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第58話 何故に弟と伯爵が喧嘩をしているのです

「まぁいいわ。直ぐに用意させるから食堂で待っていなさい」


 そう言って母は転移で消えていきました。きっと今、家にいない父を連れ戻しに行ったのでしょう。


「どうして、ついてきたのですか? 転移しているところで割り込んで、身体がバラバラになっても責任は取れませんからね」


 転移は普通の移動と違って、空間に滑り込むように移動しますので、不測の事態が起これば転移者がその反動を受けて肉片になってもおかしくない術です。


「先程言ったではありませんか。義父上と義母上に挨拶しに行くと」


 それは今でなくても良かったと思います。そんなことを言いながら食堂に入りますと、既に弟のロイドが席についていました。


「お姉様!」


 私の姿を見たロイドは慌てて私の元にやってきました。今年で八歳になる弟です。


「おかえりなさい! お姉様!」

「ただいま。ロイド」


 飛びつく弟を受け止めます。歳の離れた弟なので、姉と私に甘やかされたところもあり、よく私についてきていたのです。


「お姉様。戻ってきたのなら、ずっと一緒にいてくれますよね? 僕が頑張ってお姉様を養ってあげますから」


 ……八歳の弟に養われる姉って何かしら? 私はアリアお嬢様の侍女ですから、弟の世話になどならなくても大丈夫ですよ。


「ロイド。お姉様はアドラディオー……」

「はじめまして、イーリア嬢の婚約者のリカルド・サフィーロと申します。以後お見知り置きを」

「何故、私を抱え上げるのです。皆がいる前で凄く恥ずかしいじゃないですか!」


 私の言葉を遮って、サフィーロ伯爵は弟のロイドの手を払い、私を抱え上げたのです。よく知っている使用人たちの前で、何をしてくれるのですか!


「婚約者か何か知らないけど、お姉様はずっと僕のお姉様なんだから!」


 ロイド。何をムキになって言っているのです。血縁関係はありますので、私はロイドの姉になるのは当たり前です。


「これからは私のイーリアですので、勘違いなさらないように」


 ちょっと、ここで何を言っているのです。周りの生暖かい視線がとても痛いです。


「僕のお姉様だと言っているよね!」

「貴方の姉だとしても、婚約者である私のほうが立場が上ですよね?」


「あの……私はアリアお嬢様の侍女なので、アリアお嬢様が最優先です」


 よくわからない言い合いをロイドとサフィーロ伯爵が始めたので、一応私の立場を明確にしておきます。


「「ここにいない人を出してこないで」ください」


 案外、仲がいいのかもしれないわね。息がピッタリ揃っている二人に、ため息がこぼれ出たのでした。




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