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第36話 あら?嘘はいけませんわ

 ルシア様の案内で王城の中を進んでいきます。使用人が通る通路を教えてもらっているのですが、流石に一回では覚えられませんわ。

 それを13歳のルシア様がスイスイと進んでいくのを見ると、仕事には忠実なのでしょう。

 色々言動についていけませんが。


「ここから先は普通の通路を通る。だから指輪を使うよ」


 華やかな明るい廊下に出たと思いましたら、どうも王城に勤めている貴族の方々が行き交っているところに出たようです。


 そして、ルシア様から指輪を使うように促されました。


 私からは何も変化は見られませんが、ルシア様が納得されたので、廊下の端を進んでいきます。


 すると遠くの方から聞き覚えがある声が聞こえてくるではないですか。


「――――事が事だけに大きな声では言えないが――――」

「いやいや、それでも跡を継がれたのだろう? 私としては羨ましいかぎりだ」

「父が動けぬ常態になってしまったので仕方がないことが大きい。それに元婚約者に腕を折られてしまって、このような姿で挨拶をしなければならないというのも……」

「それでも君がハイバザール侯爵になったのは事実だ」


 ……は?

 あの後ろ姿は確かに元婚約者のレイモンドでしょう。しかし私が腕を折ったなど……まさか!


「ルシア先輩。別件の急用が勃発しました。少しここで待っていただけますか?」

「るーたん先輩は、優しいから後輩のイーたんの用事が済むのをまってる」


 ルシア様に一言断りを入れてから、見覚えのある後ろ姿に近づいていきます。


 そして真後ろに立ったところで、指輪の効力を解除しました。


「侯爵の地位を継がれたのですね?」


 すると背中がビクッと震え、壊れた木偶人形のようにギシギシという感じでレイモンドが振り返ります。


「イーリア……」

「まぁ! もう婚約者ではないので、アルベント伯爵令嬢と呼んでいただけませんか?」

「ああ、アルベント伯爵令嬢である君がなぜ王城になど……」


 レイモンドは私から距離を取るように徐々に下がっていっています。


「私は今、アドラディオーネ公爵令嬢様の侍女をしておりますので、その関係で王城に出入りすることぐらいありますわ」

「ああ……確か王太子殿下の婚約者になられたとか」

「昨日の今日ですのに、お耳に入るのが早いことで。時にハイバザール侯爵様?」

「な……なんだ?」

「その腕は如何されたのでしょう?」


 私は白い布で吊られた左腕を指します。


「ここで白状するのと、本当に私が腕を折るのとどちらが宜しいですか?」




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