表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/136

第38話 聖女マリーのお言葉

「天上人である母の言葉を伝えてさしあげますわ」


 私は空間から扇を取り出し、膝を床につけている男性を見下すように目の前で広げます。


「『高いところから見下ろしているから、傲慢になるのよ。一度地面に這いつくばって世界を見上げれば、考えも変わるのではなくて』ですわ」


 私はそれだけをいい、今度はレイモンドに詰め寄ります。


「それでハイバザール侯爵様? その腕はどうされたのか、私に教えていただけませんか?」

「あ……アルベント伯爵夫人が……」

「あら? 今度はお母様の所為に? お母様といつお会いになったのかしら?」

「いや……ただ……転んだだけだ」


 私と目を合したくないからか、ななめ下に視線を固定したままレイモンドは答えます。


「そうですか。気をつけてくださいね。それから、これは以前思わず手が出てしまったお詫びですわ」


 ななめ下に向けられている視線に割り込むように近づき、レイモンドの視界に入ります。そして白い布で吊っている左腕に触れました。


「折れた腕は治して差し上げます。ですから、これ以上私のおかしな噂を流さないでくださいね?」


 そう言って触れた左腕に力を込めます。


「いっ!」


 私はレイモンドしか聞こえない声で言葉を紡ぎました。


「もし、おかしな噂を流そうものなら、折れていない腕を再起不能なほどバキバキに折って差し上げますわ」


 するとレイモンドはついに膝に力が入らなくなったのか、崩れていきました。そのような醜態を晒すレイモンドを見下します。


 本当にこれで侯爵の地位を継いだとは、情けないことこの上ないですわ。


「それでは、ごきげんよう。ハイバザール侯爵様?」


 するとレイモンドは私を睨みつける視線をぶつけてきました。

 あら? そのような醜態を晒して、何か私に言いたいことがあるのですか?


「婚約破棄した時点で、君の名は地に落ちている。俺が何を言ってもそれは変わらない。そんな君と婚約をしようという者がいないから、侍女という地位に甘んじているだけだろう」


 あら? 突然強気にでてきましたわね。どういう心境になったのでしょう。


「何の騒ぎだ」


 この声は……私は後ろを振り向きます。

 金髪碧眼の先ほど私に向かって馬鹿なことをしていたランドルフ王子ではありませんか。


 ああ、そうですか。ランドルフ王子の姿が見えたので強気に出ることにしたのですね?


 そして、いつの間にか私の隣にサフィーロ伯爵が立っていました。……せめて気配ぐらいまとって欲しいものですわ。


「イーリアの元婚約者であるハイバザール侯爵を拝命した者ですか。まだ(おおやけ)にはなっておりませんが、イーリアの婚約者は私ですので、親しげにするのは控えていただきたいものですね」


 ……あの? どこをどうみれば親しげに見えたのでしょうか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ