第92話 商いを牛耳るとは?
マリー商会の従業員の格好をして私たちを案内してくれたのは、聖騎士団長のラミュエント伯爵のはずです。
何故か幼い頃から聖騎士の人たちが家に出入りしていました。疑問に思い父に聞いて見ると、新たに配属された聖騎士と新たに就任した聖騎士団長が挨拶に来ただけだと言われたのです。
しかし、毎回1ヶ月ほど滞在し、屍の様に訓練場に横たわっているのが、邪魔でした。
そして母に魔の森の魔物の間引きをするように言われ、一週間ほどして戻ってくれば『イエス・マム』という人たちが出来上がっているのです。
未だに、あれは謎です。
「はい。マリー様がまずは商いを牛耳ることから始めるということで、これが我々の職務となっております」
……色々つっこみたいところがあるのですが、まずは……
「聖騎士がそれでいいのですか?」
何か違うと思うのです。何故聖騎士が商人の真似事をしているのですか?
「我々の崇高なる使命は、天上人であるマリー様の手足となって動くことです。良いも悪いもありません」
駄目ですわ。完全に母に騙されていますわ。
そもそも天上人説が全くの嘘なのですから。しかし、教会がそれを許しているのであれば……もしかして教会の上層部も……いいえ、予想を口にするのはよろしくありませんわね。
「そうですか。今日私がここに来た理由はですね」
私はアルベント伯爵領から王都に来るまでどれほど値上がりをした商品になっているのか知りたいということを話しました。
ええ、父からその話を聞いて気になっていたのです。
あまり高い商品だと売れませんもの。
「その件でございますか。それでしたら、他の領地の品と変わらない値段になっております」
「え? そうなのですか?」
「はい。アルベント伯爵領の荷はすべて、グラナード辺境伯領の荷に混ぜて、運んできております」
「それ、お姉様が嫁いたところですわよね」
「はい。エリアーナお嬢様の嫁ぎ先が決められた理由でもあると伺っております」
……それは姉も怒りに戻ってくるでしょう。まさか関税対策だったとは。
しかし、口で母に敵うわけもなく、きっと納得させられたのでしょう。
「そもそも聖女マリー様が商いを牛耳っているため、マルメイヤー公爵領が困って、通行料を値上げしたというのもありますが」
「え? 言葉の比喩でなく、お母様が商人の人たちを配下にしているとか言わないですわよね?」
一日飛んで、もうしわけないですm(_ _)m




