第67話 領地に私兵などいませんわよ
「なんだ? そんなに時間をかけてくれていたのか? それなら今日はもう休むといい」
「それぐらい問題ありません」
ランドルフ王子は休んでいいと言いますが、母の言葉をまだ伝えていないのと、ルシア様がキチンとまとめているのか凄く心配なので、確認させて欲しいです。
「イーリア。もう今日は休みましょう」
「うぇ? リカルド様! 私を抱えて移動しようとしないでください!」
私は子供ではないのですからね!
「それに夜中に行動するのは、それなりにありますからなれています!」
「普通は無いだろう」
「ランドルフ王子。アルベント伯爵領は、魔の森を管理しているのです。夜に行動をする魔物の間引きは夜にしかできません。普通ですよね?」
年に数回、母が突然『今日は夜のピクニックに行くわよ』ということがあります。その言葉に悲鳴をあげる父。
『お肉の調達は任せてください』と槍を振り回す姉。
『僕は魔動植物を刈って果物を集めてくるよ』という弟。
『では、私は調理場の確保をするわ』とピクニックする場所の掃除を志願する私。
その日は明け方まで、魔の森には母の笑い声と父の悲鳴が響き渡るのです。そのあと朝食の準備をはじめるので、夜中に行動することはよくあります。
まだ幼い弟は果物を集めてきたら、私の側で寝ていましたけどね。
「うむ。流石聖女マリー様の教育だ。魔の森の管理のための私兵がいるのに、子供に手伝わせるとは」
……おかしな言葉が、ランドルフ王子からでてきましたわよ。『魔の森の管理のための私兵』って何ですの?
「我が領に私兵などいませんわ。そんな許可が国から下りていますの?」
私兵を個人で持っていいという許可なんて、辺境伯ぐらいしか出ないと思っていましたわ。
「むむっ! リカルド。先程アルベント伯爵領に行ってきたのだろう? 国に森の管理費と私兵の人件費を請求してきているのに、居なかったのか?」
……森の管理費って何が発生しますの?どちらかと言えば、森から採取してきたものを売って領地を回しているはずですわ。それに私兵の人件費は雇った側が持つものでは無いのですか?
……国王陛下を馬鹿と呼んでいたということは、母は国王陛下を良いように思っておらず、嫌がらせにお金を請求している可能性が!
「勿論居ましたよ。庭で剪定をしていたり、門番をしていたり、窓を拭いていたりしていましたね」
「あら? それは父の元同僚の使用人の方々ですか? それならよく母に扱き使われています」
母から命じられると直立不動で『イエス・マム』と謎の言葉を言わされている人たちですね。
「むっ! 聖女マリー様から扱き使われているのであれば、何も言わないでおこう」
ランドルフ王子は細かいことを突っ込むことを諦めたようです。
そして、使用人の方々のお給料は国から出ていたことが判明したのでした。




