第87話 全て嘘なのでは?
「違いますよ」
にこりと笑みを浮かべて私を見下ろすリカルド様。噂だから所詮嘘でもいいということですか?
しかし噂など出どころを調べられればわかってしまうものです。
嘘の噂がランドルフ王子周辺から出たとなると、それはそれで問題になります。
「殿下の婚約発表で私たちの婚約も発表すると言ったではないですか」
言われましたね。つい先日でしたが。
「殿下の婚約発表とアルベント伯爵令嬢の婚約発表。別に嘘ではありません」
……これは……ランドルフ王子とアルベント伯爵令嬢の婚約発表が行われるらしいという噂を流すということですか?
間違いはありませんが、凄く勘違いが起こりそうな話になってしまいます。
「王家は聖女マリー様を避けているところがありましたが、ここでアルベント伯爵令嬢が第一王子の婚約者にというのは、流石にマルメイヤー公爵も動かないわけにはいかないでしょう」
「え? たかが伯爵令嬢の私が、ランドルフ王子の婚約者だという噂がでたからと言って、公爵自身が動くことはないと思います」
ええ、私はただの伯爵令嬢であって、王家の血筋のアリアお嬢様と比べれば、月とスッポンぐらいの差があるのです。
そんなスッポンに公爵自身が動く要素は全くありません。
「天上人の聖女マリー様の人気は国民には絶大だと、殿下かおっしゃっていましたよ?それに聖女マリー様の一声で動く者が多いとも。そんな聖女マリー様の御息女となれば、王家より地位は格段に上でしょう」
「……リカルド様。そのリカルド様がおっしゃっている聖女マリーはお母様ではなく別の方の話ではないのですか?」
国民の人気が絶大?
そんなこと感じたことは今まで一つもありませんでしたわよ。お母様の言葉で動くのは使用人の方々ぐらいです。あと、お父様と。
領地の方々は別に普通に母と話しているところぐらいしか見たことないです。
「そんなことはありませんよ。個人的に調べたところ、聖騎士団を掌握しているらしいですね。あと商人です。聖女マリー様が生み出す商品は金の卵と言われているそうではないですか。多くの商人が聖女マリー様に付き従っているとなれば、これは敵に回すのは得策ではないというものです」
あのリカルド様。
そんなことあるわけないですよ。聖騎士団の件は恐らく使用人たちのことではないのでしょうか?
それから、多くの商人が付き従っているとは何ですか? そんな怪しい人たちが、家を出入りしているところなんて、見たことありませんわよ。
リカルド様が話すような人がいれば、国なんて簡単にひっくり返ってしまいますわ。
はっ! もしや、母のその噂も教会側が流した嘘だったのでは?
ありえますわ。
夕方投稿は遅くなります。