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どんな顔したらいいか分からない

体操服を着替えて、昼休み終了間近の教室に亮也と一緒に駆け込んだ。

昼飯抜きに付き合わせてしまったことが申し訳なかったが、「面白かったからいいよ」と笑って許してくれたこの友人は神かと思った。


そんな時間に教室に戻ったものだから、雪白さんは不思議そうな顔をして、俺を見ていた。俺がどこで何をしていたのか、気になったんだろう。


まさか、全部聞いていたとは言えまい。

雪白さんからちゃんと好かれていたと分かって、体育館倉庫の中で昼休み中悶えていたなどとは、決して言えまい。


どんな顔をしたらいいんだ!


俺は雪白さんにぎこちなく笑い返して、そそくさと自分の席に向かった。

あーっ、俺分かりやすっ。もうちょっと上手いことやれませんかねーっ!?


未だに夢を疑っている自分と、ただただ歓喜している自分と、全部雪白さんにバラしたい悪魔的自分とが、せめぎあっていた。


午後の授業は全部上の空で、部活もあまり身に入らなかった。ふわふわしており、いつもならしないようなミスを連発。

大事な「残心」を忘れて、一本を取られまくった。


顧問にも「夏目お前今日どうした。浮ついてるぞ」と指摘されてしまい、すみませんと言うしかなかった。



部活終わり、雪白さんが昇降口の前で待っているのが見えた。

付き合ってからは、いつもの習慣だ。

それなのに、彼女の姿が視界に入った途端、平生の何倍も激しい音をバクバクと心臓が打ち鳴らしていた。


「……ご、ごめん。雪白さん待たせて」

「いいえ。私も今来たところだから」


彼女がそうクールに返して、2人で校門を出て駅へと並んで歩く。


どくどくどく、と心臓と脈のオーケストラ。


やべー、俺は今までどんな顔してたんだ……?


雪白さんに好きになってもらわなければ、という押せ押せ状態だった頃の俺が実は凄かったことに、今更気付いた。

いや、俺は押せ押せ状態に入ると、それ一辺倒で他を顧みないから、正直無敵モードなのだ。


しかし、俺は自分が押すのは強いが、押されるとめちゃくちゃ弱い人間なのだ!

まさに今、その状態!


雪白さんはチラチラとそんな俺を見上げて、小さく首を傾げた。頰に手を当てる。


「………あの、夏目くん、大丈夫?」

「えっ、何が!?俺の心臓の話!?」

「……心臓?いえ、何だか身体が強張ってるから…」

「そそそ、そんなことないぜベイベー……?」

「……大丈夫……?」


全然大丈夫じゃないです。


ちょっとどうしようか、と頭を抱えて、俺は息を整えた。俺の性格なら、直球勝負でもう行った方がいい。

ひとまず今日の昼のことは伏せておいて、雪白さん本人の口から………その、聞きたい。


俺とどうして付き合ってくれたのか、聞いてみたい。


告白の時は「タイミングが良かったから」と言われ。

初デートの時は「察して」と言われ。


ようやく………分かったような気がするけれど。


でもやっぱり、雪白さん本人の口から聞きたい!ワガママだけど、ごめん!


聞きたいんだ。じゃなきゃ、いつまで経っても裏で悶々としてしまう。


「ゆ……雪白さん」

「ん?」

「その………」

「うん」

「…………」

「…………」


雪白さんは、口を開きかけたまま黙ってしまった俺をじっと見上げていた。

どうしたの、と彼女は不思議そうに、問うていた。


「や………」

「や?」

「やっぱり、何でもない………」


へらり。

俺は誤魔化すように笑って、何も無かったことにしてしまった。

ぱちぱちと雪白さんが瞬き。


雪白さんも不審がってるだろーが!

なあ変なところで小市民なのやめろよ、お前ェー!!

いつものストレートは、どこに行った!


「あの、夏目くん」

「……え?」

「何かあるなら、本当に言ってね。私への不満でも何でも。私、夏目くんには無理しないで欲しいの」


雪白さんは心配そうに俺を見ていた。

彼女の優しさが身に沁みた。


「う、うん、…あ、ありがとう。いや不満なんて、全然あり得ないから、心配しないで……」


言えないッ!

雪白さんからの好意を直接確かめたいけど、告白の時に誤魔化されたってことは俺に言いたくないんじゃないかと思って、チキって聞けずに居るだけだなんて、言えない……。



「じゃあね、夏目くん。また明日」


結局、俺が降りる駅に着いてしまい、電車の中から雪白さんが手を振って俺を見送った。

それに振り返して、電車はガタンガタンと走り去って行く。


………言えなかったな。


ぼーっとしたまま帰路について、共働きの両親は未だ帰っていないので、無人の自宅へと足を踏み入れた。

母親が用意してくれていた夕食を温め直して、風呂を沸かして風呂に入った。


ぼけっと無心で入っていると、いつの間にか1時間をゆうに超えていたのに気がついた。

電気代が勿体無いとスイッチも切っていたので、既に湯冷めしていた。


くしゅ、とクシャミが出てきたあたりで、急いで上がった。

最低限の支度だけして、俺はベッドに倒れ込むように眠った。



さて、髪を乾かさずに寝たのが良くなかったのだろうか。


「………んあ」


目覚まし時計のアラームが鳴ったので、目を覚ます。

朝に弱い俺は、ここが大変だ。

なんか気だるいな……と思って、額に手を当てると、熱っぽかった。


リビングにあった体温計を取って、測ってみると38度4分。


「知恵熱…………」


俺はソファに突っ伏して、学校に連絡しておこうとスマホに手を伸ばした。







これはつまり、次回お家イベントと看病イベントがダブルで来るぞ……!

先に素直に白状するのは、主人公かヒロインかーーー!?


どっちだと思う!

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