第99話 武器屋泣かせ
「筋肉ムキムキのじーちゃんに捕まったけど、イーたんの先輩と言ったらお土産くれた」
そう言ってルシア様はジャラリと音がする革袋を取り出してきました。その音はどう考えてもお土産というものではなさそうです。
「軍資金はあるから、好きなだけ買うといい」
「やっぱりお金ではないですか!」
祖父は何を思ってルシア様にお金を渡したのですか! そもそもルシア様が隠れて尾行していたところを祖父に捕まったのでしたら、先輩という言い訳で解放されるのもおかしなものです。
それに私にはわかりませんが、姿を換える魔道具を使用しているはずなのですから。
「ルシア。それはしまっておきなさい。今日は私がイーリアに買ってあげるのですから」
あ……いいえ。私の物でしたら、自分で買いますわ。今までの給金はほとんど使うこともありませんでしたので。
「お兄様。ごめんなさい。るーたん、デエトの邪魔した」
「別に邪魔ではないですよ。それで、何を聞いてきたのです?」
あの、そもそも皇女様が一人でウロウロして、私達の後をつけているということがおかしいと、誰か指摘してくれないのですか?
これは私が指摘しなければならないことなのでしょうか?
「商会に侵入したところで、油虫でも出たかのように騒いでいた」
微妙な例えですわ。
油虫如きで騒ぐのですか?
母なんて丸めた紙で叩いて、紙に包んでゴリゴリっと紙を絞って捨てていましたわ。
「『聖女マリー様のご息女ってあれだろう』『ああ、例のご令嬢だ』」
何故に突然ルシア様の一人芝居が始まってしまったのですか?
そして例のご令嬢って何ですか?私は武器屋で武器を注文したことなどありませんわ。
これは姉のことでしょうか?
「『破壊神の……』『ああ、伝説の武器屋泣かせの……』『どうするんだ?』『以前は直ぐに壊れる武器を渡すなんて詐欺だと聖女様に言われていましたよね』『あれは酷かった』」
私は両手で顔を隠して俯いてしまいました。
それ私のことです。穴があったら入りたいです。
もう、ここを出たほうがいいような気がしてきました。
「イーたん、凄い。武器屋に武器屋泣かせと言わせるなんて、尊敬する。思わず、るーたん尾行を止めて、イーたんが武器を選ぶところを見に来てしまった」
ルシア様。何故にウキウキした感じで言っているのでしょうか?
読んでいただきましてありがとうございます。
すみません。諸事情により夜の投稿分が書けていないので、夜の投稿はお休みしますm(_ _)m




