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第89話 あつらえたかのようなドレスはいったいどこから?

「あの……このようなドレスの調達はいったいどこからされたのですか?」


 何故か私用に誂えたようにぴったりの青いドレス。パーティー用の派手な衣装ではなく、外出用の落ち着いた色合いで、動きやすいくるぶし丈の長さ。首元も詰襟で、露出はほぼ無し。

 その上からまとう黒い毛皮の袖がない外套。


 ええ、姿見で確認しても何も問題はありません。……無さすぎるのです。


 何故にドレスのサイズがぴったりなのですか?


 自分で言うと虚しくなりますが、私の身長は低いです。そしてルシア様と比べればスレンダーな体格。

 そう、同じ身長でも体つきが違うのです。


「ルシアのドレスを手直ししましたが、ぴったりで良かったです」

「え?ルシア様のを?」


 ちょっと待ってください。いろいろ問題が……。


「何故リカルド様が入ってきているのです?」


 確か着慣れない高級そうな外出用のドレスの着付けを、ルシア様に手伝ってもらっていたはずです。

 そのルシア様の代わりと言わんばかりにリカルド様が姿見に映っているのです。それもいつもと同じ服装に見えますが、飾り刺繍がされている綺麗なスーツを着ているではないですか。


 ルシア様はどこに行ったのです!


「ルシアが『仕上がった』と言って部屋を出てきたので入ってきたのですよ」


 ……流石、兄であるリカルド様。ルシア様の口真似が上手いです……そうでは無くてですね。

 私はくるりと後ろを振り向きます。


「ルシア様のドレスとはどういうことなのですか?このサイズだとまだルシア様は着ることができるドレスですよね」


 そうです。私と十三歳のルシア様の身長はほぼ変わりません。ということは、ルシア様が着るために作ったドレスを私用に手直ししたということになります。


「先日用意したドレスが、サイズが合っていないと言われてしまいましたので、ルシアから着ないドレスをもらっただけですよ」


 あの……それは王女の幽霊に扮するときの話ですわよね。確かにダボダボのサイズが合っていないドレスに文句を言いましたが、ルシア様のドレスを奪い取るほどのことではないです。ただ単にずり落ちそうだと思っただけで……


「そもそもあの子は、ドレスには興味がありませんし、作ったものの表立って着る機会もありませんから数着ぐらいよいのですよ」


 え?数着?


「あの、数着もルシア様からドレスを奪い取るなんて、それはあまりにも……」

「使用人をしているルシアが出掛けるのは、ぬいぐるみの作成依頼をしに行くときだけですよ。それならイーリアが、私のために着てくれた方が作った価値があるものです。よく似合っていますよ」


 私の言葉を遮って、笑みを浮かべるリカルド様。

 それ、ルシア様からドレスを奪っていい理由にならないと思います。


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