第41話 喜んで!(涙目)
「どういうことですの!」
馬鹿王子に詰め寄りたいですが、サフィーロ伯爵に捕獲されているので、できません。
「どういうことも何も、王子妃教育だ」
「説明になっていませんわ」
王子妃教育はわかりますよ。王子妃となれば王族に入ることとなり、いろいろなしがらみが増えてきます。それに対応するための教育です。
しかしランドルフ王子の婚約者候補となった時点で、そのような教育は始まっているはずです。今更王城で何をするというのですか!
「王族としての役目を少しづつ引き継いでもらいたいからですね。王妃ともなれば、それは多岐に渡ります。まぁ三年でハイバザール侯爵領を復興させたイーリアにとっては、無駄と思えることかもしれませんがね」
私がハイバザール侯爵領を災害から復興させたと言っても、母から色々助言を受けたからです。
そうでなければ、三年ではどうにもならなかったでしょう。
「別にそのようなことは思っていません。アリアお嬢様はランドルフ王子の側は危険だと申しておりました。そのような危険に自ら足を踏み入れることをお嬢様にさせようとしているのですか? 教育が必要であれば、アドラディオーネ公爵家でもできるではありませんか」
はっきり言ってお嬢様に付けられた護衛の数は異常だと言っていいです。流石に寝室までは入ってきませんが、目に見える護衛から、影に身を潜めている護衛までいるのです。
いくら公爵令嬢であっても、誰が見てもおかしいというぐらいです。
「それだと、俺がアリアと遊べないではないか」
「馬鹿王子。なぜ遊ぶ気満々なのですか」
「あと、アドラディオーネ公爵から許可がでなかったのはこの件があったからなのだが、イーリアがアリアの侍女として側で仕えていることで全て解決するだろう?」
……私にどこまでのことをさせようとしているのですか?
実際、どれほど危険なのかは今の所、私にはわかりませんが、アリアお嬢様が言うほどです。よっぽどのことがあったのだと推測します。
それを私に排除するように言っています?
「今回のことが解決すれば、アドラディオーネ公爵令嬢に危険が及ぶことはありませんよ」
サフィーロ伯爵はそうおっしゃいますが、そもそもです。根本的なことを変更すればいいのです。
「……あまり首を突っ込むとよくないと思い言うことを控えていましたが、本気でアリアお嬢様と婚約を解消する気はありませんか。というか、マルメイヤー公爵令嬢など如何ですか?」
「ははははははは。イーリアは面白いことを言うな」
「ふふふふふふふ。ご自身で解決できないランドルフ王子の側に、アリアお嬢様がいる必要はないでしょう」
互いに笑っていない笑顔を浮かべて、笑い合います。背後ではランドルフ王子の護衛が悲鳴を上げていますが、あなた達は黙って突っ立っていなさい。
「イーリア。それだと、契約に違反しますよ。そうですね。今日から一緒の部屋で暮らすというのは如何です?」
「喜んでアリアお嬢様のために、働かせていただきます!」




