表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/136

第7話 鉄槌を下す

「お初にお目にかかります。イーリア・アルベントと申します」


 私は赤髪の男性に向かって頭を下げました。

 この方がアドラディオーネ公爵様です。父方の遠縁に当たります。


「顔を上げなさい」


 その言葉に私は頭を上げ、赤い瞳を視界に映します。私の赤い瞳はアドラディオーネの赤と呼ばれる色なのです。

 これが、アドラディオーネ公爵家と遠縁の証と言っていいものなのです。


「ときに……」

「はい」

「マリーが来ているとか、ないでいいかな?」

「はい?」


 母に会いたかったのでしょうか?


「その辺りに隠れ潜んでいるとか、ないでよいかな?」

「母を連れてくれば良かったのでしょうか?」

「違う違う! 全くもってそんなことは一言も言っていない」


 ふと思いだしまして、手提げかばんから、一通の封筒を公爵様に差し出します。


「母からです」

「それは受け取らないと駄目かな?」

「それはどちらでもいいと思います。が……」

「が? なんだね?」

「これ何かの魔法の痕跡があるので、公爵様が開けた方が無難だと思います」

「君が処分するという手もあるのでは?」

「それでは私が公爵様に渡さなかったということになり、強制的にこの封筒が開封される可能性があります」

「因みに強制に開封された場合どうなるのかね?」


 そう公爵様に尋ねられて、白い封筒を見ます。赤い封蝋に魔力感知と時間のカウントダウンの術式に、封蝋を切らなかった場合に白い人が出るとありますね。白い人とは何のことでしょうか?


「あと一時間以内に封蝋を切らなければ、白い人がでてくるとあります。白い人って……」


 私が説明をしている途中で公爵様は私から封筒を奪い取るようにして封を切りました。


 そして、手の甲で額を拭いながら、中身の手紙を取り出しています。

 この様子だと白い人というのはトラウマになるほどの物だと推測しました。


「ふむ。……むむ……うっ……わかった」


 唸り声を上げていた公爵様が了承の言葉を口にしたあと、手紙は煙のように消えてしまいました。


 相変わらず母の魔法の構築が全く理解できませんわ。

 いいえ、見えるのですが、文字として認識できないもので構成しているので、私には理解できないのです。


「君を末の娘のアリアルメーラ付きにする」


 末の娘ということは今年12歳になるご令嬢ですわね。

 それで、公爵様は何を了承したのでしょうか?


「かしこまりました。あの……母は何を書いていたのか聞いてもよろしいでしょうか?」

「むっ!」


 すると公爵様は顔色を白くさせて小刻みに震えだしました。


 いったい何が書かれていたのでしょうか?

 これは聞いてはいけない部類のようです。私は頭を下げて、退出しようとするとその答えが返ってきました。


「ハイバザール侯爵に鉄槌をくだすから、有耶無耶にするようにというご命令だ」


 ……お母様。侯爵様に何をするつもりなのですか!アドラディオーネ公爵様に頼まないといけないほどのことなのですか!


 そして、その公爵様に『ご命令』と言わしめる母の立場が、私にはわからなくなってきました。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ