第60話 天誅?
「お母様。侵入者に対する対応策を私に授けてください」
食事が終わってお茶を飲んでいるところで、私は母の元に訪ねた理由を口にします。
「ぶふっ! ゴホッゴホッ」
「あなた。何を噴き出しているのかしら?」
お母様の隣で父がお茶を噴き出しています。老人になるとお茶でもむせると聞きます。父も老いたのでしょうね。35歳ですが。
「どこに侵入されるのかしら?」
「ランドルフ王子の離宮です」
そう、ルシア様が勘違いしている殺鼠剤の件です。
「あら? イーリアの部屋にってことではないのね」
何故。母は意外そうに聞いてくるのですか。
「それは今朝侵入されました」
「ぶふっ!」
「あなた。汚らしいわよ」
父の老化は深刻のようです。お茶にとろみを付けるといいと母が言っていましたので、そのうち母が対策することでしょう。
「それはキモいおっさんの手の者かしら?」
「キモいおっさんが誰のことを言っているのかわかりませんが……」
「はっ! 自分の子に子供を産ませた、キモいおっさんよ。あと馬鹿らしい実験をしているから、そのうちぽっくりと逝くんじゃない?」
……母は何かを知っているようです。
「その話を詳しく教えてください」
「嫌よ。馬鹿国王からキモいおっさんにはこれ以上かかわるなと言われているから、知っていても情報は渡さないわよ。だからあの時ぶっ殺しておけばよかったのよ」
国王陛下が王族に対して、母が介入することを避けた所為で、厄介な現実が起こっているのですが。
母は話さないと言ったことは絶対に話しません。
母の機嫌を損ねた国王陛下を恨みますわ。
「あの……では、侵入者に対する対策を教えて欲しいです」
「それ、生かすの? 殺すの?」
その二択になるのですか? 私はちらりと隣を見上げます。生かして尋問するのか、死体を処理をするのかは、私ではありませんもの。
「どちらでもいいですよ。然程変わりませんから」
それはどういう意味で捉えたらいいのでしょうか?
「そうね。二重結界とかいいわよ」
「ひっ!」
「侵入できるけど出られない結界。中の魔素を抜いておけば、人なんて1時間もせずに動けなくなるわ」
父が何か恐ろしい目にあったかのようにガタガタと震えています。もしかして、またこれも父を実験台に使ったのですか?
「あと、魔導生物とかいいわよ」
「ひぃぃぃぃぃ! それは死ぬ。あれらはどうしようもない」
この父の反応は本当に死にかけたときの反応ですわね。しかしそんな魔導生物だなんて家にいましたか?
すると母が右手の人差し指を立てて、目の前に掲げました。
そこにはこの時期にはいない吸血虫がいるでありませんか。
夏になると、煩わしい高音を響かせながら飛んできて、人の血を吸って、かゆみという不快感を残していく虫!
「これは神経毒を注入する虫よ。馬鹿に天虫するにはいいわ」
……なにか言葉に変な意味が込められているような気がしますが、人の出入りしないところから侵入してきた者限定とすれば、使えそうな気がしますね。
「それは、他にどんな種類があるのですか?」
サフィーロ伯爵! 何故にそこを聞いてくるのですか! そんな話を振ると母は……
「あら? 聞きたい?」
「ひぃぃぃぃぃ!」
母の嬉しそうな声と父の悲鳴が重なったのでした。
読んでいただきましてありがとうございます。
60話まで来ました!約一ヶ月毎日投稿してきましたので、ペースダウンします。
空いているのが月曜と金曜ですので、週二回投稿で一日二回投稿はそのままにしようかなとは思っています。(たぶん……)
音信不通になったら、駄目だったのだなと思ってください。
今日の夜投稿はお休みしまして、明日の朝と夜は投稿します。
よろしくお願いします。




