮城は制服に着替えていた。そして、キッチンに立っていた宮城は、フライパンや鍋を使って料理をしている。

 ソファーから起き上がって背伸びをした福島は、洗面所に行って冷たい水で顔を洗う。眠気を吹き飛ばした福島は、いつもの表情でリビングへと戻ってきていた。



「何してるんだ?」


「勝手にキッチンを借りてすみません。昨日のお礼をと思って、せめて朝食くらいは作ろうかと」


「……そんなこと気にしなくて良いのに」


「福島さんはテーブルに座って待っててください。コーヒーとココア、どちらが良いですか?」


「コーヒーのブラックで……って、ここはオレの家なんだが?」



 いつの間に場所を把握したのか、宮城はテキパキとコーヒーを淹れてテーブルの上に持ってきていた。椅子に座るよう促されていた福島は、自分以外の誰かが朝から家にいることに慣れていなかったのか、どことなく落ち着かない様子だった。

 コーヒーを淹れ終わった宮城は、慣れた手付きでスクランブルエッグとピザトーストを作っていく。その様子を、福島は朝の情報番組を見ながら見守っていた。



「はい、どうぞ。昨日の福島さんみたいに、ものすごく美味しいわけではありませんが」


「……いや、普通に美味いぞ。いつ嫁に行っても問題ないくらいにはな」


「……福島さん。昨日の夜といい今日といい、私を動揺させるために言ってるんですか?」


「何がだ? 思ったことを言ってるだけだぞ、オレは」


「どうですかね……あまりそんなこと言わない方が良いですよ。私が勘違いしたらどうするんですか?」


「いや、宮城は勘違いしないだろ。それに昨日も言ったが、狙うならとっくの昔に色々やってるぞ、オレは」



 あくまでも宮城に興味はないスタンスを取る福島に、宮城は少しずつ福島との距離感を掴めるようになっていた。

 福島の言葉1つ1つに、それほど深い意味は無い。それが福島なりのコミュニケーションツールであることに、宮城は少し適応し始めていた。



「でも、宮城が不快に思うなら止めるよ。ごめんな」


「別に、嫌とは言っていません。誰かに好意を寄せられるのは、慣れていますから」



 テーブルを挟んで向かい合い、宮城が作った朝食を食べる2人。お互いに、朝食を誰かと一緒に食べたのは、高校に進学してから初めてのことだった。



「まあ、周りが王女様って囃し立てるくらいだから、慣れてるとは思ってはいたけどさ。常に誰かから見られていると思うと、大変だな」


「もう慣れたことです。自分の容姿が他の人より優れているのは、分かっていたことですから」


「……そんなに刺々しい性格してたっけ、お前って?」


「福島さんは誰かの秘密を知っても周りに言いふらしたりしないと分かりましたから、こうしてOFFの自分を見せているだけです。刺々しい性格なのは、福島さんほどではないですよ」


「まあ、それはそうだな。自覚はしてる」



 学園では生徒会以外で接点を持たない2人が、今はこうして2人で朝食を囲んでいる。学年1位と2位の2人が同じ場所にいるというのも、かなり珍しいことであった。



「ありがとな。誰かに朝食を作ってもらうなんて初めてだったけど、めちゃくちゃ美味かったよ」


「いえ、私のこそ本当にありがとうございました。私はこのまま学校に行きますので、福島さんは時間を空けて来るようにしてくださいね」


「ああ、そうだな。周りに怪しまれても困るからな。今日は夕方には管理人が来るんだろ?」


「ええ。放課後辺りには来てくれるそうです。到着したら連絡をもらう手筈になっています」


「そうか。なら安心だな」



 朝食を食べ終え、福島はキッチンで洗い物をする。その間に身支度を整えた宮城は、福島よりも早く学校へ向かうことにした。

 玄関まで宮城を見送った福島は、何か気が付いたかのように宮城へ声をかける。そして、福島は1本の鍵を宮城に手渡した。



「……何ですか、これは?」


「この部屋の合鍵だよ。管理人が来るよりもお前が先に下校したら、また外で待ちぼうけになるからな。だったらここで待ってても良いぞって意味だ。特に他意は無い」


「福島さん、私のこと信用し過ぎではないですか? 私が仮に何か悪いことを考えているとは思わないんですか?」


「誰にでもそうするわけじゃない。宮城が信用出来から、オレは渡すんだよ。使い終わったら、ポストにでも投げ込んでおいてくれ。無くすなよ」


「……一応預かっておきます」



 玄関先で最後にもう1度、宮城が福島にお礼を言う。そして、宮城はいつものように学校へと登校していった。

 残された福島は、自分の家に久しぶりに静寂が訪れたのを感じていた。寝室行って制服に着替えていると、ふとベッドの方に視線を移す。綺麗に整頓されていた布団に、福島は宮城の育ちの良さを改めて実感していた。



「……不思議なこともあるもんだな」



 時計に目を配り、福島も時間差で家を出る。

 これが、後に甘々カップルになる2人の、初めての校外での関わりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ