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第75話 もの探しの蝶がたどり着いた場所

 淡く光る蝶に案内されながら地下を進む私。結界を張っているので寒さは感じませんが、きっと凍えるほど寒いのでしょう。


 石の壁と床が視界に映るだけで冷たそうです。


 しかし流石にあれ以降誰とも会いませんわ。きっとあの者が見張りのものだったのでしょう。


 私を見て白目を剥いて気絶していましたが。


 蝶がとある地下の扉に張り付いたので、開けようとノブを回します。……まぁ普通は鍵がかかっていますわよね。当たり前ですが開きません。


 このような時は、母の秘伝の解除の言葉を使うところですね。


「『ひらけごま』」


 どのような意味の言葉なのか、さっぱりわかりません。しかしカチャリと音が鳴り解錠されたのがわかりました。


 ノブを回せばスーッと開く扉。

 蝶番が変な音を出さなくて良かったですわ。古い建物って異様に蝶番の軋む音が響きますもの。


 そして中を青白い光で照らせば、石の冷たい床に横たわっている死体に蝶が乗っています。……これ生きているのでしょうか?

 蝶が死体に反応したっていうこともありえませんか。


 ええ、石の床には怪しい魔法陣が描かれ、足首を鎖で繋がれた痩せ細った子供の死体に布が被せられています。

 しかし第二王子より年上のはずですが、第二王子より小さく見えますわね。


 取り敢えず布をそっ上げてみれば、獰猛な獣のような紫の目と視線が合いました。

 生きていましたわ!


「こんばんは。オルビス君。貴方はここから出たいかしら?」


 すると獰猛な目から驚いたような目になりました。

 しかしこの状態では動けませんわよね。足に鎖もつけられていますもの。


 この場合は……そうですわね。


「出たいのであれば、目を閉じていただけますか」


 すると大人しく目が閉じられていきます。


 ん? 地下の廊下から慌ただしい足音が聞こえてきましたわ。あの気絶した者が仲間を呼んだのかしら?


「今から転移である場所に送ります。そこにいる御方は隣国の帝国の高貴な御方ですので、信頼してくださいね」


 イグネア王国の者ではないと事前に言っておきます。なんとなくこのような言い方の方が良いと思いました。

 おそらく、この少年は誰も信用できない環境に居続けていると思われますもの。


 騙すようですが隣国に行けるという安堵感を与えるためです。ここから少しでも遠國行けるという安堵感。

 でも嘘は言っていませんわよ。


 そして、転移で少年を送った瞬間に背後の扉が壊される勢いで開けられました。


 私は体重があると思われないようにスーッと床から浮き上がります。そして白い長い髪をカクンと揺らしながら首を傾けました。


『今度は貴方達がわたくしと遊んでくれますの? だったら消え鬼をして遊びましょう。鬼はわたくし。鬼に触れると消えていなくなるのぉぉぉぉぉぉ――――』


 キャハハハと笑う声と複数人の野太い悲鳴が、地下の廊下に響き渡ったのでした。


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