表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/26

真実に悶える男

嫌がらせの犯人が鎌瀬だと判明し、それをどうしようかと思い悩んでいたバスケの試合。

体育を終えて、体育教師兼我が剣道部顧問に指示されて、体育の後片付けをしていた時。


雪白さんと鎌瀬が対峙しているのを、どういうわけか体育館倉庫の中から見守ることに。


案の定、俺のことが嫌いな鎌瀬は、俺へのヘイトを雪白さんにぶちまけて、「何で夏目なんかと付き合ってるんだよ」的な発言。


……いや、それは俺も思っているところではあるけれども。


他人に言われるのは、へこむ。


隣に亮也が居たから平気なフリをしたけれど、雪白さんの答えを聞くのが正直怖かった。

ああ、何で確かに俺だったんだろうって。

特に理由はなかったなんて、言われたら。


でも、雪白さんの答えは予想だにしないものだった。


彼女は俺にヘイトした鎌瀬への怒りを露わにして、懇切丁寧に彼女の思う俺の『良いところ』を挙げ、鎌瀬に反論した。


そして、最後のほうにはこう言った。


「朝日くんのこと大好きな私にそんな言葉を吐くのが意味分からない!」……と。


大好き……?


大好き………ダイスキ………ダイ……スキ……?


俺は頭がオーバーヒートしかけて、ふらふらと立ち上がる。

近くにあったバドミントンのポールに手をかけて、バランスが悪かったのか、どんがらがっしゃーん!と暗い体育館倉庫の床に倒してしまった。


大きな音を出してしまって、盗み見ていたことがバレてしまったかと慌てたが、雪白さんと鎌瀬がこちらを向いている様子はなかったので、ほっとした。

……鎌瀬はショックのあまり、それどころではないみたいだけれど。


俺は頭を押さえながら、マットに倒れ込んだ。自分の都合の良い夢を見てるんじゃないかと、頰をつねる。


「なあ、亮也……」

「夢じゃないよ、現実だ。あと、朝日くん呼びも」

「何で分かるんだ〜………」


ニヤニヤしている友人に、「もしかしてコイツ知ってたのか」と今更ながら、そんな疑念を抱く。


そもそも何故俺が雪白さんを意識するようになったのかというと、この友人に訊かれたからだ。


『雪白さんのこと、どう思う?』


最初は、亮也が雪白さんを好きで、上手く行くかの是非を俺に尋ねているのかと思った。

そう返すと、この友人には激しく否定された。


じゃあ何だ、と思ったけれど、亮也は単純に俺に雪白さんへの興味の有無を俺に聞きたかっただけらしかった。


この頃の俺は、雪白さんのことは「クールで綺麗な美人」とは思っていたが、恋愛感情はなかった。

2年に上がってから同じクラスになった有名人、くらいにしか、正直思ってなかった。


恋愛沙汰には昔から疎いというか、興味がないというか……それより部活に集中して、いい結果を残したいということしか、頭になかった。


だから亮也に訊かれた後、何となく……初めて雪白さんのことを本当の意味で見るようになった。


彼女を見ていると、だんだんと自分の評価は正確ではなかったことに気付いた。

クールで綺麗な美人、それも間違いではない。


でもそれ以上に……実は結構、人に話しかけるのが苦手で引っ込み思案なところだったり、失くし物をした友人のために探して回ったのに、最後は名乗り出ないで机の上に置いておくような恥ずかしがり屋なところとか。

感謝されたいんじゃなくて、ただ誰かのために陰で頑張る彼女の人柄も、こっそり誰も居ないところで喜びを噛み締めてる可愛いところも……


彼女の善性と、その笑顔に俺は心を奪われた。


いつの間にか、彼女を目で追ってしまっていた。


ああこれが恋なんだと、初めて知った気がした。


クールで、凛としている彼女も、カッコよくて好きだ。だけどそれ以上の………彼女が隠している彼女の本音に触れたくて、だから俺は告白をした。

俺にも見せて欲しい、と思った。

一緒に居たい、と思った。


亮也に『雪白さんを好きになった』と話せば、この友人は笑った。

『やっとかよ』と。


今なら……亮也の言葉の意味が分かる。

雪白さんの発言から察するに、亮也は俺と雪白さんを見守ってくれてたんだろう。


「………嘘だろ……」


俺は思わず顔を覆った。

真実を知った衝撃に、頭がなかなか追いつかない。


亮也は静かに肩を揺らした。動揺している俺を笑ってるなどとは、意外と趣味の悪い奴め。


「…なあ、雪白さんの前に出てみる?全部聞いてたよって。雪白さんどんな顔するんだろ、あはは」

「や、無理………」


亮也の提案に、俺は小さくうめいた。

そんなん、俺も雪白さんも爆発してしまうわ、恥ずかしすぎて。


あと、盗み聞いてたのが申し訳ないから、本人には言えない。

まさか雪白さんも俺に聞かれてるとは思ってなくて、言ってるんだろうし。


鎌瀬がフラフラと体育館を出て行って、雪白さんはしばらくしてから、その場を去った。


腕時計を見ると、昼休みは既に半分過ぎてたが、もうしばらくは立ち上がる気力がなかった。


「昼食べよーぜー。お腹空いたんですけどー」

「無理……ぃ…」


俺はマットの上でゴロゴロしながら、亮也の催促を無視していた。

先帰ってていいぞ、と言うのだが、じゃあいいと返すこの友人。



俺はこの後、雪白さんにどんな顔して会えばいいんだ……










明日も更新します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ