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第72話 傭兵の嗜み

「ふわっ! リカルド様! 料理をされるのですか?」

「料理というような大したものは作れません。傭兵となれば、外で料理を作ることもあると母に覚えるように言われただけですよ」


 ……リカルド様のお母様は、猫妃と呼ばれている側妃様ですよね? リカルド様は第二皇子様ですよね?

 どこに傭兵の要素が出てくるのですか?


 丸太で作られたロッジには、母のこだわりのキッチンがあり、そこでリカルド様が料理をしているのです。


 そして私は特殊なキッチンのため使い方がわからないということで、隣で説明をしているのでした。


「あの……リカルド様は傭兵ではないと思います」


 今はその傭兵のような格好をしていらっしゃいますが。


「いつ何があるかわかりませんからね。それに殿下の狩りにつきあって、外で食事をとることもありましたから、何事にも無駄というものはありませんよ」


 そうですか。ランドルフ王子は狩りに行かれることがあると。アリアお嬢様がついて行きたいと言われたときには、その対応も私もしなければいけないということですね。


「それにイーリアに私が作ったものを食べてもらえるなんて、幸せではないですか」

「……ソウナノデスカ」


 貴族が自ら料理をすることなんてありませんわよ。普通は料理人が作った料理を出して、喜んで貰おうとすると思うのです。


「この鍋は何ですか?」

「焼き物に使う『フライパン』です」

「シチューを作りたいのですが、どの鍋がいいのですか?」

「二人分でしたら、これぐらいですか」


 鍋の種類も母のこだわりなのか、多種多様あります。


「火をつけるのは黒い突起を回せばついて、元の方向に戻すことで火の大きさを調整できます」

「これは魔道具ですか?」

「母仕様のモノとだけ言っておきます。複製は不可です」


 魔道具というには普通に作れないので、母仕様のモノとして、家族のみが使える物になります。

 姉は一式を花嫁道具として嫁ぎ先に持っていきました。たぶん、姉しか使えませんが。


 ……ということはリカルド様も使えないのではないのですか?


「おや? これは魔力を吸い取る仕様ですか。この量は中々ですね。聖女様仕様だけはあります」


 普通に使っています。ということは、魔力量が足りずに火がつかなかっただけですか。


「一つ気になったことがあるのですが」

「なにでしょう?」

「あの鍋は何に使うのですか?」


 シチューの具材を煮込んでいるリカルド様は、見てはいけないものを発見してしまいました。

 あれですか。本来の使い方で使ったところを見たことがありません。

 あの半円状の凹みがいくつもある鍋です。


「『たこ焼き器』だそうです」

「タコヤキキ? ですか?」

「なんでも『たこ』が見つからないと母が言っていたので、本来の使い方は知りません」


 子供の頃に『玉子焼き』というものをアレで焼いてくれた記憶があります。その時に、タコが無いことに母は嘆いていました。


 ただ、私は知っているのです。父と使用人たちが、母に「クラーケン」の情報を知られてはならないと隠していることに。



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