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第49話 イーたんは天使だった

「あら? 雪が止んでしまっていますわ」


 空を覆っていた厚い雲は何処かに消え去り、月明かりが夜の世界を照らしていました。


「このままだと雪に足跡が残ってしまうわね」


 白い雪が浮かび上がるように月光を反射し、人々が寝静まった夜の世界を幻想的にしています。


 このまま歩いて行くと、侵入者がいることを自ら示しているようなものです。

 今から、侵入しようという者がそのような愚行を起こすわけにはいきません。


 ほぼ使っていないというルシア様の隣の部屋で仮眠したので、魔力も十分ありますからいけるでしょう。


「『浮遊』」


 私は身体の周りに魔力をまとわし、身体を少し浮かせます。


 この魔法で空を飛ぶことも可能ですが、母から魔力切れで地面に落下すると死ぬわよと忠告されたので、子供の時以来、空は飛んではいません。

 父が『アレは死んだと思った』と言っていたので、どうやら父で母は試したのでしょう。打たれ強い父がそうならば、私ならば一瞬であの世行きだろうと子供ながら危機感を抱いたものです。


 その浮遊の魔法で雪の上を滑るように進んでいきます。

 王城の中を通ると、流石にこの時間は巡回している近衛騎士に怪しまれます。なので、遠回りですが王城をグルっと回って反対側にあるリーネリア離宮へ行くことにしました。




 リーネリア離宮に到着しました。

 えっと三階でしたわよね。


 私は離宮の三階の窓を下から見上げます。すると一箇所だけ窓が開けられ、白いハンカチが上部から吊るされた部屋があります。


 あそこですわ。


 浮遊の魔法に更に魔力を込めて三階まで浮き上がります。部屋の中を覗き込むとそこは……得体のしれない部屋でした。

 間違いましたわ。ぬいぐるみに満たされた部屋でした。もう、ベッドか床かわかりません。そして部屋の主がどこにいるのかもわかりません。


「(イーたんは天使だった)」


 小声でルシア様の声が聞こえた方向に視線を向けますが、どこにいるのかさっぱりわかりません。


「(天使ではありません。普通の人です。寒いのに窓を開けていただいて、ありがとうございます。帰りもお願いします)」

「(わかった。巡回している護衛にはお酒を渡しておいた)」

「(それ、職務中に飲まないと思いますよ)」

「(大丈夫。可愛いるーたんが、寒いからお酒で温まってと渡したから絶対に飲む)」


 すごい自信ですわね。おそらくそのようなことはないでしょう。しかし、その気遣いは受け取っておきます。


「(ありがとうございます)」


 そう言って私はルシア様の個室を出ていきました……が、出たところに酔っ払って寝ている男性が二人もいるではないですか!

 こういうのはここではなくて……ああ! もう!

 あとでサフィーロ伯爵にルシア様の教育をし直した方がいいと言っておきましょう!


 私は廊下で酔っ払って寝ている男性二人も浮遊させて、片腕ずつ持ってその場から移動させたのでした。



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