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生徒会の王女様は距離感がバグってる  作者: レイチェル


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4/13

王女様とナイトの夜

「パジャマとタオル、ここに置いておくから好きな使ってくれ」


「はい、ありがとうございます」



 福島の好意により、宮城は福島の部屋の浴槽に浸かっていた。自分と同じ部屋の造りなのは分かっていたが、福島の部屋はリビングも浴室も綺麗だった。1人暮らしの男子の部屋にしてみれば、もう少し散らかったり、整理整頓がされていないところであるが、福島はその辺りはしっかりと日頃から掃除を怠ってはいなかった。

 半透明の扉の向こうに、福島の影が見える。福島は宮城が使う用のパジャマとタオルを置き、早々に脱衣所から出て行った。こういうときは少なからず何らかのハプニングが起きるような展開ではあるが、福島はそのようなことに興味の欠片も無かったようだった。

 脱衣所に設置された洗濯機は、乾燥も出来るハイスペックな物だった。今は宮城の下着類が洗濯されており、工程は早々に乾燥へと移行していた。



(福島さん……あまり自分から話すようなことはしないけれど、悪い人じゃないとは思ってた。ほとんど関わりのない私に優しくしてくれるし、もしかするとあの人は違うのかもしれないな……)



 シャンプーやリンスを借りて頭を洗い、ボディソープを使って体を洗う。自分の中で思い出したくない出来事を思い返してしまっていたが、不思議と福島に対して嫌悪感を抱くことはなかった。

 そして、福島が浴槽から上がるころには、乾燥していた下着類はほかほかになっていた。



「福島さん、お風呂ありがとうございました」


「……すぅ……すぅ……」


「……福島さん?」



 宮城が風呂から上がってリビングに戻り、福島に声をかける。しかし、福島はソファーに寝転がったまま、眠りに落ちてしまっていた。

 宮城が声をかけても、福島は起きる様子が無い。このまま声をかけ続けて起こした方が良いのかとも思ったが、宮城はこのまま少しだけ福島を寝かせておくことにした。



「福島さん……毎日このような生活をしているんですね」



 規則正しい寝息を立てていた福島は、安らかな顔をして眠っていた。宮城はソファーの横に座って福島の寝顔を見つめるが、福島が起きる気配は無かった。

 生徒会長の山形曰く、福島はそれなりにモテるスペックをしているということらしい。ただ、その性格が難点であるため、女子から敬遠されてしまう傾向にあり、誤解されてしまうことも多かった。それは宮城の周りにいる女友達も話していたことであり、宮城もどうして福島が周りと壁を作っているのかを不思議に思っていた。

 こうして間近で見てみると、確かに山形の言う通り福島の顔はとても整っており、周りの女子からモテていても何の不思議もないだろうと、宮城は思っていた。長い睫毛と艶のある髪が、福島の魅力を引き立てている。それに吸い寄せられるようにして、宮城はそのまま福島の寝顔を見つめていた。



「んっ…………ん?」


「ひゃあっ!?」


「うわっ……! あっ……宮城か? びっくりさせるなよ……」


「す、すみません……」



 福島の顔を至近距離で見ていた宮城。そこへ突然福島が目覚めたため、宮城は慌てて福島から距離を取る。

 ソファーから起き上がった福島は、まだ完全に覚醒していないのか、眠たそうに目を擦っている。そして、目の前にいる宮城を見て首を傾げていた。

 風呂上がりの宮城は体が火照っており、普通の高校生なら少なからず意識してしまいそうなムードになっている。しかし、ここでも福島はマイペースであった。



「宮城さ……お前、すごく可愛い顔してるよな。化粧してなくても可愛いと思うぞ」


「えっ……!? きゅっ、急に何ですか?」


「なんとなくそう思っただけだ。ドライヤー、そこにあるから勝手に使って良いぞ。あと、来客用の歯ブラシとコップも洗面所に置いておくからり好きに使ってくれ。隣が寝室だから、ベッドも好きに使って良いからな」



 福島は宮城にそう伝えると、風呂に入りに行くために脱衣所へと消えていく。

 特に意識はしていなかったが、宮城にとって面と向かって男子からそのようなことを言われたのは久しぶりのことであった。しかも、相手が福島なら尚更のことであった。あの福島から可愛いという単語が出てきたことに、宮城は驚きを隠せなかった。そして、自分の心臓が少なからず高鳴っているのも感じていた。



「……もう」



 行き場のない不満を抱えたまま、ドライヤーで髪を乾かしていく宮城。そして、これ福島に今の心境を悟られないように、福島が部屋から上がってくる前に寝室へ退散することにした。

 不思議なことに、それまで感じていた緊張感は、いつの間にかほとんど消えていた。



「……福島さんの匂いがする」



 いつもと違う布団と枕の感触に、宮城は普段より眠りにつくのが遅かった。

 しかし、次の日の朝に目が覚めたときには、いつもとは少しだけ目覚めが良かった気がした。

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