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第70話 幽霊騒ぎ


「どうもその幽霊は雪の上をすーっと音もなく移動して、『探し物がない』とぶつぶつと言っていたそうなのです」


 そこまで話をされて、私は深々と頭を下げました。


「騒ぎを起こしてしまってすみませんでした。原因は私です」


 そう、リーネリア離宮から帰るときに問題が起こったのです。

 私は持って帰る本の選定のときに中身をチラチラ見て確認をしていました。その中身はかなりヤバいことが書いてあったのです。


 そして、本棚に並べられた数々の魔導書。


 そこから導かれる答えに私は気づいてしまい、心の声が漏れ出てしまっていたのです。


 考え事をしている私は巡回している衛兵と出会ってしまったのでした。



「おい! 女! こんな時間に何をしている」


 見つかってしまったことに焦ってしまい、母から昔に言われたことを実行してしまったのです。


「探し物をしているの……無いの……大切なものなのに……無いの」


 と言葉を残して上空に転移をし、衛兵の視界から消えたのです。


 母から言われた言葉。それは……『侵入してバレたときは、幽霊のフリをするのが一番よ。人って理解できないことに恐怖するものよ。特に夜が光に満たされないこの世界では有効よ』と言い、気味が悪い幽霊の演技を教えられました。


 しかし、その後が大変だったのです。


 私を見た衛兵が騒ぎ出し、仲間を呼び出し、幽霊探しをしだしたのです。


 上空にいると見つけられ、雪の上を滑るように進んでいると追いかけられ、建物の影に隠れていると見つけられたのです。

 流石にイライラしてきたので、複数の衛兵に囲まれたときにやってしまったのです。


「どうして……見つからないの? 見つからないなんて……みんな一緒に逝ってくれる?」


 影の魔法を使って、夜が明ける日の光でできた衛兵の影を操り、影の剣を抜かせたのです。


 影は主の動く通りに動く。しかし逆に影が動けば主はどうなるのか。


 衛兵は剣を抜き、自分の首元に突きつけたのです。


「私と一緒に天の国(ヴァランエラ)に逝きましょう?」


 勝手に動く身体に悲鳴を上げる衛兵。混乱を極めたところで、皆さんに眠りの魔法をかけて、雪の上でおねんねしていただきました。


 それが夜明け頃の話です。

 それから慌ててランドルフ王子の離宮に戻ったのでした。


 きっと雪の上で剣を抜いたまま寝ている衛兵の方々が、交代の衛兵に見つけられたことでしょう。



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