第50話 地下へと続く階段の先には
午前中に来たサロンまでやってきました。男性二人は途中の階段で置き去りにしています。
みようによっては、足をすべらせて階段から転がり落ちて動けなくなっている風に見えなくもないという感じにしました。が、お酒の匂いがするので、多分職務怠慢を指摘されるでしょうね。
サロンの中に入ると昼間とは違い、暗闇に冷気に満ちていました。
ここには誰もいないことがわかります。
そして黒い蝶が止まっていた壁に向かいましたが、この奥に本当になにかあるのでしょうね?
壁に触れてみますが、何も変哲もない壁です。
うーん? 何か使えそうな魔法はあったかしら?
ふと魔法ではないのですが、母が話してくれた話を思い出しました。なんでも閉じられた扉を開けることができる不思議な言葉があるそうです。
「『ひらけごま』」
まぁ。こんな言葉でどんな扉も開くことができれば苦労はしないでしょう。
『カチッ』
何かが外れる音が聞こえました。まさかそんな言葉如きで隠し扉が開くのですか!
言葉で扉が開くなど、異界というところはとても恐ろしいところなのですね。
壁を押してみますとスッと扉のように壁が開いていきました。その奥は暗く何があるかは目ではみえません。
「『光よ』」
魔法で明かりをともせば、その奥は地下に続く階段がありました。暗闇が口を開けているようにその先が見えず、どこまで続いているのかもわかりません。
しかし、物探しの術で黒い蝶が壁の先を指し示したのです。
私は地下に向かう階段を進むしかありません。
浮遊したまま滑るように降りていき、たどり着いたのは、すえた匂いが充満している一室でした。
そこは仄かな光が部屋全体を満たし、程よい温度が保たれています。
そして何よりもおかしなことは、先程見た部屋と酷似していることです。
毛足が長い絨毯が敷かれ、子供が遊んだ後のように人形とままごとをしていたものが散らばっており、長椅子にはクッションの変わりと言わんばかりにぬいぐるみが置かれ、幼児に読み聞かせるような絵本がテーブルに積み重なっています。
そう、いわゆる子供部屋です。
「あら? エリアーナ。もうごはんの時間?」
こんな時間に誰かか起きている……いいえ。こんな地下に隠されるように住んでいるのは誰?




