第93話 全ては情報戦略のため
「おや? 本当にご存知でないのですか。しかし、生まれたときから聖女マリー様の要望した商品に囲まれていれば、なにも疑問に思わないのでしょう」
……確かに、ハイバザール侯爵家に行ったときはとても不便でしたわ。だから色々用意してもらいました……今思えば、商品を届けてくれたのも聖騎士の方々でしたわね。
「聖女マリー様の商品を扱いたければ、各地の情報を引き渡す。これがマリー商会と他の商会との取引きです」
「情報?」
「はい。貴族の屋敷を出入りできるのは、昔からの取引きがある商会のみですからね。マリー様はそこの情報を知りたかったようです。それで王弟に行き着いたようですから」
はっ! これは邪神を殴り飛ばしたときの話ですか!
確かに貴族の家を出入りできれば、使用人から色々な噂を聞くことができるでしょう。
それで、母を喚び出した張本人であるマルメイヤー公爵に行き着いたと。
「これはもしかして、リーネリア離宮があのように厳格な体制を強いていたのは、使用人から商人へ情報を漏らさないようにしていたということ?」
一度痛い目に遭ったマルメイヤー公爵の指示で、リーネリア離宮があのように厳しい監視の目があったのかもしれません。そして人の目から隠すように地下にいた第二側妃様もです。接触する人が、少なければ少ないほど情報が漏れにくいですもの。
ということは、マルメイヤー公爵が怪しい動きをしているという情報を母が掴んでいたのも、商人からの情報だったのですか。
「でしたら、逆に情報を流すこともできる?」
「ええ、可能ですよ」
私はちらりとリカルド様を見ます。するとコクリと頷いてくれましたので、ランドルフ殿下の作戦を大掛かりに実行いたしましょう。
「流石、聖女マリー様と言ったところですか。敵に回すと恐ろしいですね」
私はそう言うリカルド様に手を取られて、とある場所に来ています。……そう。何故か教会。
「あの……何故、教会に?」
それも礼拝する祭壇を通り抜け、回廊を進み奥へと行っています。誰も案内がいませんがいいのですか?
「静かだと思いませんか?」
静か……私はここの教会に来ることがありませんので、この状態が普通なのか、そうでないのかわかりません。
「私にはわかりません」
「そうですか。イグネア王国の教会組織も聖女マリー様によって粛清されたと聞いています」
「粛清!」




