第94話 謎の祈り方は誰が教えたのか
「彼らが何故、一個人である聖女に付き従っているかという現状ですね」
……全然意味がわかりません。
母が教会組織を粛清したというのも初耳です。
確かに教会は各地にあります。そして領地にある教会に足を運ぶと、何故か私そっくりの母の像が祀られているのです。私が行くと、私が拝まれるので、行くのをやめた記憶がありました。
そして回廊から開けた場所にでました。荘厳な雰囲気をもった広い空間の中央にある私そっくりな像。
「ああああああ……ここにもある」
すると、この場を清掃していたと思われる教会の関係者の方々が、私の周りに集まりドゲザと呼ばれる祈り方をしてきました。
冷たい石の床に伏して、両手を合わせて祈りの言葉を唱えるのです。
「リカルド様。ここはもういいです」
「おや? 一言、声をかけてあげればよろしいのではないのですか?」
「それは駄目です」
駄目なのです。母の像に祈りを捧げている人に声をかけると、『イエス・マム』と言っている聖騎士の方々と同じような既視感を覚えますので、駄目なのです。
「そうですか? イーリアが王族より権力があるという証明になったと思うのですが?」
「……それで、私をここに?」
「ええ、イーリアが喉が乾いたと一言いえば、こぞって飲み物を持ってきてくれるでしょう」
これを言われてしまえば、否定できません。全ては母が行ってきたことなのに、何故か娘の私が母のように勘違いされてしまうことがです。
「でも。これは母の力ですわよね。私自身は何もしておりません」
「自己評価が低いのは、どうしたものですかね」
その時、ものすごい勢いで駆けてくる足音が聞こえてきました。なんですか!
私たちが来た方ではなく、更に奥の回廊から聞こえて来ます。
そして現れたのは……
「イーリア! じーちゃんに会いに来てくれたのか!」
ダボッとした聖職者の衣服を着ていても、その筋肉質の身体がわかってしまうほどの白髪の老人でした。
「お祖父様。お久しぶりです」
父方の祖父です。この国の教会組織の枢機卿の役職にいる方です。
「相変わらずめんこいのぅ。飴玉をやろう」
そう言って祖父は私に、紙に包まれた飴を手渡し、グリグリと頭を撫でてきました。もしかして、祖父の中では私はまだ幼い子供なのでしょうか?
「何か欲しいものがあれば、じーちゃんがなんでも買ってやろう。何が欲しい? 新しい武器でも良いぞ」
「新しい武器!」
はっ! 思わず反応してしまいました。