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生徒会の王女様は距離感がバグってる  作者: レイチェル


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秘密の隣人

「いよぉぉし、終わったぁ! 綾乃、そっちはどうだ?」


「うん、もう少し! 終わったら一緒に帰ろうね、夏!」



 私立仙台学園の生徒会室。そこに、仲の良い男女の声が反響していた。

 男の方は、この学園の生徒会長である山形夏。そして、女の方は副会長である秋田綾乃。学園公認のバカップルであった。

 そして、そんな2人に視線を送ることなく黙々と自らの作業を遂行している者が2人。会計の福島春希と、書記の宮城真冬であった。

 生徒会は6人のメンバーで構成されているが、訳あって本日の参加者はこの4人のみ。そして、ONとOFFがしっかりしていた山形は、隙あらば彼女である秋田とイチャイチャしている日々であった。



「そっち方はどうだ、春希? 終わりそうか?」


「まだもう少しかかる。うるさいから先に帰ってて良いぞ」


「相変わらずクールだねぇ、お前は」


「宮城さんの方はどう? 終わりそう?」


「ええ、あと少しです。2人は先に帰っててください」


「あいよ! じゃあまた明日!」



 アンケートの集計作業を終えた山形と秋田は、仲良く腕組みをしながら生徒会室を出ていく。残された福島と宮城は、黙々と作業を続けていた。

 福島は生徒会の会計であり、今はノートパソコンで各部活の申請があった部費の監査、そして今年の予算からどれほど割くことが出来るかを考えていた。福島が座っていた机の隣では、書記の宮城が本日の生徒会の議事録をノートパソコンで記録していた。

 真っ直ぐに伸びた淡黄色の髪からは仄かに柑橘系の匂いが漂い、隣にいた福島の鼻腔をくすぐろうとする。しかし、当の福島はそのようなことには意識が向かず、ただただノートパソコンに数字を打ち込んでいた。



「……あの2人、今日も仲が良いですね」


「学園で1番有名なカップルだからな。底抜けに明るいし、そのおかげで生徒会選挙に当選したような感じだろ。巻き込まれているこっちの身にもなって欲しいな」


「福島さんは断らなかったのですか? 今回の生徒会への参加は」


「この学園で生徒会長の権力は偉大だ。周りの役職は会長自身が選ぶことが出来るから、オレがどうこう言っても無駄だ。宮城こそ、断ることはしなかったのか? 王女様なら断る権利くらいはあるんじゃないのか?」


「……その言い方は止めてください」



 長い沈黙を宮城が破ったが、その会話も長続きはしない。生徒会に入るまでほとんど話したことがなかった2人にとって、この時間は何の有益性もない時間に過ぎなかった。

 生徒会のメンバーには、そのキャラクターの特徴をなぞらえた奇妙なあだ名が付けられていた。生徒会長である山形は特攻隊長。副会長である秋田は弾丸ライナー。何とも2人の特徴を捉えた異名である。

 そして、容姿端麗で頭脳明晰な宮城は王女様と呼ばれていた。入学してから今まで学年トップの成績を維持し続けており、スポーツも万能。さながらお嬢様と言っても過言ではない振る舞いに、いつしか周囲から王女様と言われるようになっていた。

 そんな宮城の横が作業の定位置になっていた福島は、ナイトと呼ばれている。王女様の隣にいる男という意味なのであろうが、本人としては些か不服であった。成績は宮城の次に良く、スポーツも平均より上の成績である。ただ、誰かと必要以上に絡むことはなく、教室ではいつも1人でいることが多い。誰とでも分け隔てなく接している宮城とは正反対の性格に、周囲から敬遠されることも多かった。入学から仲の良かった山形が生徒会長にならなければ、今こうして福島がここにいることもなかったであろう。



「……ごめん。そんな言い方をするつもりじゃなかったんだ。気を悪くしたなら謝る」


「いえ……慣れていますから」



 福島と同じように、宮城もそのあだ名を快く思っていなかった。周囲が勝手にハードルを上げているような気がしており、宮城は多少なりとも気を張ることが多くなっていた。

 周囲の生徒たちは、宮城のことを王女様と囃し立てる。同じように不愉快なあだ名を付けられていた福島にとっては、宮城の気持ちが分かるような気がした。素直に頭を下げて謝罪した福島を、宮城は咎めるようなことはしなかった。



「じゃあ、オレはバイトに行くから。鍵の返却、よろしくな」


「はい、分かりました」



 そこからしばらくして、ようやく自分の作業を終えた福島は、アルバイトの時間が迫っていたことに気が付き、足早に帰り支度を進めていく。入学からずっとコンビニでアルバイトをしていた福島は、その収入を生活費の一部に充てていた。

 生徒会室を出て行こうとする福島の背中に、宮城はほんの一瞬だけ視線を送る。



「アルバイト、頑張ってくださいね」



 しかし、その声は扉を開けた音にかき消され、福島が振り返ることはなかった。



「福島……春希……さん」



 今まで学校では接点がほとんど無かったが、この2人には誰にも言えない秘密があった。

 それは、お互いの住んでいるマンションの部屋が隣同士ということであった。

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