第三話 緊急警報
おまたせしました
※二話のダンジョン名を変更しました
薄暗い通路の中、2つの影が動いている。
1つはこのダンジョンに大量に現れるゴブリンだ。手に持った棍棒をやたらめったらに振り回しながら突っ込んでくる。もう1つはマジックボルトを展開し片手剣を構えた僕だ。
「シュート!」
「グギャッ」
打ち出したマジックボルトがゴブリンの顔面に衝突する。体勢を崩したゴブリンに走り寄り片手剣で一閃。
「………」
ゴブリンが倒れた後、消滅するのを確認してから構えを解いてから片手剣を納刀。
ふう…これで5体目。ゴブリンとの戦闘もだいぶ慣れてきた…かな?
ゴブリンが消滅した場所には小ぶりの宝石…魔石が出現する。僕は5つ目になる魔石を回収すると腰のポーチへ入れる。
「へへへ…大漁大漁」
外は今お昼くらいかな?魔石はそれなりに回収できたし一旦出よう。
ふわりと浮く感覚と共に地面に着地する。周囲を見渡すとそこは蛍光灯が周囲を照らすドーム状の建物の中だった。薄暗い石造りのダンジョンから文明感溢れる内装の差にはまだまだ慣れそうにないな。
振り返るとドームの中心には半径3m程の球形の空間のゆがみがあった。光を歪曲させガラス球のようなそれは地面から数cm浮いて確かにそこに存在していた。
さっきまであの中に…。ダンジョンかぁ…ほんと不思議だな。
ダンジョンを背にドームの出入り口へ向かう。警備員さんに会釈をしてから武装貸出室の返却ポストに武器を入れる。お昼はこのビルにある食堂で済まそうかなぁ…などと考えていた瞬間、けたたましいサイレンが鳴り響く。
ウゥゥゥ────
意識外からの突然のサイレンに心臓が大きく跳ね上がる。しかし、驚くと同時にこの不安を煽るような音に聞き覚えがある事を思い出す。
このサイレン…講習で習った音だ…。確か意味は──────新しいダンジョンの発生
直後、僕の考えを肯定するように放送が流れる。
『青嶺市内にて新しいダンジョンが複数発生しました。本支部内にいる冒険者は至急管制室に集まってください。これは訓練では────』
放送を聞いて僕は急いで管制室へ向かう。階段を駆け下りて地下へ駆け込むこと数十秒で管制室の扉が見える。金属製で分厚いその扉を全身を使って開くとまず見えるのは壁一面のディスプレイ。青嶺市全体の地図やダンジョンについての情報が大量に表示されている。次に目に入るのは慌ただしく動き回る職員の人達だ。デスクが並ぶそこではパソコンの画面を見ながら職員さんが声を上げている。
「───ダンジョン発生座標確定しました!」
「───計器に新しい異常の兆候はありません!ダンジョン発生数は8つで確定です!」
「───内部の魔力濃度測定50%まで完了」
「───近隣の一時封鎖指示発令しました」
訓練ではない…本物の空気に気圧されながらも僕は冒険者用の控室へ向かう。
「し、失礼します…」
おそるおそる控室に入ると中には陽キャの桜井さんともう一人同い年くらいの女の子、そしてスーツ姿の背の高い大人の女性がいた。同い年くらいの女の子はたれ目のおっとりした顔とウェーブのかかった長い金髪をしているふわふわした雰囲気の子だ。大人の女性は対照的に黒のスーツをビシッと着こなし凛とした雰囲気をしている。大人の女性は操作していたタブレット端末から顔を上げて切れ長のツリ目で僕を一瞥する。
「君は…小鳥遊だったか。新人の」
「うぇっ!?あ、はい。た、小鳥遊です」
きゅ、急に話しかけられるから変な声でた…。
ピリッとした空気に思わず視線を逸らす…あ、桜井さんとまた目が合った。き、きまずい…。
しかし桜井さんは天真爛漫な笑顔を浮かべて僕に小さく手を振ってくる。うぅ、すごい陽のオーラ…。
「小鳥遊、君は部隊には未所属だったな」
「あ、はい」
ボッチなので…
「ちょうどいい。小鳥遊、桜井、天堂お前たち3人は臨時部隊を結成して発生したダンジョンへ行ってもらいたい。いいか?」
????????????
「わかりました!よろしくね、小鳥遊君」
「承知しました♪」
「…………え゛?」
ま、まじですか…
即了承する二人に驚きそちらを向くと今度は桜井さんの隣のおっとりした女の子と目が合う。思わず横に目をそらす。今日だけで何回目をそらしているんだろう…。
「ふふ、あかねちゃんが言ってた通り恥ずかしがり屋さんなんですね♪はじめまして、天童詩音です♪」
「小鳥遊君、詩音ちゃんは前に話した私の友達だよ!」
桜井さんが天童さんに抱きつく。武装貸出室で言ってた友達って天童さんのことだったんだ。断っててよかった。
「あ、ども…た、小鳥遊結城...です」
「結城くん!よろしくね!」
「よろしくお願いしますね♪結城さん♪」
な、名前呼び!?いきなり!?きょ、距離の詰め方が早すぎる...!
僕らが自己紹介をしていると黒スーツの女性がパンパンと手を叩く。
「アイスブレイクも結構だが小鳥遊、君の返事を聞けていない。どうする?ダンジョンへ入るかどうかは君の任意だ。当然断る権利もある」
「あ~…えっと…」
どうしよう…。桜井さんと天道さんが僕のことすごい見てる。正直仲のいい二人に混ざるみたいで気まずいし…断っちゃおうかな…。
なんて後ろめたいこと考えていると、ふと黒スーツの女性が持っていたタブレット端末が目に入る。一瞬の出来事でほとんどなんて書いてあったかなんてわからなかった。でもはっきりと見えた文字があった。
『ダンジョン内要救護者1名』
「行きます」
ここまで読んでいただいてありがとうございます。
感想、評価、ブックマークしていただけると作者のモチベーションになります。