第62話 お気に入りを取り上げると
「王に立つものであれば、これぐらい解決できなければならないと、母から言われたのだ」
ランドルフ王子は、やる気満々で言っていますが、良いように王妃様に言いくるめられていますよね?
「それでどうすればいいと思う」
こちらに投げるのですか!
「私としては、カトリーヌ妃から証言が得られればいいと思っている」
「無理でしょう」
「無理でしょうね」
私とサフィーロ伯爵の言葉か重なります。
そんな簡単に済むのであれば、王妃様が動いていたでしょう。王妃様も話の内容を聞いて、カトリーヌ妃がまともでないことを感じ取ったので、ことのややこしさにランドルフ王子に振ったのでしょう。
「たぶんカトリーヌ妃がランドルフ王子に会うと発狂されると思います」
「むむ。私が悪いと言っているのか?」
違います。ランドルフ王子はまさに王族の血族という容姿をされています。ですから、母の言うことが本当であれば、カトリーヌ妃とまともに会話ができなくなってしまう可能性がありました。
「カトリーヌ妃の件はこちらで保護しましょう。ルシアを側につけておけば、カトリーヌ妃のいい話相手になるでしょうから」
……ルシア様を? それはちょっと困りますわ。
「サフィーロ伯爵……」
「リカルドですよ。イーリア」
くっ。そんなに名前で呼ばれたいのですか?
「サフィーロというのは偽名ですからね。本当の名のリカルドと呼んでいただきたいのです」
そう言われれば、そうですわね。
偽名で呼ばれると別の人に声をかけているような感じになってしまいますからね。
「リカルド様」
「何でしょう?」
「ルシア様を侍女とするには色々問題があると思うのです。なんと言いますか、独特の考えをお持ちと言いますか……」
皇女様を悪く言うことができませんので、説明に困ってしまいます。
「うむ。ルシアの行動は面白いからな。見ていて飽きない」
馬鹿王子。それは褒めていませんからね。
「しかし、ぬいぐるみを渡しておけば、おとなしいぞ」
「……ぬいぐるみを取り上げると、どうなるのですか?」
「むむっ! 一度いたずらで取り上げたら、『ぶっ殺す』と言われて、本気でボコられた」
え? あのルシア様が言ったとは思えない言葉ですね。何か誇張されています?
「レイム族からお気に入りを取り上げれば、そうなるのは仕方がないですね」
え?
私はリカルド様を見上げます。
「だから私は、イーリアのことを取り上げたりはしないぞ!」
堂々と何を言っているのですか! 馬鹿王子!




