第9話 鑑定スキルで見てみた
「わたくしに、このような物が似合うとでも?」
王都のアドラディオーネ公爵邸にアリアお嬢様の声が響き渡ります。
本日は第一王子であるランドルフ殿下と婚約を結ぶためにお会いになる予定になっています。
そしてアリアお嬢様は、アレが気に入らないとかこれが気に入らないとか言って、王都の使用人たちを困らせているのです。
「イーリア! 貴女が決めて!」
「はい。お嬢様」
私は事前に用意していた白いバラの生花をお嬢様の髪に挿します。そして、白い毛皮のポンチョコートをお嬢様にかけます。
「如何でしょうか? アリアお嬢様。雪の妖精のようにお可愛らしいです」
「この雪が降る季節にバラを用意するなんて流石、わたくしのイーリアね」
「気に入っていただけましたか?」
「ええ、ランドルフ殿下に見せつけてあげますわ」
この二週間の間にお嬢様の悪役令嬢はなかなか板についてきました。そして、私の言うことは聞くという姿勢なのは、あまりわがまま過ぎて、収拾がつかなくなったときに困るからです。
言いだした私が責任を取るという形です。
そしてランドルフ第一王子殿下が、アドラディオーネ公爵邸に到着されたという連絡を受けましたので、お嬢様を王都の使用人におまかせして、足早にサロンに向かいます。
本日お会いする場所であるサロンにです。
既に準備が完璧にされており、室内にいる使用人たちは壁際に控えています。
私も同じようにスッと壁際に並びました。
お嬢様は婚約を結ぶ前にどうにかしたいというお考えでした。しかし、それも状況的に難しいと判断しましたので、先に第一王子を私が見て、お嬢様に演技の方向性をお伝えしようという作戦です。
プランA〜Dの四つまで用意しています。
ですから、どのようなタイプでもいけるはずですが、プランEは避けたいところ。
サロンの扉が開き、アドラディオーネ公爵邸の使用人が案内するように入ってきて、次いで金髪の青年が入ってきました。お嬢様の情報通り、金髪碧眼の王族の色をまとい人が良さそうな笑みを浮かべています。
そして、そのステータスを見ます。
……え? 普通にスペックが高いです。剣術も軍の統率力もあるゆえ、軍を率いることも可能です。
知力も高く、王の質も持ち合わせています。
第一王子は正に王の気質を持っています。
お嬢様がおっしゃっていることと全く違うことに戸惑っていると、その背後に付き従う者も視界に収めてしまったのです。
「ひっ!」
思わず声が出てしまい両手で口を塞ぎ、気配を限りなく消します。
なぜ、あのような者が第一王子に付き従っているのですか……これは否応なしに……
プランEです。