第84話 正統なる王とは?
「そもそも、マルメイヤー公爵の方が、王位継承権が上だという意味がわからないです」
王家の直系の血筋で言うのであれば、今の国王陛下の方が王位を継いで当たり前ではないですか。
「その話は先代の王の話だね。先代の王は庶子だったんだよ。先々代の王には長い間、庶子の王子しかいなくてね。若い王妃を迎えてやっと、正統なる王子が生まれたんだよ。それが今のマルメイヤー公爵だね」
先代の王は愛人の子供だったということ? 母親の身分が低かったということでしょうか?
それで高位貴族の王妃を迎えて、できた子供がマルメイヤー公爵だったということですか。
貴族社会ではよく耳にする話ですわよね。長男ではなく次男が爵位を継いだ理由の半分は、庶子問題ですもの。
なんだか、斜め前から異様なほどゴリッとかバキッとか音が響いてきます。ちらりと横目でみますと……。
八つ当たりをするように木の実の殻を割っている母。
これは父の説明が気に入らないということでしょうか?
「お母様。どうかされましたか?」
このままだと中身の木の実ですら粉砕しそうな勢いですから、一応聞いてみます。木の実は売り物ですからね。
「ことは、それほど単純かしら?」
お母様。もうこの時点で私は、ことは複雑になってしまっていると思っていますよ。
「まぁ、別に、私は、王家のことに、関わるなと、いわれているから、これ以上は、言わないけれど」
凄くブチギレ状態で言われてしまいました。
「はははは、マリーは以前から正統な王など存在しないと言っているんだよ。そんなことを言うと縛り首だからね。怖くて言えないよね」
……父。既に言ってしまっています。
しかし、どういう意味でしょう? 王家そのもののことでしょうか?
それとも王という概念の話でしょうか?
母が住んでいた異世界には、王が居なかったといいますから、母の独特の考えなのかもしれません。
しかし、王が居ない国とは想像ができませんわ。
「まとめると、公爵は国の危機を演出して、お母様を喚び出して、更に危機的な状況を公爵自身が解決するために喚び出した邪神と共に、お母様から目潰しされたでいいのですか?」
「邪神は殴ったけど、目潰しはしていないわ」
「そうだね。殴った邪神を踏みつけて魔法陣の中に押し戻していたね」
母は邪神を殴ったばかりか、足蹴にしていたようです。
「え〜っと、マルメイヤー公爵をお見かけしたことがありましたが、両目とも無事に思えましたが?」
「義眼よ」
「目は繊細だからね。腕のいい治療師じゃないと治らないから、たぶん治っていないよ」
どうやら、その腕のいい治療師が二人も我が家にいるようです。
そして、元王弟で公爵という地位にいる方が、治療できないでいるということは、周辺国でも二人しか居ないということになってしまいます。
ま……まさか、そんなはずはないですわよね?
遅くなりましたm(_ _)m




